こんにちは、アイレップ運用型TVCM推進Divisionの冨田です。連載2回目の筆をとるようにとDIGIFULの担当からプレッシャーを受けまして、やっと重い腰をあげることができました。まずは前回のおさらいを簡単にさせてください。
アイレップが博報堂DYグループの再編によって、テレビCMの取り扱いができるようになりました。そして、取り扱いを始めるにあたり社内で議論を重ねながら少しずつ実績を作りはじめ、データをもとに「プランニング」や「効果測定」の意思決定ができるテレビCMのサービスを提供するようになったとお話ししました。
「科学するテレビCM」という名前を付けさせていただき、その特徴としてはアイレップがもつ従来のデータ分析力に博報堂DYグループがもつマス広告の歴史と体制を組み合わせた、新しいテレビCMのPDCAサイクルを作っていく。ということは、ご理解頂けたかと思います。
そして直近は、インターネット動画広告との統合PDCAサイクルを実現しており、「運用型テレビCM」の発展形として「運用型デジマス広告」サービスの提供をおこなっております。
その「運用型デジマス広告」では3つの取り組み方があり、1つ目は「テレビCMとOTT広告」、2つ目は「テレビCMとインターネット動画広告」、3つ目は「テレビCMとインターネット広告ロワー領域」がある、ここまでが前回のおさらいとなります。
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そして本稿では、アイレップのテレビCMの効果測定の手法についてお話をさせて頂きます。
「行動・成果ベース」でテレビCMを評価する
従来のテレビCMは、アクチュアルの視聴率(GRP/PRP)・到達率などの「放映・配信ベース」の指標、アンケート調査による「広告認知」・「想起」・「利用意向」などの「意識ベース」を指標とする手法が一般的でした。
一方インターネット広告においては、「クリック」や「サイト内コンバージョン」のような「行動・成果ベース」の指標を計測して評価する手法が一般的でした。我々アイレップも同様の手法でPDCAサイクルを回しており、テレビCMにおいても「行動・成果ベース」でPDCAサイクルを回す手法を研究・開発し、サービス提供をおこなっております。現在は主に、2つのモデルを使い分けてPDCAサイクルを回しております。
(図1:テレビCMは行動・成果ベースで成果を可視化する)
計測方法1:「短期間スパイク検出モデル」
CMが放映された「直後数分間」において、自社Webサイトへの流入がどれだけ起こったかを計測します。例えば、次に述べる2パターンのうち、どちらの放映枠が評価の高いものかを判断するというやり方です。
(1)視聴率10%の放映枠があり、放映後に100件のWebサイト流入が見られた。
(2)視聴率が5%の放映枠があり放映後に300件のWebサイト流入が見られた。
このやり方は、放映枠や曜日時間帯ごとに自社Webサイトへの流入貢献度を計測することができるため、広告主企業にとって、どの・曜日・時間帯が評価の高い放映枠かを判断する指標にもなっています。ただ、曜日・時間帯の成績が良くても、放送局で違いが出るかもしれませんし、放送局が同じでも番組のジャンルが異なるだけで違いが出るかもしれません。数種類の広告素材を放映したとしたら、素材ごとに違いが出る可能性もあります。
この分析結果を根拠に、見積もりの際のゾーニングや改案作業(どの枠に放映するかを交渉する作業)を進めることで、より自社Webサイトの流入量を多くすることができるかもしれません。
ただし、この手法には注意点も存在します。図2を見ると、放映期間内における1番組あたりのCM放映回数は、8割以上が1~2回となっています。仮に放映枠の分析をするとなった場合は、1番組あたりのCM放映回数の割合を気にしなければなりません。
つまり、試行回数が少ない中での分析になることは留意すべき点であり、一概に成績が良かった曜日・時間帯=評価の高い放映枠にはならないということです。
(図2:短期間スパイクモデルの注意点)
そこで我々は、分析結果の信頼性を高める手法をとっております。CM放映における評価のつき方において、どの要素が重要視されるのかを分析し、評価を「偶然」ではなく根拠に基づいた信頼性の高いものとすることで、その後のプランニングやバイイングの再現性も高めています。
そのCMにとって評価が高くつきやすい要素は、曜日なのか時間帯なのか、はたまた番組ジャンルなのか、案件ごとに重要な要素を判断し、信頼性の高い分析結果を提供しPDCAサイクルを回します。
計測方法2:「時系列統計モデル」
「時系列統計モデル」は、放映期間中にどれだけKPIがリフトしたかを統計的に算出するモデルです。KPIと書きましたが、サイト流入だけでなくサイト内コンバージョンでも算出することができます。テレビCMがどれだけコンバージョンに貢献できたか、テレビCMのCPAなども算出することが可能です。
これは「因果推論」によって「反実仮想」を推計する手法を使用しています。広告を放映・配信した際には、KPIの数値がある程度リフトした状態になるかと思いますが、それとは逆に「もし広告を放映・配信していなかったら、KPIの数値はどうだったのか」という「反実仮想」を統計的に算出する手法です。
「反実仮想」で算出した値と「実際の値の差分」が広告によって引き起ったKPIの数値と判断します。
(図3:反実仮想の考え方)
この手法は、意図的に「広告を放映・配信しない」地域を作る必要があります。その地域のKPIの推移を教師データとして「広告を放映・配信した」地域の反実仮想を算出します。
ここまででお気づきの方もいらっしゃるかと思いますが、この手法はテレビCMに限った評価手法ではありません。オンライン・オフラインに限らず、全ての広告チャネルに適用できます。例えば、インターネット動画広告・新聞広告でも、その広告効果を可視化することは理論的には可能です。
我々アイレップは、この手法を用いて「テレビCMとTVer広告」の結果と「テレビCMのみ」の結果を比較してきました。数回にわたって実証実験を重ねた結果、TVer広告で自社Webサイトへの流入効果を高めた事例もあります。
(図4:テレビCMとTVer広告の併用でWebサイトへの流入が向上した事例)
またテレビCMとYouTube広告、両方のROASをこの手法で計測しモデリングすることで、テレビCMとYouTube広告の適切な予算配分を算出することも可能です。テレビとデジタルの予算配分割合の正解は?という問題に直面した方はたくさんいらっしゃると思いますが、この手法を使うことで、ある意味正解にたどり着くことも可能です。
(図5:テレビCMとYouTubeの予算配分の正解を導いた事例)
ダッシュボード「x2 supported by TV AaaS」上でモニタリング
ご紹介した2つのモデルは両方とも、弊社独自開発ツールである「x2 supported by TV AaaS(以下、x2)」に搭載されております。弊社がご支援した案件に関しては、同ツールのダッシュボード上でモニタリングができる仕組みになっております。「x2」の詳細は次回に譲ることにしますので、楽しみにしておいてください。
本日紹介した「短期間スパイク検出モデル」と「時系列統計モデル」ですが、この2つのだけで全ての広告主企業のニーズに答えられるとは全く考えておりません。
ですが、前回お伝えした通り、我々アイレップは博報堂DYグループが保持している様々なデータやツールが使用できます。
我々は広告主企業のニーズに答えるため、多くのツールや手法を選択することができます。そこにインターネット広告のPDCAサイクルを回すことで培われた分析力が加わって、幅広いニーズにお応えできると考えております。
まとめ
我々アイレップの「運用型デジマス広告」を支える「テレビCM」の効果計測について、考え方や手法をご案内しました。改めてとなりますが、我々アイレップの「テレビCM」における高いケイパビリティを認識していただけたかと存じます。
Vol.1 アイレップが提唱する「運用型デジマス広告」 Vol.2 アイレップのテレビCMの効果測定について Vol.3 アイレップ独自開発ツール「x2 supported by TV AaaS」を活用するテレビCMの効果計測 Vol.4 テレビCMとインターネット広告の統合指標について Vol.5 テレビCMのメディアプランニングを科学する Vol.6 企画未定 |
※あくまで現時点での計画ですので、変更の可能性もあることはご了承ください。
※x2(DOUBLE SCORE)サイトへ遷移します
この記事の著者
冨田 真吾
2007年にDACに入社。媒体社向けのソリューション営業、アクセス解析の事業推進を経て、運用型広告の責任者として業務に携わる。2017年からの3年間、コンサルティング会社でテレデジ広告ソリューションを推進しさまざまな広告主企業へ導入。2020年11月にアイレップにジョイン。
2007年にDACに入社。媒体社向けのソリューション営業、ア...