
生成AIは企業活動と日常生活に深く浸透し、今や私たちの生活に欠かせない存在となっています。そして2025年現在、検索の世界でも大きな変化が起きています。GoogleやMicrosoftをはじめとした大手企業がAIを活用した検索サービスを展開したことに加え、OpenAI(ChatGPT)やPerplexityなどの新興企業も次々と検索市場に参入しており、新たな検索体験を提供しています。本記事では、AI検索に対して検索AIサービスの基本的な情報や最新動向、調査結果を踏まえ、当社のAI検索の研究プロジェクトである‟次世代検索研究所 piONEer”が見解をまとめております。
より詳しい調査・分析結果については、DL資料「AI検索白書 2025」をご確認ください。
💡用語説明
本記事では、「従来型検索」「AI検索」「検索AIサービス」を以下の定義で使用しています。 従来型検索 検索AIサービス AI検索 |
検索の新定番「検索AIサービス」とは?
「検索AIサービス」とは
「検索AIサービス」とは、自然言語での検索結果をWeb上の情報をもとにAIが自動で要約・整理し、提示するサービスです。これらは検索AIサービスの中でも、Chat GPTやGeminiをはじめとした、AIと対話する形式で継続的なやり取りが可能な「対話型」と、AI Overviewsをはじめとした、一問一答形式でWeb上の情報を要約・整理し提示する「検索要約型」に分類できます。
出典:Google、「AI による概要 : ウェブにつながる新しい方法」、Google JAPAN Blog
(図1:「対話型」と「検索要約型」の検索AIサービスの特徴 )
このような検索AIサービスが流通する前は、検索プラットフォーム上でのキーワード検索が主流でした(従来型検索)。従来型検索においては、検索結果に表示されたWebサイトへ流入し、目視で求めている情報を探す行動が一般的でした。一方で、検索AIサービスは、Web上に存在する膨大な情報を集約・整理し、求めている粒度で結果表示がされます。使い方によっては、単純な検索行為だけでなく、Webサイトの内容をAIが要約してくれたり、複雑な情報の整理をAIが担ってくれるため、検索の効率性が上がったり、深い洞察を得たりすることも大きな特徴です。
(図2:従来型検索とAI検索の違い)
AI技術の進歩が進む一方で、AIが生み出すコンテンツに伴うリスクも指摘されています。たとえば、AIが事実とは異なる情報や実在しない内容を回答として生成してしまう「ハルシネーション」と呼ばれる現象があります。また、過去の古いデータが引用され、最新の状況とは異なる回答が出されることもあります。そのためAIを利用する際には、情報の信頼性や鮮度を十分に確認することが重要です。さらに、著作権やプライバシーの侵害といったリスクもあるため、利用目的や場面に応じて慎重に活用する必要があります。
(図3:AIを取り巻く環境とリスク)
検索AIサービスの登場は、利便性の高さから多くのユーザーに使われるなど、早くも検索の新定番となりつつあります。しかし、媒体社や広告主にとっては、サイトへの流入数の減少やコンテンツの不正利用など、検索連動型広告や検索流入への影響が懸念されています。
さまざまな特徴にご注目!各社検索AIサービスの紹介
ツール名 |
提供元 |
分類 |
特徴 |
ChatGPT |
OpenAI |
対話型 |
膨大な知識ベースと柔軟性の高い対話力が特徴。文脈の理解力や創造力が強み。 |
Gemini |
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対話型 |
Google 検索やYouTube、Gmailなど各種サービスとのシームレスな連携が可能。 |
AI Overviews |
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検索要約型 |
Google 検索時の最上位に表示される検索結果の要約機能。米国では広告導入も。 |
Copilot |
Microsoft |
対話型 |
Microsoft Office製品にも搭載されており、日常的な業務効率化が強み。 |
Perplexity |
Perplexity |
対話型 |
「対話型」と「検索要約型」のハイブリッドで、Web上の情報を即時取得し回答。 |
Claude |
Anthropic |
対話型 |
長いコンテキスト保持が可能で、複雑な長文対話でも文脈処理ができる。 |
Genspark |
MainFunc |
対話型 |
ニュース/ファッション/旅行などジャンルごとの検索スペースを持つ。 |
Felo AI |
Felo |
対話型 |
日本発の検索AIサービスで、音声読み上げ機能やマインドマップ生成なども可能。 |
AI検索時代は既に到来。調査結果が示すユーザーの最新動向
今回、AI検索におけるユーザーの利用実態について、Webアンケート調査を実施しました。こちらでは調査結果の一部を紹介します。
調査では、約18%の人が「Webサイトで情報収集する従来型の検索機会が減った 」と感じており、特に旅行計画時には観光スポットやホテルなどを調べる際など情報収集の場面において、従来型検索からAI検索への移行が進んでいるようです。また、AIが生成した情報への信頼度は世代によって異なり、若年層ほど信用する傾向が強く見られました。これらの結果から、2025年現在、AI検索は既に多くのユーザーに浸透しており、今後は従来型検索の機会が減っていく可能性も考えられます。
①約18%が従来型の検索機会の減少を実感。検索AIサービスの利用実態
従来の検索行動への影響に関する設問では、全体の約18%が「URLをクリックしてWebサイトで情報収集をする機会は減少した」と回答。引き続き従来型検索をおこなうユーザーが多い一方、検索AIサービスを日常的に利用する層も一定数存在することがわかりました。AIの浸透にしたがって、検索体験はさらに変化していく可能性が高いです。
(図4:検索行動の変化に関する調査)
②情報取集で大活躍!検索AIサービスの利用シーン
日頃の検索行動において、人々は具体的にどのようなシーンで検索AIサービスを利用しているのでしょうか。旅行計画の場面を例に調査したところ、検索AIサービスの活用用途はさまざまあるものの、特に「現地付近の観光スポットや名所を『調べたい時』」「現地付近のお店やホテルを『探したい時』」など、情報収集の場面での活用が多いことが分かりました。日常的な情報収集においても、既に従来型検索からAI検索への移行が始まっているようです。
(図5:シーン別の検索AIサービス利用度調査)
出典: Andrei Broder, A taxonomy of web search, IBM Research
③生成AIの回答に対する信用度は10代-20代の若者が最も高い結果に
世代によるAI検索の受容度も特徴的です。AIが生成した回答への信用度に関する設問では、10-20代の50%以上が「信用できる」という回答になりました。一方で、50-60代の45%以上は「どちらともいえない」と回答しており、世代間で生成AIへの信用度には差があることが見受けられました。
(図6:生成AIの回答に対する信用度調査)
調査概要
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AI検索領域の今後の見通し(2025年7月時点)
(1)今後の技術アップデート
検索AIサービスが広告事業を開始
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AI Overviews:2024年より米国でテストが開始、日本での展開は未定。ユーザーの検索クエリとAI回答の両方を考慮した広告が配信される。
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Perplexity:2024年10-12月に米国で広告事業を開始。日本では2025年を予定。また、今後はPaypalと連携したコマースソリューションの提供も予定している。
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Copilot:Copilot 機能内でオーガニックの対話に溶け込む形の広告メニューを提供予定。既に日本国内でも一部ユーザーにおいて表示が開始している。
(図7:Copilot内に表示される広告イメージ)
検索AIサービスの新機能
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Google:「AI Mode」が米国で展開開始。Google 検索とGoogleアプリの検索バーに新しくタブが表示され、AIとの長文でのチャット形式の対話が可能となる。
(2)外的環境の変化
AI技術の発展とともに、生成AIコンテンツがもたらす権利侵害や虚偽情報などの問題点も指摘されています。現在EUを中心に生成AIの法規制が進められており、ルールの遵守を義務付ける動きが始まっています。また日本国内においても、AIに特化した初めての法律が成立する予定です。今後はAIの各種規制が広告主のビジネスに影響を与える可能性があります。
(図8:EUと日本におけるAIにまつわる法規制の動き)
出典:デジタル庁、「人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律」、 e-GOV 法令検索
Future of Life Institute, The AI Act Explorer, EU Artificial Intelligence Act
デジタル庁、「行政の進化と革新のための生成AIの調達・利活用に係るガイドライン」、デジタル社会推進標準ガイドライン
(3)マーケティング・SEOへの影響
既存広告への影響
技術調査会社Gartnerは、2026年までに検索エンジンからサイトへのトラフィックが約25%減少すると予測しています。特にAIを活用した検索連動型広告の普及により、「検索結果からサイトに遷移する」という行動が減少する可能性が危惧されており、サイトへ遷移せずに検索行動が終了する「ゼロクリックサーチ」の増加が想定されています。ゼロクリックサーチが増えることで、基本的な情報収集を目的とするWebサイトへの流入(クリック数)減少や、UU数減少に伴うリターゲティングの配信対象減少などが影響として考えられています。
AIO(AI最適化)
また、検索連動型広告やSEOの上位表示ロジック変動も可能性として考えられます。SEOのAI検索版である「AIO(Artificial Intelligence Optimization)」という概念が既に広がっており、AIに理解されやすい・回答として引用されやすい情報構造の作成やコンテンツ戦略が求められ始めています。当社では既に生成AI時代に最適化したSEO戦略を支援する「AIO(AI最適化)診断サービス 」の提供を開始しており、生成AI枠の表示状況を調査・分析し、最適な戦略の提案・推進を支援しています。
(図9:SEOとAIOの比較)
出典:Hakuhodo DY ONE 、「Hakuhodo DY ONE、国内のAI検索エンジン開発企業Feloと戦略的業務提携」、Hakuhodo DY ONE
Gartner , Gartner Predicts Search Engine Volume Will Drop 25% by 2026, Due to AI Chatbots and Other Virtual Agents, Gartner
まとめ
上記の調査結果から、ユーザーは従来型の検索機会の減少を既に実感しており、また活用シーンによっては従来型検索からAI検索への移行が進んでいる現状が見受けられます。
さらに、各検索AIサービスのアップデートも今後予定されており、ビジネスへの影響も予想されることから、早期段階での注目が重要であると考えられます。
なお、本調査結果に加えて、「AI検索白書 2025」内では検索連動型広告に対する生活者の意識や傾向を含めた調査など、より深く生活者の実態を把握できるデータを公開しております。ぜひご確認ください。
「次世代検索研究所 piONEer(パイオニア)」とは
株式会社Hakuhodo DY ONE内で発足されたAI検索の研究プロジェクトです。AI検索および検索AIサービスにおける広告の可能性や、既存の検索連動型広告へのビジネス影響について研究をおこなっています。当社はインターネット広告黎明期から20年以上、検索連動型広告の分野に向き合い、長年にわたりリーダーシップを発揮してきました。また、AI検索の領域にも積極的に取り組み、既に各種サービスの提供を開始しています。
この記事の著者
増本 美加
2024年に株式会社Hakuhodo DY ONEへ入社。メディアビジネス本部に所属し、媒体社との協業業務を担当。現在Google担当として、媒体のセールス活動、社内向け情報発信、社内からの相談対応などをおこなっている。社内プロジェクト「次世代検索研究所『piONEer』」ではAI検索に関する調査・情報発信に従事。
2024年に株式会社Hakuhodo DY ONEへ入社。メ...