動画活用の既成概念を変えていく「突破する動画Studio」は、どのような研究をしているのか?
TEAM JAZZは、アイレップがデジタル広告運用で培った独自のノウハウを土台に、データとクリエイティブを駆使してデジタル時代の新たなマーケティングを実践するプロジェクトです。2023年9月より、企業の統合マーケティング支援を強化する目的で新たに5つの研究組織「JAZZ Studio(ジャズ スタジオ)」を設立しました。
そのひとつである「突破する動画Studio」は、メディアやテクノロジーとの連携により既存の方法論を突破し、動画広告の定義や発想を拡張する組織です。アイレップ独自のクリエイティブ・プランニングメソッド、徹底的に科学されたPDCA体系を特徴する動画広告制作、効果的な縦型動画の制作・活用術などを研究し、実践しています。今回は、中心メンバーである長谷川朝則と吉田真央、TEAM JAZZを統括する木野本朋哉に、Studio設立の背景、体制、活動内容、目標などを聞きました。
課題をクリエイティブで解決するクリエイターが所属
お二人はこれまでどのような仕事をしてきましたか?
長谷川:
テレビCMの制作プロダクションに勤めた後、約13年にわたりフリーランスのDP(撮影監督)として、海外でさまざまなナショナルクライアントのCM撮影に携わりました。アイレップに入社後は、動画クリエイティブ制作のコストを抑えつつクオリティを担保する方法や、合理的な制作ディレクションの追求、KPIや好意度の設計、ブランドコミュニケーションに取り組んでいます。
吉田:
アイレップにアカウントプランナーとして新卒社員で入社し、デジタル領域の運用やプランニングを担当してきました。現在は、第2クリエイティブユニットでコピーライターをしていまして、アパレル系、金融系、通信系などのクライアント企業の案件を担当しています。デジタルの各メディアに最適化したクリエイティブをどのように展開したらもっとも成果が出るか、そのような視点でクリエイティブを制作することに注力しています。
お二人のStudio内での役割は?
長谷川:
私は「突破する動画Studio」の責任者です。動画の既成概念を変えていく、突破していくという考えにのっとり、媒体横断のプロモーション統合施策やTikTokやInstagram・Facebookなど、縦型の動画のトレンドをいち早くキャッチアップして、そのトレンドに対してのベストな動画のあり方とはどういいものか、結果を出す動画のあり方とはどういうものかなど、ソリューションの提案をしていくのが私の役割です。
吉田:
「突破する動画Studio」内にはアイレップの組織に紐づくチームが6つあり、私はそのうちのひとつのチームのリーダーを務めています。当Studioの注力テーマをもとに、案件の現場でクライアント企業に方法を提案し、一緒に実践し、その成果をStudioとして発信していく一連の流れをとりまとめる役割を担っています。
木野本:
「突破する動画Studio」内の6つのチームには、クライアント企業の課題をクリエイティブで解決するクリエイターが所属しており、動画以外にもさまざまなクリエイティブを制作しています。チームの中で生まれてきた動画のナレッジや成果を「突破する動画Studio」を通して世の中に発信していくという体制になっています。
動画のクリエイティブや使い方の既成概念を変えていく
「突破する動画Studio」が発足した背景を教えていただけますか?
木野本:
デジタル広告の分野で、動画広告が市場として大きく伸びているという背景があります。伸びている理由はふたつあります。ひとつは、これまで獲得広告に取り組んできた企業が、さらなる成長を見据えて動画広告に取り組みはじめたから。もうひとつは、テレビをあまり見ない若年層にアプローチしていくために、テレビCMの予算をデジタル動画広告にシフトする企業が増えてきたからという理由があげられます。
アイレップがクライアント企業の課題にしっかり応えていくためには、動画広告の領域でナレッジを蓄積していくことが、非常に大事であると認識しています。
デジタル動画は、テレビCMと違い、プラットフォームごとにさまざまなフォーマットが存在しています。縦型もあれば、インフィードもあります。デバイスもスマートフォンやPC、タブレット、コネクテッドテレビがあり、それぞれに最適なクリエイティブがあります。
そのように動画のクリエイティブが多様化している中で、アイレップとして解を出したいし、解を出し続けなくてはいけない。動画の既成概念を変えていくという思いで、このStudioを発足させました。
「突破する」というStudio名には、どのような思いを込めていますか?
長谷川:
いくつかあります。例えば、生活者の視点。「縦型動画は見やすくていいよね」「YouTubeは倍速で見なきゃ嫌だよね」「テレビはちょっと違うよね」など、そういう若年層の思い込みを突破する。
また、クライアント企業の課題。「メディア統合ができていない」「クリエイティブがメディアごとにバラバラになっている」「生活者から見ると、ブランドコミュニケーションが一貫していない」といった、さまざまな課題を突破する。
何を、どのように突破するかを考えて実行していくのが、この「突破する動画Studio」の命題です。
吉田:
「突破する」の「する」には、ブレイクスルーの「スルー」も重ねています。古い常識、固定観念、過去の経験則、思い込み、あらゆることを突破していくような提案をしたいです。
「突破する動画Studio」の主要テーマである「Made for Media」「VOOST(ブースト)」「東京タテガタ研究所」について、それぞれどのような取り組みをされていますか?
吉田:
「Made for Media」は、複数のデジタルメディアを駆使し、それぞれのメディアに最適化したクリエイティブを制作しつつ、ひとつのプロモーションとして統合することで成果の最大化に貢献する、アイレップ独自のクリエイティブ・プランニングメソッドです。
「VOOST」は、動画を配信する前にしっかり調査をしたり、AIによる注視点分析ツールH-AI EYE TRACKERを使って分析したりすることで、徹底的に科学されたPDCAが特徴の運用型動画広告制作サービスです。
「東京タテガタ研究所」は、企業のマーケティング施策における縦型動画を専門に研究するマーケティングラボです。広告会社、プラットフォーマー、インフルエンサーが共創して次世代の縦型動画マーケティングの研究に取り組み、企業の縦型動画の活用をトータルで支援するプロジェクトです。
吉田真央
リアルと掛け合わせ、デジタルに閉じないプロモーション設計に挑戦したい
現在取り組んでいるテーマは何ですか?
長谷川:
コロナ禍が明けて、さまざまなシーンで人が集まるというムーブメントが増えてきました。こうした世の中の潮流の変化を踏まえながら、オフラインとデジタルを統合した施策設計で生活者のパーセプションをチェンジさせるには、クリエイティブとしてどのようなチャレンジが必要なのかという課題について、取り組んでいます。
吉田:
今、特に注力しているのは、インフルエンサーを起用したことによるバズと、クライアント企業が求めている成果を結びつけるための研究です。インフルエンサーが単独で施策を実施すると、バズは起きるものの、クライアント企業が求める成果に結びつかないこともあります。その理由を追究し、クライアント企業が望む成果を出すにはどうすればいいのかを探求するために、積極的にインフルエンサーとの協業をおこなっています。
これからどのようなテーマに取り組んでみたいですか?
吉田:
コロナ禍も明けて、オフラインのイベントは増えてきています。これまでアイレップでは、デジタルのプロモーションが多かったのですが、オフラインのプロモーションを絡めるなど、デジタルに閉じないプロモーション設計に挑戦したいです。
長谷川:
我々のデジタルのコミュニケーションで、販促市場にも参入していけるのではないかと考えています。例えば、住宅メーカーであれば、VRで3Dの体験ができるコンテンツとデジタルのコミュニケーションを接続させることで、郊外の住宅展示場に行かなくても、近くのショッピングモールで体験できるなど、テクノロジーを活用した新たな体験価値とデジタルの掛け合わせを創造していくというのはあると思います。そういったリアルとデジタルの掛け合わせというテーマにも取り組んでいきたいですね。
長谷川朝則
どのような外部の会社と共創体制を組んでいますか?
吉田:
クライアント企業、インフルエンサー、パートナーの制作会社、テクノロジーに強い制作会社、プラットフォーマーと共創をしています。クライアント企業の業種は、金融、アパレル、アプリ、EC、保険、ゲーム、エンタメ、SaaS、小売など、業種を問わず、さまざまな共創実績があります。
参加してほしい外部のパートナーはありますか?
木野本:
TEAM JAZZ自体、「クライアント企業と共創し、新しいチャレンジをしていく」というテーマがど真ん中にあります。例えば、まだ動画広告でやりきれていないことがある、試してみたい方法があるといったクライアント企業のマーケティング責任者や担当者の方は、ぜひお声掛けいただきたいです。
加えて、面白い取り組みをしている、面白い技術がある企業であれば、我々のアイデアを掛け合わせて、より広げていくこともできると思うので、アイレップと一緒に動画の未来を作りたいという企業のご参加も、非常にありがたいと思っています。
最後に、今後の目標をお願いします。
吉田:
「突破する」という名に恥じないように、新しい事例をどんどん作っていきたいです。
長谷川:
社会の風を読み取る力、生活者の潮流の変化を読み取る力を深めていくことが非常に重要です。変化を読み取ることで、課題をいち早く察知し、突破するアイデアを発想できると思っています。博報堂DYグループが掲げる「生活者発想」をしっかり強化していくことが、私たちの重要な役割だと考えています。
木野本:
動画クリエイティブの変化は、Z世代から起きています。2023年9月に開催されたJAZZ Fes Autumnでも多くのZ世代クリエイターが登壇しましたが、勢いのある若手が積極的にチャレンジできるStudioでありたいと思っています。
「突破する動画Studio」の野望は、アイレップが「デジタル動画広告」の第一想起になることです。規模やシェアが大きいということより、「動画でチャレンジングな取り組みをして、成果を出したい。ならばまずはアイレップに相談しよう」と、クライアント企業の方々に思ってもらえるように、動画のあるべき姿を常に提言し続けていきたいと思っています。
プロフィール
株式会社アイレップ
取締役
木野本 朋哉
2008年に博報堂に入社し、ストラテジック・プランニングから、制作・メディアのプロジェクトマネジメントまで、幅広くマーケティング・広告実務に従事。2015年には、外資系PEファンドに1年間出向し、M&A・PMI実務を経験。帰任後は博報堂DYホールディングスにて、グループ中期経営計画の立案・D.Aコンソーシアム・ホールディングスのTOBに携わる。2019年よりアイレップに参画し、2022年より取締役としてマーケティングサービス部門全体を管掌。また、自らが深く経営計画・事業開発に携わってきた経験から、クライアント企業の事業課題を捉えたマーケティング戦略・施策立案を得意とする。
株式会社アイレップ
長谷川 朝則
CM制作会社を経て、約13年間にわたりフリーランスとしてクライアント企業のクリエイティブを中心に活動。アイレップに入社後は、生活者目線の成果重視のクリエイティブを担当する。金融、保険、通信、医療機器、自動車、家電、IT機器、食品、飲料、化粧品、旅行、アパレル等の幅広い分野でのクリエイティブ業務に従事。
株式会社アイレップ
吉田 真央
アイレップにアカウントプランナーとして入社。東京、大阪の2拠点で博報堂DYメディアパートナーズに常駐し、デジタル領域の運用やプランニングを担当する。その後、コピーライターとしてプロトタイプ型テレビCM、TikTok・Instagramなど、縦型メディア文脈に沿ったクリエイティブを得意とする。
この記事の著者
DIGIFUL編集部
「DIGIFUL(デジフル)」は、株式会社Hakuhodo DY ONEが運営する「デジタル時代におけるマーケティング」をテーマにした、企業で活躍するマーケティング担当者のためのメディアです。
当社がこれまでに得たデータや経験から、具体的事例・将来展望・業界の最新注目ニュースなどについて情報を発信しています。ニュースやコラムだけでなく、日常業務や将来のマーケティング施策を考えるときに役立つダウンロード資料や、動画で学べるウェビナーコンテンツも随時追加していきます。
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