ロワーファネル(獲得領域)施策では、全メディアに対して慣習的に同じクリエイティブを利用することが多いですが、実はそのことにより大きな機会損失が生じている可能性があります。Hakuhodo DY ONEでは、メディアごとに効果を最大化させるポイントを熟知しており、そのポイントを踏まえたクリエイティブ制作をおこなっています。今回は、これまで当社が蓄積してきた「メディアごとに成果が出る広告クリエイティブ制作のポイント」を紹介します。「広告成果が出ない…」とお悩みのご担当者様、必読です!
メディア×クリエイティブで押さえるべきポイント
―― 一般的に、広告クリエイティブに関しては、どのような悩みが多いのでしょうか?
石井:ロワーファネル施策で最も多いご相談は、広告成果の頭打ちです。本記事における広告成果とは「獲得数(コンバージョン数)」を指しますが、特に「さらなる獲得を目指して、新しいメディアに広告出稿を始めたけれど、期待していたほど広告成果が出ない」というケースがとても多いと感じます。また、インハウスで制作・運用しているクライアント企業からは、なぜ伸びないのかの原因が分からない、というご相談を受けることも多いです。
そうしたご相談をいただいて実際のクリエイティブを確認してみると、「広告成果が出るクリエイティブのポイント」が押さえられていないことがあります。逆にいえば、そこを押さえれば、確実に成果は上がるということです。
また、メディアごとにも「広告成果が出るクリエイティブのポイント」は異なります。ひとつのクリエイティブをすべてのメディアに流用すると、あるメディアでは高い成果を上げる一方で、他のメディアでは全然広告成果が上がらない、いわゆる部分最適の状態になってしまうため、本来得られるはずの広告成果が得られません。広告成果を最大化するには、全体最適化を実現すること、すなわち、すべてのメディアに最適なクリエイティブを用意する必要があるのです。
―― それでは「広告成果の出るクリエイティブ」を作るためのポイントを教えてください。
石井:まずは前提として、メディア別の広告クリエイティブ制作にあたって理解しておくべきみっつの観点を紹介します。静止画/動画どちらにも共通する、重要な考え方です。
① ユーザーの視聴態度/モチベーション ② UIの見え方 ③ 画像/テキスト/音、それぞれの要素の影響力 |
ユーザーの視聴態度/モチベーション
―― 「ユーザーの視聴態度/モチベーション」とは、具体的にはどういうことですか?
石井:メディアごとに、コンテンツを見ているユーザーの視聴態度やモチベーションは異なります。モチベーションは「感情」と言い換えていいかもしれません。メディアごとに異なるモチベーションを踏まえたクリエイティブを、見せ方も含めて考える必要があるということです。
たとえば、ディスプレイ広告は検索エンジン系のアドネットワークを活用して配信することが多いため、ジャンルを問わず、掲出先はニュース系サイトが多いでしょう。その場合、ユーザーは「記事やコラムを読みたい」というモチベーションで視聴していると想定できるため、その気持ちに寄り添ったクリエイティブを作ることが大事です。
SNSを見ているときは、友人やインフルエンサーなど、「自分にとって親しい人や興味のある人の近況を知りたい」というモチベーションが予想されるので、広告クリエイティブもそれらに関連する内容が求められます。
また、動画サイトを見ているときは当然、「動画コンテンツを見たい」というモチベーションが大半ですが、一方で、「動画の音だけをBGMとして聴きながら作業をしたい」というユーザーもいます。そのような視聴態度も考慮すると、動画広告もビジュアルだけに頼らずに、音を聞いただけでも訴求内容が伝わるようなクリエイティブを作ることが求められます。このように、メディアごとの視聴態度やモチベーションを想定し、クリエイティブを考えることが大事です。
塩見:若年層のなかにはSNSを縦型のショートムービーとして捉えている層もいます。SNSとして使いたいモチベーションなのか、それとも動画を見たいモチベーションなのかは、メディアごとの特性を意識してプランニングをする必要があります。
UIの見え方
―― 「UIの見え方」に関して、押さえておくべきポイントはありますか?
石井:メディアごとにクリエイティブの「見え方」は異なります。見え方についてはこのあと詳しく説明しますが、クリエイティブの表示サイズ、表示位置、CTAボタンの有無、テキストの有無などを指します。見え方を考慮せずに全メディアで同じクリエイティブを使うと、ユーザーに見てもらえなかったり、クリエイティブの訴求内容がきちんと伝わらなかったりして、スキップされてしまいます。それを防ぐためには、メディアごとの「見え方」の特性を踏まえたクリエイティブ作りをすることが大切です。特に事前に考慮すべきなのは、以下の3点です。
■ メディアごとのクリエイティブの表示サイズを知ること
まず、「メディアごとのクリエイティブの表示サイズを知る」のは最も重要です。これによって、サイズに合わせた最適なクリエイティブを作れます。
■ CTA(Call To Action)ボタンの有無と、それをクリックさせるためのアクションを知ること
CTAボタンは獲得数(コンバージョン数)向上に直接つながるパーツだけに、設置できるかどうかの確認は必須です。クリックなのか、スワイプなのか、CTAボタンのアクションも併せて確認しておきましょう。
■ テキスト表示の有無を知ること
「テキスト表示の有無」とは、バナーの構成が「画像+テキスト」なのか、「画像だけ」なのかのいずれかを確認するということですが、それによって、クリエイティブによるコミュニケーションの方向性が決まります。たとえば、「画像+テキスト」であれば、画像に入り切らない情報をテキストで補完することができますし、「画像だけ」であれば画像単体で必要なメッセージを伝えなければなりません。この確認は、クリエイティブを制作するうえで重要な分岐点になります。
塩見:「画像+テキスト」で構成されるバナーの場合、画像とテキストの内容が一致しているかどうかも、良し悪しを判断するポイントになります。
画像/テキスト/音、それぞれの要素の影響力
―― 画像、テキスト、音の影響力に関して押さえるべきポイントはありますか?
石井:メディアごとの広告クリエイティブの見え方から、画像、テキストの影響力を考えます。
相対的な話ですが、画像の占有割合の大きいSNSは画像の影響力がより高まりやすく、ディスプレイ広告のなかでもサーチ系のアドネットワークやニュースアプリではサムネイル的に表示されるため、画像の占有割合は小さく、その分画像の影響力も小さいと考えられます。一方で、画像の占有割合が大きければ大きいほど、広告成果につながるとは言い切れません。メディア特性に合わせてカスタマイズすることが求められます。
どちらがいい悪いという話ではなく、メディアごとのそうした特徴の違いを踏まえてクリエイティブを考えることが大事だということです。テキストに関しては画像の逆で、SNSに比べてサーチ系のアドネットワークやニュースアプリの方が読まれやすい傾向にあり、影響度は高くなります。
動画広告においては、音の影響力も考慮する必要があります。考え方は前述した画像・テキストの影響力と同じです。ただ、音声オン/オフのどちらで視聴するかなどの視聴環境もメディアごとに特定の傾向があるので、それを踏まえてクリエイティブ制作をおこないます。
たとえば、動画サイトやSNSでは、音声オンで見る人が多い傾向があるので、BGMやナレーションなどの聴覚的な情報も重要です。一方、サーチ系アドネットワークやニュースアプリの場合、音声オフで見る人が多い傾向にあるので、それらのメディアで発信する動画の場合、音の情報影響力は低いと捉えていいでしょう。
広告成果の出るクリエイティブの作り方【静止画編】
―― 実際に広告成果の出るクリエイティブの作り方について、メディアごとに具体的なアドバイスをいただけますか?まずサーチ系アドネットワークからお願いします。
石井:当社がこれまでに蓄積した運用実績の知見から、同じメディアでも、静止画と動画では注意すべきポイントが違うことが分かっています。ここでは静止画/動画に分けて、広告成果の出るポイントを紹介します。
サーチ系アドネットワーク
石井:サーチ系アドネットワークの、広告成果の出るポイントは以下のとおりです。掲出先にニュースメディアが多いことを考慮して、オーガニックのニュース記事風クリエイティブなどが有効だと考えています。
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ニュースアプリ
石井:ニュースアプリでは、クリエイティブがサムネイル式に表示されることが一般的です。そもそもクリエイティブのスペースが小さく、画像はさらに小さいので、コピー、テキストで興味を引く形を基本としたクリエイティブが有効です。
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SNS
石井:SNSの場合、メディアごとにさらに特徴が細分化されます。今回は、SNS全般にいえることに絞って紹介します。
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広告成果の出るクリエイティブの作り方【動画編】
サーチ系アドネットワーク
石井:静止画と同じ面に表示されるので、意外と見逃されやすく、それを防ぐことを念頭に置いて作ることが大事です。最初の1秒で伝えるだけでなく、途中から見ても正しく情報が伝わるようなクリエイティブ設計が望ましいです。
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SNS
石井:静止画同様、メディアごとに傾向が異なりますが、一般的な傾向に絞って紹介します。
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動画サイト
石井:プラットフォームの機能上スキップができる場合は、スキップされることを前提に考えます。スキップできない場合は、ユーザーの気持ちに寄り添って作るのが基本です。
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メディアごとにベストプラクティスを提案するための、プロ育成
―― メディアの特性を踏まえたクリエイティブを作れる人材を育成するために、Hakuhodo DY ONEではどのような取り組みをしていますか?
石井:社内で頻繁にクリエイティブ勉強会をおこない、ナレッジを共有しているほか、メディア情報のアップデートが毎週周知される仕組みがありますので、メディア情報をキャッチアップしやすい環境が整っています。
当社では、クリエイティブを作る前に、「調査」というステップを必ず実施しています。たとえば、出稿先のメディアでどのようなバナーが回っているかを調査し、そこからその業界の「勝ちクリエイティブ」傾向を抽出したり、生活者のインサイトを探ったりします。それが「広告成果の出るクリエイティブ」につながっていると思っています。また、昨今はAIツールの活用も盛んです。博報堂DYグループオリジナルの統合マーケティングプラットフォーム「CREATIVITY ENGINE BLOOM」のクリエイティブモジュール「CREATIVE BLOOM」を活用し、ペルソナの作成やクリエイティブ案の訴求・コピーの生成をおこなっています。ほかにも、AIを活用して配信前のバナー成果を予測したり、既存クリエイティブの構成要素を分析する「デコンストラクション」という取り組みもおこなっています。このように、さまざまな機能のAIを活用することによってスピーディーに深い分析を実行することが可能です。
塩見:個人的な心がけなのですが、自分が日常で使っている/いない関係なく、ひととおりのメディア系アプリを定期的に閲覧するようにしています。また、Hakuhodo DY ONEは社内のコミュニケーションチャットでの発信が盛んなので、各メディアのちょっとした変更点を各自が気づいたときに関係者同士で発信し合うなどしており、そういう意味でも最新情報がキャッチアップしやすい環境下にあると感じています。
―― ディスプレイ広告のクリエイティブに関してお悩みを持つ企業のご担当者様に向けて、最後にひと言お願いします。
石井:Hakuhodo DY ONEは創業以来、さまざまなメディア、業種のクリエイティブを手がけており、各メディアの特性を熟知しているほか、主要メディアとのつながりも深く、最新のアップデート情報や傾向をキャッチアップしやすい環境にあります。「配信メディアを追加したがなかなか広告成果が出ない」とお困りのご担当者様は、ぜひお声がけください。
また、当社では、すべての社員が入社後3ヵ月ほどをかけて運用型広告に関する基礎研修を受けており、クリエイティブ制作メンバーも運用の基礎知識を持っています。この点は案外、他社にはない特長だと思っています。
塩見:当社の強みのひとつは、運用ストラテジストの技術の高さです。運用ストラテジストとの連携によりクリエイティブの最適化が実現できます。
また、部署を超えたコミュニケ―ションが活発な社内風土があり、普段から運用メンバー、メディア担当者とも情報交換しながら、効果を出すための改善ポイントを
探っています。
今回は獲得という軸からクリエイティブの良し悪しを判断するポイントを紹介してきましたが、こうしたポイントの知見をたくさん持っているのもHakuhodo DY ONEの強みです。今回ご紹介したロワーファネルだけでなく、施策範囲をミドルファネル、アッパーファネルに拡大していく際にも、ぜひご相談ください。
この記事の著者
石井 沙也香
大手アパレルメーカーで6年間自社ECサイトの運営を経験した後、2018年にアイレップに入社。現在はクリエイティブ部門でマネージャーを務める。アパレルや化粧品、BtoBや金融など幅広い商材を担当。女性向け商材のクリエイティブ演出や、ユーザーインサイトをもとにした企画立案が強み。マーケティングの戦略立案の部門にも所属経験があり、戦略から企画まで一貫したプランニングに力を入れている。
大手アパレルメーカーで6年間自社ECサイトの運営を経験した後...
塩見 未寛
アフィリエイト事業をおこなう広告代理店にてライター・ディレクション・コンサルを経て、2019年アイレップに入社。大手健康食品クライアント、化粧品、飲食を中心になど幅広い業種で獲得領域のクリエイティブ戦略設計、制作進行を担当。社内ではLPや記事LPの勉強会講師も務める。
趣味:スプラトゥーン。ウデマエX。ハマったらとことんの凝り性です!あと最近JO1がとても好きです。
アフィリエイト事業をおこなう広告代理店にてライター・ディレク...
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