昨今、運用型テレビCMという言葉で、テレビCMの効果を可視化する動きが活性化され、市場規模は拡大しています。本ウェビナーでは、テレビCMの効果をスパイク&ストックのふたつの側面からご説明します。また、テレビだけでなく、インターネット動画広告との統合指標の使い方や、SEOに与える影響についての研究結果を、事例を交えながらお話ししていきます。
「運用型テレビCM」は本当に「運用型」なのか
多くのクライアント担当者とお話しする中で、特に2020年2月からSAS(Smart Ad Sales)の販売が開始になったことで、「運用型テレビCM」への期待値がとても上がっていることを実感しています。
ただ、インターネット広告の世界で25年にわたって運用型広告に取り組んできたわれわれからすると、「運用型テレビCM」の「運用型」は、われわれの考える「運用型」とは少し違うものという印象があります。
テレビCMはインターネット広告と比較して、まだまだ運用レバーが少ないのが実情です。これでは適切なPDCAを回せる状況とは言えません。
(図1:運用型テレビCMは運用型広告?)
テレビCMを出稿する目的
そもそも、テレビCMを実施する目的とは何でしょうか。多くの人が、ブランドや商品の「認知度を上げるため」と答えるでしょう。間違いではありません。
認知施策としてテレビCMは非常に強い手段です。また、認知の拡大は、指名検索数の上昇にもつながります。アイレップのデータでも、認知度と指名検索数、そしてWeb広告のCV(コンバージョン)には強い相関があることが分かっています。
これからのテレビCMのプランニングには、CVの増加も目的に入れた科学的なプランニングが必要です。
(図2:運用型テレビCMの基本的な考え方)
「スパイク」&「ストック」とは
アイレップでは、最終的なKPIにつながる認知を拡大、維持するために「スパイク」&「ストック」というフレームワークに基づいて、テレビCMを運用しています。
(図3:スパイク&ストック)
「スパイク」とは、テレビCMを放映したことによる瞬間的な認知増加、Webサイトへの流入増加、ブランドリフトの上昇を意味します。「ストック」とは、SEOによる、中期的なWebサイトへの継続的な流入増加を意味します。このふたつを両輪で回していくことで、認知の拡大と、認知の定着を実現していきます。
この、テレビとWebを組み合わせて総合的に展開する認知施策を、アイレップでは「運用型デジマス広告」と名付け、単なる「運用型テレビCM」よりも効果が高い手法として多くのクライアント企業様にご提案させていただいています。
運用型テレビCMと運用型デジマス広告の違い
一般的に言われる「運用型テレビCM」はテレビCMの一種であり、あくまでもテレビCMに閉じたものです。一方、アイレップが提唱する「運用型デジマス広告」は、テレビCMもWeb広告もどちらも個別最適しながら統合的な予算最適化をおこないます。
(図4:運用型デジマス広告と運用型テレビCMの比較)
それを可能にするのは、博報堂をバックにした国内トップクラスのバイイング力と博報堂DYグループが保有する豊富な生活者データです。
(図5:博報堂DYグループならではのテレビCMの実現性)
アイレップはSEOを主軸にデジタルマーケティング領域で25年以上の歴史と経験を持っています。主要プラットフォームとの深い関係値、静止画/動画広告制作、効果測定の豊富な知見とナレッジ、100名を超えるクリエイターによる制作チームによって、企画から制作、運用、効果測定まで、一連の流れをまとめてご支援できます。
スパイク型の効果測定について
運用型デジマス広告において重要なのが効果測定です。運用型と名がつく以上、行動成果ベースに基づいた成果の可視化は絶対に必要です。
そこでアイレップでは、スパイク型の効果測定に際して、「短期間スパイク検出モデル」と「時系列統計モデル」というふたつの分析手法を使い分けることで、再現性の高い効果測定を実現しています。
(図6:テレビCM効果計測のふたつのモデル)
「短期間スパイク検出モデル」は、テレビCMが放映された前後3~5分でどれだけWebサイトに流入があったかを分析するモデル。「時系列統計モデル」は、キャンページ期間全体のテレビCMの成果を分析するモデルです。
短期間スパイク検出モデル
「短期間スパイク検出モデル」は、「x2(DOUBLE SCORE)」という、アイレップが独自に開発した専用ツールで評価します。
(図7:x2(DOUBLE SCORE)とは)
「x2(DOUBLE SCORE)」では、エリア/放送局/曜日、時間帯/素材ごとにWebサイト流入、アフィニティ、CVを確認することができます。テレビCMを出稿した番組ごとに評価を振り分けて、良かった番組/悪かった番組でランキング表示します。
(図8:x2でできること)
他では、サイト流入数/アクチュアルGRP、CM放映枠ランキングなどをグラフで明示するほか、サイト訪問者の属性分析、さまざまな条件でのクロス集計分析を出すこともできます。
【クロス集計分析例】
・時間帯×曜日別 流入数
・時間帯×曜日別 流入数/GRP
・番組ジャンル×曜日別 流入数
・CM素材×時間帯別 流入数
これらのデータによって成果が可視化されるため、狙い通りの成果が出なかったとしても、読み取れた特徴を次のコミュニケーションに生かすことができます。
時系列統計モデル
「時系列統計モデル」は、因果推論の手法を使っています。広告効果を算出すると同時に、広告を打たなかった場合の予測値も算出し(反実仮想)、その差分を広告の純増効果として、成果判断のひとつにしています。
具体的には、意図的にテレビCMを放映しないエリアを作って、この非配信エリアの実績を教師データにして、配信エリアの定性データを算出します。なお、これらのデータは「x2(DOUBLE SCORE)」上でも算出できます。
(図9:時系列統計モデルの仕組み)
分断された指標を統合する
テレビCMのKPIがCVである以上、今後はマスとデジタルを統合的にプランニングすることが常識になります。そこで課題となってくるのが、テレビCMとインターネット広告の指標統合です。
そこでアイレップでは、運用型デジマス広告の一環として、テレビCMの効果をインプレッションに換算することを提唱しています。
これによって、従来難しかったエリア比較だけでなく、Webサイト流入分析、コネクテッドTVの成果分析も可能になります。また、指標が異なるだけで見過ごされてきた成果に、正しい評価を与えることも、運用型デジマス広告の大きなアピールポイントだと考えています。
(図10:デジマス統合プランニングの必要性)
運用型デジマス広告には、3つの段階があると考えています。ここまでお話ししたのは、ケース1に相当する部分です。ただ、これはあくまでも、テレビデバイスに閉じた話です。
ケース2は、デバイスを跨いだ統合リーチ&フリークエンシーをKPIとして、プランニングやメジャメントをしていく段階です。
ケース3は、リスティングを始めとしたオンラインのロワーファネルの広告と、オフラインの広告、あらゆるオンライン・オフラインの広告をマーケティングメディアミックス(MMM)で分析して予算を最適化していく段階で、ここが最終目標だと考えています。
今回はお話しする余裕がありませんでしたが、ケース3に相当する事例も持っておりますので、ご興味のある方はぜひお声がけください。
(図11:運用型デジマス広告)
今後も、クライアント企業様と一緒に、この「運用型デジマス広告」の概念を育てながら、このやり方を運用型テレビ広告の業界標準にしていきたいと思っています。
テレビCMがストックに与える影響
「ストック」は、SEOによる、中期的なWebサイトへの継続的な流入増加のことです。近年、テレビCMはSEOにも影響を与えるようになってきました。
テレビCMを打つと、放送後に指名検索数が急上昇します。従来、その効果は一時的でした。しかし、2013年以降、とくに何らかの施策を打ったわけでもないのに、テレビCM放送後に継続的な自然検索流入が得られるケースが散見されるようになりました。
図12はその流入状況をイメージ化したものですが、大規模な認知施策のあとに自然検索の順位が上昇して、継続的に流入を獲得し続けるというパターンです。
(図12:前提:スパイク&ストック流入イメージ)
また、海外の事例ですが、テレビCM放送時に、提供サービスに関連する検索キーワードでの流入が3~5割も増えるというケースがありました。われわれが取り組んだ事例でも、インプレッションが競合の5倍になった時にキーワードの1位率が1.6倍になり、以後もその順位を維持するというケースや、テレビCM放映後に難関キーワードの順位が1位になったケースがあります。
なぜ、テレビCMを打っただけで、SEOが改善されたのか。アイレップでは複数の実証実験により、現在の検索アルゴリズムには、機械学習を応用した実際のユーザーの行動が評価指標に加えられているからだと考えています。(以降、「ユーザー行動」と呼称)
検索アルゴリズムの評価指標の変化
これまで、検索結果ページの順位は、Webサイトが持っているコンテンツや、他のWebサイトからのリンク獲得など、内部対策、外部対策という評価指標をもとに評価されていました。
しかし、現在では機械学習の応用によって、ユーザー行動という動的な評価指標が新たに組み込まれていると考えています。この、ユーザー行動に関する評価指標についてGoogleは明言していないものの、われわれでは、テレビCMや動画広告などの認知施策の実施によって、副次的にSEO効果が現れた事象を複数確認しております。
ただ、認知施策をおこない、多くのユーザーを集めさえすれば、SEOに効果があるというわけではありません。直帰率や、再検索の有無、類似サイトと比較した際のクリック率等の指標から、ユーザーの検索した目的が達成されたと見なされた場合、SEO観点でポジティブに働くと考えられます。この点を考慮すると、認知施策と併せて対象サイトの改善も必要になると推測されます。
(図13:参考:ランキングのメカニズム(海外考察から編集))
また、別のデータから、ブランド認知と検索順位についても、一定の相関が見られることが判明しています。
以上の例から、テレビCMや動画広告などの認知施策は、SEO観点でも有効に働く可能性が高い と考えています。
ストック型の成果を高める4つのポイント
ここまで説明したとおり、Googleはユーザーの検索行動をも評価に組み込むことで、ユーザーの検索体験、満足度、ブランドへの期待値を総合して、評価しています。
そうした検索アルゴリズムに対応するためにも、認知から検索体験の最適化が非常に重要だと言えます。すなわち、ストック型で流入したユーザーの行動がSEO改善に直結しているわけで、そこまで踏まえて施策を実施できるのが運用型デジマス広告の強みです。
ストック型の効果を高めるポイントは4つありますが、それらをファネルで表すとこのような形になります。
(図14:「検索」を中間地点とした体験と行動)
1.訴求の視認性
映像、テレビCMの中で訴求する文言に配慮することはSEO観点でも重要
2.動画の絵で好意度を高め、記憶させる
メッセージをキャンペーンの中で統一し、記憶させ、再訪問に繋げる
3.広告から誘導するページのユーザー体験、UXに力を入れる
再訪問されないと、SEO的には継続的な効果が全く期待できない
4.IMP(インプ)からサーチを把握する効果測定をおこなう
短期的な効果から継続的な効果までしっかり把握する
まとめ
アイレップは、元々インターネット運用型広告の分野で培ってきたPDCAサイクル、データ集計分析をベースに、「スパイク」「ストック」の成果創出につなげられる点に強みがあります。博報堂DYグループの歴史と体制を掛け合わせて、分析をもとにプランニングし、しっかりとバイイングで再現できる体制により、クライアント企業様にサービス提供していきたいと考えています。ぜひお気軽にご相談ください。
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この記事の著者
冨田 真吾
2007年にDACに入社。媒体社向けのソリューション営業、アクセス解析の事業推進を経て、運用型広告の責任者として業務に携わる。2017年からの3年間、コンサルティング会社でテレデジ広告ソリューションを推進しさまざまな広告主企業へ導入。2020年11月にアイレップにジョイン。
2007年にDACに入社。媒体社向けのソリューション営業、ア...
小野 洋平
株式会社アイレップ インタラクションデザインUnit ストラテジックプランニングUnit
O2Oメディアのスタートアップ企業(現東証プライム)を経て、2010年アイレップへ入社。ロワー、ミドル、アフターファネルまでを担当した後に、アッパーファネルの取り組みに参画。ソーシャルリスニング、モデリング等を用いた事前検証を組み込んだ制作プロデュースに取り組む。
株式会社アイレップ インタラクションデザインUnit ストラ...