検索結果でのリッチリザルト表示に必要とされている構造化データですが、Webサイト訪問者に表示する内容ではないこともあり、難しいイメージを持っているSEO担当者の方も多いのではないでしょうか。本記事では、Webサイトへ構造化データの導入を検討している方向けに、基礎知識やSEOにおけるメリット、導入方法を解説します。
構造化データとは
構造化データとは、コンピュータが意味を理解できるように情報やデータを一定の規則(構造)に従って記述したものを指します。本記事では、検索エンジンにWebサイトの情報を伝えることを目的に記述する構造化データについて扱います。
構造化データの例
例えば、ケーキのレシピを紹介するWebページで以下のようなHTMLを記述しているとします。
▽構造化されていない記述の例
<div> |
人には、パーティー用のショートケーキのレシピや考案者、投稿日、所要時間が記されているWebページと理解できますが、検索エンジンはこの意味を正確に理解することはできません。この内容を検索エンジンが理解できる規則に従って記述したものを構造化データと呼びます。
▽前述の内容を構造化データで記述した例
<script type="application/ld+json"> |
セマンティックWebとは
構造化データについて調べると、「セマンティックWeb」という言葉も一緒に目にすることがあると思います。セマンティックWebとは、一定の規則に従ったメタデータをWeb上の情報に付加して、テキスト情報に意味を持たせようとする考え方のことです。W3Cの創始者であるティム・バーナーズ・リー氏により提唱されました。構造化データの導入は、このセマンティックWebの考え方に内包される取り組みとなります。
構造化データ導入時の基礎知識:ボキャブラリ
構造化データの値を定義する規格をボキャブラリと呼びます。もっとも代表的なボキャブラリがSchema.orgで、GoogleやMicrosoft、ヤフーなどの企業により共同で運営されています。上記の例では、人名なら"name”という値を、所要時間なら"totaltime"という値を使う、と定めているのがボキャブラリのひとつであるSchema.orgということになります。
ボキャブラリには、Schema.org以外にもdata-vocabulary.orgなどがありましたが、2021年8月時点でGoogleがサポートしているのはSchema.orgです。ボキャブラリはSchema.orgを使う、と覚えておけば問題ないでしょう。
(図1:Schema.orgのボキャブラリを確認できるWebサイトのキャプチャ)
構造化データ導入時の基礎知識:シンタックス
構造化データをHTMLに記述するときの書き方(仕様)はシンタックスとよばれ、このシンタックスにも種類があります。代表的なのはJSON-LD、RDFa、Microdataの3種類で、それぞれ以下の様な書き方になります。
▽JSON-LD
<script type="application/ld+json"> |
▽RDFa
<div vocab="https://schema.org/" typeof="Recipe"> |
▽Microdata
<div itemscope itemtype="https://schema.org/Recipe"> |
JSON-LDは、RDFaやMicrodataと異なり、Webページに表示するテキストとは別で構造化データを記述するため、管理しやすいという側面があります。GoogleもJSON-LDの利用を推奨しているため、特別な理由がない限りはJSON-LDで記述すると良いでしょう。
SEO担当者が自社サイトに構造化データをマークアップするメリット
Webサイト運営者に構造化データの導入を促すことが増えているGoogleですが、SEOを推進するうえで構造化データを導入するメリットはあるのでしょうか?まずは、Googleがなぜ構造化データの導入を促しているのかを考えてみましょう。
Googleの検索結果は日々進化しています。例えば、求人に関するキーワードの検索結果では、2019年頃から求人検索の特別枠が表示されるようになっています。また、レシピに関するキーワードの検索結果でも、レシピ検索の特別枠が表示されます。
(図2:検索結果に表示される特別枠の例)※2021年8月時点
それぞれ、Webサイトを横断して情報を探せるようになっており、Googleの検索サービス利用者にとって便利な機能と言えるでしょう。Googleの検索サービスが便利になれば、利用者が増え、広告収益という点でGoogleにメリットがあります。
一方で、この特別枠を表示するには、Googleは構造化されたデータをWebサイト運営者から提供してもらう必要があります。なぜなら、多様なフォーマットで公開されているWeb上の大量の情報から、Webサイトを横断する形で情報を整理して特別枠に表示するのはとても難しいためです。Webサイト運営者に構造化データの記述を促すことでGoogleはページ内容の把握が容易になり、求人検索枠やレシピ検索枠のような特別枠の検索結果を充実させることができます。
もちろん、構造化データを導入することによるWebサイト運営者へのメリットもあります。通常の検索枠よりも目立つ特別枠に自社のWebサイトを表示できれば、検索経由の流入増加を見込むことができます。また、構造化データの情報が用いられるのは、特別枠だけではありません。以下の様に通常の検索結果などでの表示をリッチにするためにも使われており、検索結果でのクリック率を高める効果も期待できます。
(図3:検索結果画面に表示されるリッチリザルトの例)※2021年8月時点
検索エンジンにWebサイトで扱っている情報をわかりやすく伝えられるという点も構造化データ導入のメリットのひとつです。前述の通り、構造化データはコンピュータに意味を理解させるために記述するものなので、構造化データの内容が充実しているほどWebサイトで扱っている情報を検索エンジンが理解しやすくなります。検索エンジンにとって扱っている情報がわかりにくいWebサイトと比較すると、より適切な評価を受けることが期待できるでしょう。
自社のWebサイトで導入するプロパティの決め方
まずは、Googleが検索結果でリッチリザルトの表示対象としてサポートしている構造化データのプロパティから導入することを推奨します。Googleがサポートしているプロパティは以下の「検索ギャラリーを見る」のページから確認できます。自社のWebサイトのカテゴリをフィルタで選択することにより関連度の高いプロパティを表示できますので、導入すべきプロパティを決める際の参考にしましょう。
参照元:検索ギャラリーとリッチリザルトを見る | 検索セントラル | Google Developers
(図4:Googleが提供するリッチリザルトの種類を確認できるWebページ)
以下に、Webサイトの種類やコンテンツ形式ごとに一般的に導入が推奨されるプロパティを紹介します。
Webサイトの種類に応じて検討すべき構造化データ
求人サイトであれば求人検索の特別枠に表示できるよう、求人情報を構造化データで記述するJobPostingプロパティの導入を推奨します。また、レシピサイトであればレシピに関する情報を構造化データで記述するRecipeプロパティの導入がおすすめです。その他にも、通販サイトであれば商品に関する情報を構造化データで記述するProductプロパティ、イベント情報を扱うサイトであればEventプロパティなどがあります。
コンテンツの形式に応じて検討すべき構造化データ
コンテンツの形式に応じて導入を検討すべきプロパティもあります。例えば、動画の場合はVideoプロパティ、記事の場合はArticleプロパティなどがあります。また、よくある質問を掲載しているWebページにはFAQプロパティを、ひとつの質問に複数の回答を掲載しているWebページにはQ&Aプロパティの導入が向いています。
そのほか、多くのWebサイトではパンくずリストのプロパティが導入されています。余力がある場合は、Googleがリッチリザルト表示で利用していなくてもSchema.orgで定義されているプロパティの導入を検討しても良いかもしれません。検索結果で目立つというメリットはありませんが、Webサイトで扱っている情報を検索エンジンが理解しやすくなります。
構造化データのマークアップ方法
以下の手順でマークアップをおこないます。
1. Googleのヘルプページを参考に、マークアップすべき情報を確認する
構造化データのプロパティごとにヘルプページが用意されているので、この内容を参考にマークアップすべき情報を整理しましょう。リッチリザルトに表示するにはGoogleの定める「必須」プロパティをすべてマークアップする必要があります。また、完全な形でリッチリザルトの表示を実現できるよう、「推奨」プロパティを含め、可能な限りすべての項目を埋めることを推奨します。日付などは、Webサイトに表示させている形式だと構造化データの型に合わないことがありますので、必要に応じて変換ルールなども定めます。あわせて、構造化データのガイドラインも確認し、違反しないように注意しましょう。
参考:構造化データに関する一般的なガイドライン | Google 検索セントラル | Google Developers
2. 文法通り、構造化データをマークアップする
Webサイトの規模が小さい場合を除き、マークアップをする際にはCMSのプラグイン導入や、構造化データの生成と付与をシステムで実施できるようにする対応が必要になるかと思います。1で整理したマークアップしたい項目や要件をもとに、エンジニアの方と調整しましょう。
また、よく使われる構造化データのプロパティは、マークアップのための支援ツールも用意されていますので、こちらも参考にしてみてください。
・構造化データ マークアップ支援ツール
対応プロパティ:Q&A ページ、イベント、ソフトウェア アプリケーション、テレビ番組のエピソード、データセット、レストラン、商品、地域のお店やサービス、映画、書評、求人情報、記事
参考:構造化データ マークアップ支援ツール
・データ ハイライター
対応プロパティ:記事、イベント、地域のお店やサービス、レストラン、商品、ソフトウェア アプリケーション、映画、テレビ番組のエピソード、書籍
参考:データ ハイライターについて - Search Console ヘルプ
構造化データの検証方法
構造化データの検証にはツールが複数用意されています。目的に応じて、利用するツールを使い分けましょう。
リッチリザルト表示の要件を満たしているかを確認する
リッチリザルト テストを利用します。Googleがリッチリザルトの表示で利用しているプロパティに限り、表示の要件を満たしているかどうかを確認することができます。あわせて、検索結果でのプレビューやレンダリング後のHTMLも確認できます。Googleがリッチリザルトの表示に利用していない構造化データのプロパティはチェックできない点に注意が必要ですが、リッチリザルト表示を目的に導入した構造化データの検証は、このツールを使っておけば問題ないでしょう。
参照元:リッチリザルト テスト - Google Search Console
(図5:リッチリザルト テストの画面)
マークアップが文法的に正しいかどうか検証する
Schema Markup Validatorを利用します。Googleがリッチリザルト表示に利用しているプロパティかどうかに関わらず、Schema.orgが定義しているすべての構造化データについて、文法の正確さをチェックできます。文法の正確さのみを確認するため、Googleが定めるリッチリザルト表示に必須のプロパティが抜けていたとしても確認できない点には注意が必要です。このツールは、2021年7月までGoogleから提供されていた「構造化データテストツール」の後継にあたり、2021年8月からSchema.orgに運営が移管されて正式リリースされました。
(図6:Schema Markup Validatorの画面)
構造化データの導入後に、Googleが認識できているか確認する
Google サーチコンソールの拡張レポートを利用します。構造化データのプロパティごとに、「エラー」「有効(警告あり)」「有効」のステータスを確認することができます。
まとめ
構造化データの追加により、検索結果でリッチリザルトを表示させることで自社のWebサイトを目立たせる効果が期待できます。また、求人やレシピなどの情報を扱うWebサイトは、適切な構造化データを記述することで特別枠からの流入も見込むことができるでしょう。一方で、検索結果の機能は日々追加されており、これに伴いGoogleが利用する構造化データのプロパティも増えています。最新情報の把握や構造化データ周りの対応に課題をお持ちの場合は、アイレップにご相談ください。
▼関連資料
この記事の著者
増渕 佑美
2014年に株式会社アイレップに入社し、SEOコンサルタントとして従事。ソリューション部署に所属。通販や人材などデータベース型サイトを中心に経験を積んでおり、現在はメディアサイトのSEOも担当し幅を広げている。
好きなこと:散歩、パズル、動物の動画をみること
2014年に株式会社アイレップに入社し、SEOコンサルタント...