【CRMデータ活用】コロナ禍の影響を加味して顧客の行動を明らかにし、リテンション施策の立案に繋げる

2021.03.09

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昨今マーケティング業界でよく耳にする言葉のひとつに「CRM」があります。CRMとは具体的にどのような活動を指すのでしょうか?本記事では、近年ますます注目を集めるCRMについて、事例を交えながら解説します。

 CRMを通して顧客との関係性を育てる

CRM(Customer Relationship Management)とは、顧客と企業の関わり方を管理すること、具体的には、顧客とのコミュニケーションを通じて関係性を育て、継続的に顧客満足度を向上させていくことを指します。CRMを実現するうえでは、購買データや顧客の属性データ、アプリやECサイトの利用ログ、アンケートデータなど、顧客に関するデータ(CRMデータ)の利活用が非常に重要です。すなわち、CRMデータをどのように分析し、どのような施策に活かせるかということが、CRMの成否を分けるポイントとなります。

特に、新型コロナウイルス感染拡大のような不測の事態が発生した場合は、顧客の行動が大幅に変わることがあります。そのため、CRMデータから顧客の動向を正確に読み取ったうえで、顧客の動向に合わせたコミュニケーションをおこなうことがとりわけ重要になります。

本記事では、CRMデータ分析を通じてコロナ禍における顧客の動向を定量的に把握し、適切な施策の展開につなげた事例をご紹介します。

事例紹介(分析の実施背景)

今回ご紹介するのは、CRMデータを分析して顧客を分類したうえで、コロナ禍における購買行動の傾向を明らかにして施策に活かした事例です。

本事例で紹介する分析をおこなったクライアント企業では会員制度を導入しており、KPIとして「優良顧客数」を設定されていました。KPI達成のため、年間を通して複数の施策(キャンペーン)を実施しておりましたが、それぞれの施策においては、毎年同様の基準を満たす対象者に同様の施策をおこなっていました。具体的には、多くの場合において、対象者を直近の売上金額や購買頻度、直近の購買日といった評価軸(RFM)をもとにシンプルな基準によって選定していました。同時に、顧客にとっては、それらの施策が毎年あまり代わり映えしない恒例行事のように受け止められていました。

しかし、新型コロナウイルスの影響 によって顧客売り上げが減少しているなか、これらの恒例施策においても従来の基準を適用するだけではなく、現状に即した対象者の選定や施策内容の策定が必要となりました。

なぜならば、従来の基準で対象者を選んでしまうと、新型コロナウイルスの影響を強く受け、買い控えをしている売上促進の余地がない顧客に施策を当ててしまう可能性があったためです。ゆえに、コロナ禍で強く影響を受けた層はどこなのか、逆に影響をあまり受けていない層、すなわち売上促進の余地があるのはどの層なのか、また、それらの層にはそれぞれどういった傾向があるのかを分析で明らかにする必要がありました。

まとめると、本事例における主な課題は、以下の2点です。

(1)新型コロナウイルスの影響を考慮しながらアプローチが必要な顧客に対象を絞ることで、余剰な販促予算をかけないようにすること

(2)施策対象者の特徴や購買傾向を把握することで、施策の内容をコロナ禍での顧客に合ったものにすること

事例紹介(分析の実施内容)

上述の課題を解決するために、2019年度のデータをコロナ禍以前、2020年度のデータをコロナ禍以降と定義したうえで、昨対の売上データの推移をもとに、売上の回復度合いを見ながら対象者を選定することを提案しました。

まず、2019年度の累計購買金額をもとに、顧客を以下の3つのグループ(以下、「親セグメント」とする)に分類しました。
 優良顧客
 普通顧客
 非活発顧客

次に、それらのグループ内で2019年度の売上と比較して新型コロナウイルスの影響を強く受けた「売上減少層」・横這いの「変化少層」・逆に2020年度において売上が増加傾向にある「増加層」の3グループ(以下、「子セグメント」とする)に細分化しました。そして、上述の3×3=9つのセグメントに顧客の属性データを掛け合わせ、各グループの特徴(どのような顧客が多く含まれるのか)を明らかにしました。

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(図1:本事例における分析の実施ステップ)

その結果、主に以下のような購買傾向が明らかになりました。
 親セグメント「非活発顧客」において、2020年度には、ある時期だけ高額な買い物をするものの、その他の時期はほとんど買い物をしない顧客(「一発屋」のような顧客)が減少している
 親セグメント「優良顧客」の中でも、子セグメント「売上減少層」に該当する顧客は新型コロナウイルスの影響を強く受けており、2020年度に売上が激減している
 親セグメント「普通顧客」・「非活発顧客」において、子セグメント「増加層」に該当する顧客は新型コロナウイルスの影響をあまり受けておらず、2020年度に日用品や身の回り品を定期的に購入している

さらに、顧客の属性データも掛け合わせることで、それぞれのグループの特徴を一覧化しました。

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(図2:顧客セグメント別の分析結果と想定される顧客像)

この一覧表をもとに、施策の原資や目的に合わせ、対象グループを選定しました。
また、対象グループの特徴から衣料品の購買を促進する施策がフィットしていると判断し、施策の参加条件や訴求に使用する広告やLP(ランディングページ)のクリエイティブを調整しました。

これにより、従来あまり見直されてこなかった施策の予算と内容を、コロナ禍における顧客の動向に合わせる形で、最適化できました。

分析に必要な環境

上述のような分析を可能にするには、少なくともふたつの条件をクリアしている必要があります。

(1)CDP(プライベートDMP)・DWH(データウェアハウス)に、共通のIDをもつ顧客データが集約できていること
(2)ビジネス課題の把握から実際の分析業務までを実施できるスキルを持つ人材がいること

(1)について
多くの企業では、複数のデータベースに分散して顧客データが蓄積されている場合が多くあります。このような場合、共通のIDをもとにそれらのデータを統合する必要があります。また、既存顧客に対するアンケートを実施した場合など、新しく取得した顧客データと既存の顧客データが紐づけ可能な場合にも、データ統合の必要性は出てきます。

柔軟にデータを加工・分析するためには、社内に散在しているCRMデータをひとつの場所に集約する必要があります。その集約場所として活用できるのがCDP・DWHです。

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(図3:分析に必要なデータ基盤)


(2)について
CDP・DWHに集約されているデータを加工・集計するには、多くの場合SQLなどを扱う専門的なスキルが必須になります。また、ビジネス課題に対して適切な分析設計を組み立てるノウハウも必要となります。

アイレップのケイパビリティ

アイレップでは、上記の事例以外にも、CRMデータを活用した分析事例や、Google アナリティクス・Adobe AnalyticsなどのWeb解析ツールを使用したWebサイトの解析事例があります。豊富な分析メニューの中から、お客様の課題に沿った柔軟なサービスをご提案可能です。本事例では、顧客を分類する際にシンプルに購買金額でセグメント分割をおこないましたが、より高度な分析(RFM分析やLTV予測など)にもとづき顧客を分類・評価することも可能です。お客様の課題に合わせて、シンプルな分析から高度な分析まで、柔軟に分析をご提案することが可能です。

また、データ分析だけでなく、データ分析基盤(CDP・DWH)の設計・導入支援のサービスもご提供しています。基盤構築から分析まで、施策の設計から実施までを、一貫して支援する体制を整えています。

加えて、ゆくゆくはお客様ご自身でデータ活用をおこなえるよう、BIツールの構築や解析ツールのトレーニングサービスもご提供しています。

サービスの詳細や、他の分析事例にご興味がありましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。

<DL資料>ダッシュボードテンプレート(Google データポータル)

この記事の著者

DIGIFUL編集部

「DIGIFUL(デジフル)」は、株式会社Hakuhodo DY ONEが運営する「デジタル時代におけるマーケティング」をテーマにした、企業で活躍するマーケティング担当者のためのメディアです。

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