運用型広告の新たなクリエイティブメソッド『ATA(Attention-to-Action)』解説ウェビナー ~生活者の心を動かすクリエイティブ戦略とは~

2025.02.04

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デジタル広告市場は拡大を続ける一方で、プラットフォームの多様化、生活者の嗜好の変化や広告リテラシー向上に伴い、広告効果の最大化は困難さを増しています。生活者は広告への曝露が増加する中で、広告疲れや無関心などの状態に陥りやすく、企業は効果的なコミュニケーション戦略の見直しを迫られています。こうした現状を打破するために、従来の強いオファー訴求だけでなく、多角的なアプローチで生活者の自発的な行動を促す、運用型広告の新たなクリエイティブメソッド「ATA(Attention-to-Action)」についても詳しく解説します。本稿は、2024年12月17日に開催された「運用型広告の新たなクリエイティブメソッド『ATA(Attention-to-Action)』解説ウェビナー ~生活者の心を動かすクリエイティブ戦略とは~」での講演内容をもとにしています。本記事の一部は、当社内で開発・運用をおこなう生成AIツール「HAKUNEO」を活用して生成されました。なお、最終的な記事内容の確認・編集はDIGIFUL編集部がおこなっております。

昨今のデジタル広告と生成AIのクリエイティブ活用

昨今、デジタル広告の出稿量はテレビCMを超え、生活者は日々大量の広告に接触するようになりました。また、広告メニューの多様化なども相まって「興味のない広告を見ない(=広告離れ)」生活者が増加傾向にあります。一方で、広告主は生成AIの業務実装によるクリエイティブの高速PDCAが可能となり、Call To Action(以下、CTA)型広告の更なる活用が期待されています。しかし同時に、生成AIによる大量生成されたクリエイティブは、画一的な表現に偏ることも多く、広告を受け取る生活者が忌避感を感じて広告離れを引き起こす懸念も囁かれるようになりました。このような状況下で、当社も広告効果の頭打ちや新規ユーザー獲得の難しさ、ブランド認知度と成果の乖離、クリエイティブのマンネリ化などの課題をクライアント企業からご相談いただくことが増えています。そこで重要となるのは、生活者の感情や視覚に訴求し、まず「見てもらう」ための仕掛けづくりです。目に留まるクリエイティブを通して潜在的な興味関心を引き出し、行動を促す、新しい広告戦略が求められています。

「記憶に残す」ことに着目したクリエイティブメソッド『Attention-to-Action』

「広告離れ」が増加傾向にあるデジタル広告の成果(獲得)を実現するには、生活者に振り向いてもらえるような広告戦略の検討も視野に入れる必要があります。そこでHakuhodo DY ONEは、これまでの獲得型広告に加えて、生活者の心を動かし、行動を促すためのクリエイティブメソッド「Attention-to-Action(以下、ATA)」を独自に開発しました。従来のCTAは、既に購買意欲のある層に対して直接的な行動(購入、申し込みなど)を促すことを目的としていましたが、ATAは潜在層の興味関心を掘り起こし、新たな行動を起こすきっかけを提供します。

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従来のCTA広告はプッシュ型のコミュニケーションです。「お得情報」や「限定キャンペーン」など、既に興味関心が高い潜在層の購入を後押しするようなコミュニケーション設計や訴求が多く、獲得につながりやすい手法といわれています。一方、ATAはプル型のコミュニケーションを主軸とします。「共感」や「発見」などの感情をトリガーとし、生活者に「自分ごと」として捉えてもらうことをファーストステップとするため、生活者を潜在層から獲得へ引き上げることも可能にします。また、ATAは「記憶に残る」クリエイティブを重視しており、ブランドの世界観を維持することができるため、従来の認知目的のクリエイティブの企画力と獲得目的のクリエイティブの高速PDCAというメリットを併せ持っているといえます。

さまざまなギミックで「記憶に残す」ATA

ATAで実現した「記憶に残す」クリエイティブとして、メルカリで実施した事例を紹介します。メルカリは、既に高い認知度を誇るフリマアプリですが、「メルカリというブランドは認知しているけど、使ったことがない(もしくは長らく使ってない)」状態にある潜在層ユーザーの行動(利用)を促すきっかけを提供するために、ATAに基づいたクリエイティブを展開しました。

【共感型クリエイティブ】
「イヤホン片方なくした」という日常の些細な悩みに着目した動画広告。「あ、片方なくした。メルカリ~♪」というシンプルなフレーズと、イヤホンを片方だけ購入できるというメルカリの利便性を訴求することで、視聴者の共感を呼び起こし、潜在的なニーズを顕在化。

通常、多くの人が持つ悩みや共感を訴求軸とすることが多いですが、今回の事例では、あえて一部の人が抱く些細な悩みに焦点を当てたことにより、逆に強い印象を与え、アテンションに繋がったと推察しています。また、「片方のイヤホンだけでも買うことができる」というメルカリならではの利便性を訴求することにより、他ECとの差別化にも寄与したクリエイティブとなりました。

【インパクト重視・記憶に残すクリエイティブ】
「不要な参考書」をテーマにした動画広告。参考書を食べるというユニークな表現で視聴者の注意を引きつけ、記憶に強く残るクリエイティブを実現。

「本を食べる」という非現実的な表現を採用したことで、SNS上でも話題となり高い広告効果を発揮しました。YouTubeで配信する動画では6秒でアテンションを獲得するために、クリエイティブデザインのトンマナや分かりやすいフリと落とし、ターゲットに親和性の高い売り物(要らなくなった参考書)の選定など、さまざまなテクニックを詰め込みました。

【耳で記憶に残すクリエイティブ】
「しゅっぴん(出品)」という行動にフォーカスしたラップ調の動画広告。「出品、腹筋、屈伸…」と繰り返すリズミカルなフレーズと、出品にかかる時間(たったの3分)を強調することで、出品を促す効果的なクリエイティブ。

耳からの情報は記憶に残りやすく、多くの広告でも使われている手法です。「しゅっぴん(出品)」と音だけが類似する関係ないワードを繰り返して韻を踏んでいくだけ、というシンプルなものですが、訴求内容を可能な限りそぎ落とすことで「出品」の印象を強く残すことができたクリエイティブとなりました。

これらのクリエイティブは、主要メディアにおけるコンバージョン上位を占める結果となっています。もとよりKPIに設定していた記憶定着や好意度向上はもちろんの事、施策成果および事業成果としても高い効果を発揮し、定性面・定量面の両側面で効果を感じる結果となりました。このことからも、攻め(記憶に残る仕掛け)と守り(ブランド表現)のバランスを保ちつつ、「記憶に残る広告」を展開することも今後の獲得型広告におけるクリエイティブ戦略のひとつになると当社は考えます。

施策成果を底上げする生成AIの活用

デジタル広告においては、限られた期間の中で、「高速PDCA」つまり、クリエイティブ制作、配信、効果測定、改善を繰り返す必要があります。生成AIの活用は、この高速PDCAサイクルの実現性を高めるための有効な手段です。生成AIを活用することで、「制作スピードの加速」や「表現の幅の拡大」「費用対効果の向上」が期待できます。ATAにおいても、生成AIを活用したクリエイティブ制作を積極的におこなっています。たとえば、これまでは描き下ろしや撮影が必要であった自然風景の中で水を飲む少女のイラスト、ペーパークラフトで表現された車の走行シーン、巨人をモチーフにしたイラストなど、生成AIによって多様な表現が可能です。

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従来であれば、これらのクリエイティブ制作には高額な費用と時間を要するものでしたが、生成AIを活用することで迅速かつ効率的に制作することができました。

しかし、生成AIの活用には倫理的な側面、著作権問題、炎上リスクなどの課題も存在します。当社ではこれらの課題に適切に対処するため、著作権に抵触しない学習データの使用、複数段階でのチェック体制、そして倫理規定に基づいた制作プロセスを徹底しています。また、AI機能を搭載したクリエイティブプラットフォーム「CREATIVE BLOOM」を活用し、クリエイティブ評価や自動生成予測などの機能を提供することで、更なる業務効率化とクリエイティブ品質の向上を図っています。

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さいごに

ATAは、生活者の「広告離れ」や「無関心」などのデジタル広告における課題を乗り越えるだけでなく、未来の広告のあり方をも変革する可能性を秘めていると考えています。ATAは訴求軸をプッシュ型からプル型にすることで「生活者が自ら行動を起こす」きっかけを作り出すだけでなく、ブランディングと獲得効果を両立する新たな広告戦略です。しかし、従来のファネルマーケティングの概念が変わりつつある今、ターゲットによってはファネルのあり方やアプローチ方法の工夫が必要であり、CTAとATAなど、さまざまな戦略を複合的に実施し、成果を拡大していくことが重要です。デジタル広告は、単なる情報伝達手段ではなく、生活者の生活を豊かにする価値を提供する存在へと進化していくでしょう。生活者にとって価値のある広告体験を実現し、企業にとっても価値のある成果を残す手法として、今後もATAの活用の幅を広げていきます。

この記事の著者

DIGIFUL編集部

「DIGIFUL(デジフル)」は、株式会社Hakuhodo DY ONEが運営する「デジタル時代におけるマーケティング」をテーマにした、企業で活躍するマーケティング担当者のためのメディアです。

当社がこれまでに得たデータや経験から、具体的事例・将来展望・業界の最新注目ニュースなどについて情報を発信しています。ニュースやコラムだけでなく、日常業務や将来のマーケティング施策を考えるときに役立つダウンロード資料や、動画で学べるウェビナーコンテンツも随時追加していきます。

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