SGEとは?Google 検索の生成AIを使った新機能について解説

2024.02.20

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2023年は生成AIが大幅に普及し、多くの分野で活用が推進されはじめました。この流れはSEOの分野にも波及しており、Google やMicrosoft Bingなどの検索サービス大手は検索結果における生成AI活用を進めています。本記事では、Google がテスト環境で実験を進めている、検索結果における生成AIの新機能"Search Generative Experiences(SGE)"について解説します。

※SGEは2024年5月に「AI Overview」へ名称変更されました。

SGE(Search Generative Experiences)とは

SGEとは、Search Generative Experiencesの略で、Google の生成AIによる検索体験を提供する新機能のことを指します。現在は、β版がテスト環境で提供されており、この内容が実際に展開されるかどうかは不明ですが、将来的に実装される可能性がある機能のひとつとして動向が注目されています。

SGEを有効化してGoogle 検索をおこなうと、検索結果の上部に生成AIによるスナップショットが表示されます。

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(図1:検索結果の上部にSGEのスナップショットが表示される例)

この機能は2023年5月に発表され、2023年8月には日本語でもSearch Labsと呼ばれるテスト環境で利用可能になりました。

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(図2:Google がSGEを発表した記事)
画像引用:Supercharging Search with generative AI|The Keyword|Google

生成AIの技術は人々の生活を豊かにする可能性を持つ反面、誤情報や偽造された情報が生成・拡散されるなどのリスクも指摘されています。Google はSGEの発表時に、SGEについて記したPDFも公開しています。このドキュメントでは、SGEの概要や機能の解説に加え、Google の生成AI活用に対する姿勢やSGEを含む検索結果を安全・高品質に保つための取り組みが紹介されています。

参考:google-about-SGE.pdf

SGEの利用方法

SGEは以下の条件を満たすことで利用できます。

・個人向けGoogle アカウントを保有
・18歳以上
・Search Labsを利用できる国や地域に居住
参考:Search Labs と試験運用版を利用できる国や地域 |ヘルプ センター|Google 検索 ヘルプ

Search Labsとは、SGEを含むGoogleが開発中の新機能をテスト環境で体験できるプログラムです。利用する際は、Google のトップページ右上に表示されるSearch Labsアイコンをクリックします。

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(図3:Search Labsアイコン)

図4のような画面にて「SGE を有効にすると、検索時に表示されることがあります」の切り替えをおこなうことで、SGEを含む検索結果を体験できるようになります。

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(図4:SGE有効化の切り替え画面の例)

Google のSGEに関する発表

2023年5月の発表以降も機能の追加が進められています。

文章や画像の生成が可能に(2023年10月、英語環境のみ)

英語環境では、検索結果上で文章や画像の生成も可能になっています。

図5は、「Generate a picture of an alpaca wearing a sweater(セーターを着たアルパカの絵を生成して)」というキーワードのスナップショットです。キーワードに対応する絵が4枚生成されています。

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(図5:SGEで絵を生成する例)
参考:New ways to get inspired with generative AI in Search|The Keyword|Google

新たな生成AIモデル「Gemini」をSGEに搭載(2023年12月)

2023年12月には、開発中とされていたGoogle の最新生成AIモデル「Gemini」が公開されました。Google は「Gemini in Search」の試験運用を開始していることを明らかにしており、SGEの高速化が実現されたことで、米国における英語版での遅延が40%削減され品質も向上したとのことです。

参考: 最大かつ高性能 AI モデル、Gemini を発表 - AI をすべての人にとってより役立つものに|Google Japan Blog

マルチサーチの検索結果に生成AIのスナップショットを表示開始(2024年1月)

Google レンズを使った画像検索にキーワード検索を組み合わせた"マルチサーチ"の検索結果に、生成AIによるスナップショットの表示を開始するとしています。生成AIによるスナップショットの表示場所が拡張された形となります。

(図6:マルチサーチの検索結果にSGEのスナップショットが表示される例)
引用:New ways to search in 2024|The Keyword|Google

SGEによる検索結果上部のスナップショット内機能

SGEによるスナップショットの多くには、検索キーワードに対する回答本文のほかに、基本となる以下の要素が含まれます。

・右側リスト
・本文中リンク
・追加の質問

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(図7:SGEのスナップショットに表示される要素)

また、日本語での検索結果には表示されませんが、英語では以下のような検索でSGE内に特別枠が表示される様子も確認されています。

・ショッピング検索
商品名など買い物の意図を含むキーワードで、商品のリストがスナップショットに表示されます。この商品リストはGoogle のショッピンググラフ(製品、販売者、ブランド、レビュー、在庫などの大規模データセット)に基づいて構築されています。

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(図8:スナップショットに商品リストが表示される例)

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・ローカル検索
付近の店舗検索などローカル検索の意図を含むキーワードで、店舗のリストがスナップショット内に表示されます。

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(図9:スナップショットに店舗リストが表示される例)

 

・レシピ検索
レシピ検索の意図を含むキーワードで、レシピのリストがスナップショット内に表示されます。

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(図10:スナップショットにレシピリストが表示される例)

SGEのメリット・デメリット

SGEは、検索を利用するユーザーにとって以下のようなメリットがあると考えられます。

メリット①|検索結果上で簡潔な回答を得られる

従来の検索結果ではキーワードを入力して検索した後に"訪問するWebサイトを選ぶ"タスクが必要でしたが、検索結果上部にスナップショットが表示されることでWebサイトを選ぶことなく回答を得られるようになります。特に、「豆腐 作り方」や「因数分解 やり方」など、一般的な共通認識がすでに存在しているトピックについて検索する場合、検索結果から簡潔な回答を直接得られるのは利便性が高いと想定されます。

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(図11:「豆腐 作り方」のSGEのスナップショット)

メリット②|追加で知るべき洞察を得られる

SGEのスナップショットでは、回答の下に関連する質問が表示されます。これにより、ユーザーは追加で知るべき質問の選択肢を得ることができます。

以下の例では、「バレンタインチョコレートの作り方」のSGEのスナップショットの追加質問に「バレンタイン手作りチョコは何日くらい持ちますか?」と表示されました。バレンタインのチョコを手作りする予定の場合、知っておくべき情報であり、チョコ作りのスケジュールを決めるための情報として役立つ質問です。

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(図12:「バレンタインチョコレートの作り方」のSGEのスナップショット)

一方で、開発中の機能ということもありデメリットもあります。

デメリット|ハルシネーションが起こる

ハルシネーションとは、AI(人工知能)が事実ではない情報を回答することを指します。「hallucinate」という英単語には"幻覚を見る"という意味があり、生成AIが幻覚を見て回答を出力しているような様子が語源となっているそうです。

SGEも生成AIの技術が使われていることから、ハルシネーションは発生する可能性があります。SGEの情報を閲覧する場合は、情報が必ずしも正確ではない点を念頭に置くことが求められます。

SGEがSEOに与える変化とは?

現時点でSGEはテスト環境で実験が進められている段階です。「実際に展開されるのか」「展開された場合の表示カバレッジがどうなるか」などはわかっていませんが、本章では実際にSGEが一般化した場合に想定される主要な変化を紹介します。

ゼロクリックサーチが増える

検索結果上にSGEによる回答が生成される形となるため、Webサイトをクリックせずに検索行動を終了する「ゼロクリックサーチ」と呼ばれる検索が増える可能性があります。

この変化により、”基本的な”情報収集を意図したキーワードの検索流入比率が高いWebサイトは影響を受ける可能性があります。SGEのスナップショットは、複数のWebサイトの情報を総合して、検索キーワードに関連する簡潔な回答を生成します。スナップショットが提供する情報以上の価値提供が少ないWebサイトは、厳しくなるかもしれません。

反対に、スナップショットの情報では完結できない、”専門性の高い情報や実経験を踏まえた情報を提供するWebサイト”や”複雑なタスクの完了を支援できるWebサイト”は、SGEが普及してもWebサイト訪問のニーズは減らないと想定されます。

これまで表示困難だったキーワードで検索結果に表示される

SGEのスナップショットには、自然検索結果に表示されるページタイプとは異なるタイプのWebページが表示されるケースがあります。

例えば、「旅行」という検索キーワードでは、自然検索結果には各旅行サイトのトップページが表示されるのが一般的ですが、SGEのスナップショットには旅行の予定の立て方を紹介する"記事ページ"や、よくある質問を紹介する"QAページ"、旅行会社の"ランキングページ"などWebサイトの下層ページが複数表示されます。

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(図13:SGE内に表示されるページタイプと自然検索結果に表示されるページタイプ)

これは「旅行」という検索意図の広いキーワードに対して、SGEが生成する回答の情報構成(図13の例では、「計画のタイミング」→「旅行の時期」→「主な旅行会社」)に対応したWebページのリンクが表示されるためであると考えられます。

SGEへの備え

当社にて約200キーワードを対象に、SGEのスナップショット(右側リスト)の中に表示されるWebページのドメインが、同一キーワードの自然検索結果10位までにどの程度含まれるか調査した結果によると、すべて含まれるキーワードの比率が22%、ひとつ以上が10位以内となっているキーワードの比率が76%となりました。自然検索における順位向上のための取り組みは、SGEのスナップショットへの表示にもつながる可能性があります。

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(図14:SGEのスナップショット(右側リスト)と自然検索結果)

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(図15:SGEのスナップショット(右側リスト)と自然検索10位までのドメインの一致度調査結果)

また、日本のテスト環境では現時点では確認できませんが、前述の通り英語環境のSGEには商品リスト枠や店舗リスト枠、レシピリスト枠などのモジュールが表示されます。これらは構造化データやMerchant Center、Google Business Profileなど、Webサイト管理者側がGoogle へ提供する情報が活用されていると見られることから、自然検索におけるリッチリザルト表示のための取り組みもSGEのスナップショット内の表示に影響する可能性があります。

まとめ

本記事では、Google が試験開発中のSGEについて概要や機能、SEOへの影響などを紹介しました。開発フェーズのため今後も機能追加や変更が発生すると想定されるので、継続して動向を追っていくことが推奨されます。当社では継続的にSGEの調査を実施しているため、最新の調査結果などにご興味をお持ちの方はぜひアイレップにご相談ください。

 

▼関連資料

<DL資料>ダッシュボードテンプレート(Google データポータル)

この記事の著者

増渕 佑美

2014年に株式会社アイレップに入社し、SEOコンサルタントとして従事。ソリューション部署に所属。通販や人材などデータベース型サイトを中心に経験を積んでおり、現在はメディアサイトのSEOも担当し幅を広げている。
好きなこと:散歩、パズル、動物の動画をみること

2014年に株式会社アイレップに入社し、SEOコンサルタント...

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