BtoBビジネスのDXの課題を解決するために ──「GRIP & GROWTH」に集結したプロフェッショナルたち

2021.10.18

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BtoBビジネスをトータルに支援するソリューション「GRIP & GROWTH」は、博報堂DYグループの8社によって運用されています。それぞれに異なった専門性をもつプロフェッショナルたちは、この取り組みにおいてどのような役割を果たしているのでしょうか。各社のリーダーたちに、それぞれの役割とBtoBビジネス支援にかける思いを語ってもらいました。

池田 善行(写真中央)
博報堂 生活者エクスペリエンスクリエイティブ局

庄司 健一郎(写真左)
博報堂 生活者エクスペリエンスクリエイティブ局

横瀬 義貴(写真右)
博報堂DYメディアパートナーズ 新聞雑誌局 デジタルアカウント推進部

竹内 哲也(写真中央右)
アイレップ ソリューションビジネスUnit/執行役員

菊地 友幸(写真中央左)
博報堂プロダクツ データビジネスデザイン事業本部 本部長/執行役員

 

▼「BtoBビジネスをトータルに支援するソリューション」はこちら

※本記事は博報堂DYグループの「生活者データ・ドリブン・マーケティング通信」より転載しました。

BtoBビジネスのDXの課題とは

庄司:
クライアントのDX(デジタルトランスフォーメーション)を支援するために、博報堂、博報堂DYメディアパートナーズ、DAC(デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム)のグループ3社によってつくられた横断戦略組織が「HAKUHODO DX_UNITED」です。「GRIP & GROWTH」は、その組織が提供するBtoB企業向けのソリューションで、博報堂DYグループ8社の専門家がそれぞれの知見とスキルを結集して開発しました。今回はその中の4社のリーダーに集まってもらいました。はじめに、それぞれの役割を説明してください。

横瀬:
博報堂DYメディアパートナーズの役割は、主に「GRIP」に当たる部分です。さまざまなビジネスメディアと協業しながら、クライアント企業と見込み顧客とのつながりをつくるお手伝いをしています。

竹内:
アイレップの役割も同じように、見込み顧客とのつながりをつくるいわゆるリードジェネレーションの部分です。とくに私たちは、Webやコンテンツでの情報発信、SEO、検索広告などに関する支援をさせていただいています。

菊地:
博報堂プロダクツデータビジネスデザイン事業本部の役割は、見込み顧客とのつながりができた後のリードナーチャリングとCRM、つまり、見込み顧客になってもらうフェーズ、顧客になったもらった後のクロスセル/アップセルやロイヤル化フェーズのお手伝いをすることです。GRIP & GROWTHの「GROWTH」に当たる部分ですね。

池田:
博報堂は、プロジェクト統括、全体戦略立案を主に担当し、プロジェクトに並走する役割を担っています。

庄司:
まず、現在のBtoBビジネスのDX(デジタルトランスフォーメーション)の課題について、アイレップの竹内さんからお聞かせください。

竹内:
コロナ禍以降、セールスのやり方が大きく変わりました。以前はアウトバウンド型、つまりプッシュでアポイントを取って顧客先を訪問するスタイルがBtoBのセールスの主流でした。現在は直接の訪問が難しくなっているので、見込み顧客から問い合わせてもらう仕組みをいかにつくるかが重要になっています。

庄司:
インバウンド型の営業モデルをつくるということですね。

竹内:
そういうことです。そのためには、オンラインでの情報発信を強化して、見込み顧客とのさまざまな接点を創出することが必要です。重要なのは、自社がもっている情報をどのようなターゲットに、どのようなタイミングで届けるかをしっかり考えたコミュニケーション設計です。製品やソリューションの情報を一方的に発信するのではなく、顧客が本当に必要としている情報を適切に提供していかなければなりません。

情報発信の具体的な方法は、ブログ、ウェビナー、ホワイトペーパー(ダウンロードできる資料)などで、それらを検索で上位に表示させるテクニックも必要になります。情報提供からSEOまでをサポートできるのが私たちの強みです。

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庄司:
マーケティングとセールスの連携における課題については、どう考えていますか。

竹内:
マーケティングとセールスでは、KPIが異なります。マーケティングのKPIはたくさんの見込み顧客情報を集めてセールスに渡すことであり、セールスのKPIはたくさんの受注をとることです。共通のKPIを設定するとすれば、「より確度の高い見込み顧客情報を集めて受注率を上げていく」ということになるでしょう。

そのKPI達成に役立つ情報をもっているのは、セールス側です。ターゲットが誰で、その人たちにどういう課題があって、それに対してどういう提案をすれば受注につながるかを把握しているのはセールスだからです。問題は、その情報をマーケティングと共有できていないことです。必要なのは、セールスがもっているデータをマーケティングと共有して、トータルな戦略をつくっていくことです。

池田:
マーケティング側で見込み顧客のニーズをとらえるコンテンツをつくるには、セールス側の情報を解像度高く理解しておかなければならないということですよね。そのためには、データ連携、組織間連携、戦略づくりのそれぞれをトランスフォームしていく必要があります。そのお手伝いをするのも、GRIP & GROWTHの重要な役割です。

情報発信の3つのポイント

庄司
潜在的な見込み顧客に効果的にアプローチするにはどうすればいいのか。これについては、博報堂DYメディアパートナーズの横瀬さんに説明してもらいます。

横瀬:
「誰」に、どのような「方法」で、どのような「文脈」で伝えていくかを考えることが重要だと考えています。「誰」は、ターゲットに関する視点です。例えば、ソフトウェアを提供しているのであれば、対象は情報システム担当になります。その中でも、経理系ソフトなら経理、保険や金融系ソフトなら人事や総務ということになるでしょう。また、ターゲットが現場の担当者なのか、意思決定者なのかを見極める必要もあります。

「方法」は、具体的な施策に関する視点です。認知を広げたいならば、マス広告や交通広告を使うのが適していますし、見込み顧客リストをつくりたい場合は、イベントに協賛して参加者とのつながりをつくるという方法があります。より緻密なコミュニケーションを実現したいなら、オウンドサイトのコンテンツを充実させる、ウェビナーを実施する、SNSを活用するといったやり方が考えられます。

3つ目の「文脈」は、BtoB系メディアと連携しながら、見込み顧客によりアピールできる文脈で情報を訴求していくことを意味します。BtoB系メディア、ビジネスメディアには、「知見」「編集力」「ユーザーデータベース」「信頼感」といった強みがあります。その強みを活用させてもらいながら、コミュニケーションの文脈をつくっていくわけです。

「知見」とは、市場動向や社会動向を俯瞰して捉えるスキルやノウハウのことです。その知見を一種のコンサルティングサービスとして提供しているメディアがたくさんあります。「編集力」は、企業が伝えたいことと、顧客視点で伝えるべきことを見極め、それにそってコンテンツをつくる力です。最近では企業とメディアが協業して「ジョイントメディア」を立ち上げるといった手法も活発になっています。企業の製品情報だけではなく、業界や市場の動向や最新知識など役に立つコンテンツをジョイントメディアで発信していくことで、見込み顧客との確かなつながりをつくることができます。

また多くのメディアは、購読会員などの「ユーザーデータベース」をもっています。そのデータベースの属性情報や、それらの会員がどのような記事を閲覧しているかを把握することによって、より精度の高いアプローチをすることが可能になります。最後の「信頼」は、メディアとしての社会的信頼性だけでなく、客観的な第三者視点による情報の信頼性を意味します。それらの信頼性を担保としながら、顧客との信頼関係をつくっていくという考え方です。

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池田:
メディアが保有するデータを潜在的なターゲットの掘り起こしに活用することもできるのでしょうか。

横瀬:
方法は2つあると思います。1つは、誰がどのような記事を読んでいるかを把握し、PDCAを回しながら、ターゲットの解像度を徐々に上げていく方法です。もう1つは、データベースに登録されているユーザーがどのような製品情報や市場情報を見ているかをIDベースで把握する方法です。

池田:
そのような方法によって、企業側からは見えないターゲットを発見できる可能性がありそうですね。そこにもメディアと協業することの大きな意味があるように思います。

庄司:
見込み顧客との関係をつくる際には、オウンドメディアの役割も重要です。横瀬さんがジョイントメディアに関して指摘したのと同様に、オウンドメディアも、自分たちが伝えたいことを中心に構成するのではなく、見てもらいたい人に本当に役立つ情報を冷静に考えてコンテンツをつくっていく必要があります。それによって、自社の製品やソリューションの強みを新たに発見することもできるはずです。

池田:
自社の課題がまだそれほど明確でないターゲットに対しては、ビジネスメディアとの連携によって幅広い情報を提供し、すでに課題を自覚し、その解決策を探しているターゲットに対しては、オウンドメディアでより深い情報を発信していく。そんなメディアの使い分けも有効だと思います。

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コンテンツ設計にSEOの視点を入れていく

庄司:
では、それらのメディアやコンテンツによって、見込み顧客とどうやって関係をつくっていくのか。その考え方を竹内さんにお聞きしたいと思います。

竹内:
BtoBコンテンツは、PVを上げて話題性を醸成することを目的にしたものと、問い合わせや資料のダウンロードを促して見込み顧客を獲得することを目的にしたものの大きく2つに分けられます。前者のコンテンツは、多くの人が知りたいと思っている情報をタイムリーに出していくことが何より重要です。一方後者は、役に立つ情報を提供しながら、アクションにつなげていくことを目指すコンテンツです。セールスという観点でより重要なのは、後者です。

見込み顧客の獲得を目指すコンテンツでは、顧客のステータスに合わせていろいろな資料を用意する必要があります。例えば、担当者が購入を検討している段階であれば、機能や価格などの資料が必要ですし、すでに担当者レベルでは購入の決定をしていて、それを稟議にかける段階にある場合は、稟議書に添付できる導入実績や導入事例などの資料が求められます。

さらに、コンテンツのつくり方にSEOの視点を入れていくことも必要です。サイト全体の設計、記事のタイトルや見出しのつけ方、サイトが表示されるスピードなどを考えて、検索の上位に表示される工夫をすることで、コンテンツにアクセスしてもらえる確度を上げていけば、見込み顧客獲得の精度も高まります。

池田:
「顧客発想のSEO」ということを考えると、顧客の課題を示すキーワードにどのようなものがあるかを検証することも重要だと思います。そのキーワードをコンテンツの中に入れ込むことができれば、検索での上位表示の確率も高まりますよね。

顧客化における「HOTの不一致」という課題

庄司:
関係をつくった見込み顧客をいかに顧客化していくか。そのリードナーチャリングの考え方について、博報堂プロダクツの菊地さん、解説をお願いします。

菊地:
リードナーチャリングの基盤となるのが、CDP(カスタマーデータプラットフォーム)、MA(マーケティングオートメーション)ツール、オウンドサイトなどです。その基盤をしっかり整備した上で、マーケティングやセールスコミュニケーションを設計していくのが、BtoBにおけるリードナーチャリングやCRMの基本的な考え方です。

しかし、基盤ができていても、竹内さんが話されたように、マーケティングとセールスの上手な連携ができていないために、リードナーチャリングがうまくいかないケースがしばしばあります。よく見られるのが、「HOTの不一致」です。「HOT」とは、顧客の購買意欲のことで、これが高まるほど実購買につながります。HOT度はMAツールを使えばすぐに数値化できます。しかし、マーケティングがその数値をセールスに渡しても、実際にはまったくHOTではなかったということがよくあります。逆に、HOT度が高い段階でセールスが見込み顧客にアプローチできなかったために、HOT度が下がってしまうというケースもあります。

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では、そのギャップをどう解消していけばいいのか。方法の一つが、既存顧客がロイヤルカスタマーになっていったプロセスを分析することです。その道筋が見えれば、「よりポテンシャルの高いHOT」を初期の段階で見極めることができます。「見込み顧客へのアプローチを考える際は、既存顧客のデータは見ない」というのがこれまでの一般的な考え方でした。その発想を変えて、より幅広いデータを見ていくことが必要です。

もう一点、BtoBビジネスのDXへの取り組みで盲点になりがちなのが、電話やチャットなど非デジタル領域のインサイドセールスの重要性です。インサイドセールスのメリットは、デジタルコミュニケーションからは見えてこない生々しい顧客情報が把握できることです。その情報によって、MAツールで数値化したHOT度の確かさを検証すれば、「HOTの不一致」という課題を改善できるのではないか。そう考えています。

池田:
セールスの役に立たないHOT度は、実際にはHOTではないということですよね。例えば、オウンドサイトにアクセスしてきた見込み客の中にも、単に情報を収集したい人や、意思決定をしたい人など、さまざまなステータスがあるはずです。HOT度の数値が高いと判定された見込み顧客に、電話やチャットでアプローチしてHOT度の実際の高さを確かめることができれば、菊地さんが言うように「HOTの不一致」を解消に近づけることができそうです。

グループ8社の強みを柔軟に組み合わせていく

庄司:
GRIP & GROWTHには、ほかに、デジタル広告全般を手掛けるDAC(デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム)、営業支援会社のセレブリックス、BtoBコンテンツの制作を手掛けるタービン・インタラクティブ、戦略立案のプロフェッショナルであるユナイテッドといったグループ企業が参画しています。いずれの企業も、博報堂DYグループのフィロソフィーである「生活者発想」をビジネスのコアに据えています。BtoB領域においても、ビジネスパーソンを生活者と同じ目線で捉えることで、これまでにないビジネス支援ができると考えています。

菊地:
BtoBビジネスの中心に「人」という視点を置くということですよね。GRIP & GROWTH自体も、グループ内の企業連携というよりも、いろいろな「人」が集まって価値を生み出す取り組みと言っていいと思います。博報堂プロダクツの傘下には、イベントやインサイドセールスを支援できる実行部隊もいます。その人的リソースも活用しながら、より幅広いBtoBビジネス支援を実現していきたいですね。

竹内:
1社だけではできないことができる。それがGRIP & GROWTHの可能性だと思います。この陣容で、クライアント企業のあらゆるニーズに対応していくことがこれからの目標です。

横瀬:
クライアントの課題に応じて、チームの形を柔軟に変えながら、提供できる価値を最大化できればいいですよね。

池田:
そう思います。GRIP & GROWTHはBtoB企業のビジネスをフルファネルで支援できるソリューションですが、クライアントの課題は千差万別です。課題の規模感や種類に対応して最適な陣容と最適な解を提供していきたいと僕たちは考えています。ぜひお気軽にご相談いただきたいと思います。

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GRIP & GROWTHに関するお問い合わせはこちら

 

57286816301_05池田 善行
博報堂 生活者エクスペリエンスクリエイティブ局
GRIP & GROWTH 統括ディレクター/プロジェクトリーダー
クリエイティブ・ストラテジスト

 

 

 

57286816301_06庄司 健一郎
博報堂 生活者エクスペリエンスクリエイティブ局
GRIP & GROWTH プロジェクトサブリーダー
UXディレクター

 

 

 

 

57298233204_08横瀬 義貴
博報堂DYメディアパートナーズ 新聞雑誌局 デジタルアカウント推進部
博報堂DY MATCH プロデューサー兼任

 

 

 

出版流通、大手EC会社を経て2016年に博報堂DYメディアパートナーズに入社。雑誌局にて食品、飲料メーカー、通信会社、金融、サービス業など幅広く担当。その後、ビジネス開発部、戦略企画室にてメディアECビジネスやコミュニティマーケティングにも従事。

 

57298233204_09竹内 哲也
アイレップ ソリューションビジネスユニット/セールスイネーブルメント室長/執行役員





 

早稲田大学政経学部卒。大手SI会社、経営コンサルティングファームなどを経て、2014年にデジタル・アドバタイジング・コンソーシアムに参画。2018年よりアイレップも兼務し、グループ全体の統合デジタルマーケティングを包括的に牽引。2019年度よりアイレップ専任執行役員。ソーシャルメディアマーケティング支援企業のシェアコト社外取締役も兼任。専門は事業開発。著書に『統合デジタルマーケティングの実践: 戦略立案からオペレーションまで』『デジタル時代の基礎知識『BtoBマーケティング』 「潜在リード」から効率的に売上をつくる新しいルール』がある。

 

57298233204_010菊地 友幸
博報堂プロダクツ データビジネスデザイン事業本部 本部長/執行役員





 

2004年の博報堂グループ入社以来、データを活用するプロジェクトワークに専門従事。金融、自動車、通販、製薬、通信、消費財、流通業界など、幅広い業界で経験を積む。クライアント様の1stPartyData活用により価値・成果創出を共にするパートナー組織として、各種データビジネス/データ活用サービスを提供、推進中。

この記事の著者

DIGIFUL編集部

「DIGIFUL(デジフル)」は、株式会社Hakuhodo DY ONEが運営する「デジタル時代におけるマーケティング」をテーマにした、企業で活躍するマーケティング担当者のためのメディアです。

当社がこれまでに得たデータや経験から、具体的事例・将来展望・業界の最新注目ニュースなどについて情報を発信しています。ニュースやコラムだけでなく、日常業務や将来のマーケティング施策を考えるときに役立つダウンロード資料や、動画で学べるウェビナーコンテンツも随時追加していきます。

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