ヤフー株式会社(以下、ヤフー)を傘下に持つZホールディングス株式会社(以下、ZHD)とLINE株式会社(以下、LINE)の経営統合完了が発表されました。新生ZHDが提供するサービスは、生活者が体験する購買プロセスに、オフライン、オンラインを問わずあらゆる場面で関わることになります。OMO※の推進を目指す事業者にとってはどのような課題が生じるのでしょうか。想定される課題とその解決策の一例をご紹介します。
※OMO:Online Merges with Offline の略。
1. ヤフーとLINEの経営統合
経営統合に関するニュースの振り返り
2019年11月にZHDとLINEの経営統合が発表され、2021年3月に経営統合が完了しました。国内最大級のメディア規模であるYahoo!を傘下に持つZHDと、国内最大級のメディア規模のコミュニケーションサービスを保有するLINEの経営統合により新生ZHDは圧倒的なユーザー基盤を有することとなります。
(図1:経営統合説明会資料より抜粋)
出典:Zホールディングス株式会社 2021/3/1
「LINE株式会社との経営統合に関する戦略方針説明会」
経営統合が購買プロセスに与える変化
ZHDの経営統合は生活者の購買プロセスにどのような変化を与えるのでしょうか。またその変化はOMOを推進する事業者にとってどのような課題を生むのでしょうか。それらを考えるために、ここで顧客の購買プロセスを考えてみます。
時系列を表す「来店前」「来店中」「来店後」を横軸に、施策や組織間の連携を表す「オンライン施策」「オフライン施策」「データ」を縦軸に置いて購買プロセスを整理します。
(図2:購買プロセスの整理)
※当社調査
ここにヤフーとLINEが提供している各種サービスをマッピングしてみると、すべての領域を新生ZHDが網羅していることが分かります。
(図3:購買プロセスに関わる新生ZHDのサービス)
※当社調査
図から分かる通り、生活者の購買プロセスのあらゆる場面に新生ZHDのサービスが関わることが分かりました。これらのサービス間の連携が進み世の中に浸透すると、生活者にとっては横軸(時系列)と縦軸(組織間連携)が連動し、例えば店頭での実際の購買行動に基づいたメッセージや必要な情報が購入後にLINEを通して送られてくるなど、顧客視点で接する情報に矛盾がなく一貫性があることが当たり前になります。つまり、その他の事業者にとっても同様に横軸と縦軸で連動した一貫したサービス提供が求められるということです。
2. OMO推進における課題の整理
横軸(時系列)における課題
例えば小売事業において想定される課題を上述の横軸で考えてみます。広告部門が来店を促し、販促部門が接客し、サポート部門がアフターフォローを担うような体制になっている状況をイメージしてみます。その場合「来店前」「来店中」「来店後」で生活者と接する部門や部署が異なるため、一貫したコミュニケーションやエクスペリエンスが提供できない、効果検証や改善ができないという状況に陥っていることが想定されます。
縦軸(チャネル間連携)における課題
縦軸で考えてみると、オンラインでの販促活動と、オフラインでの販促活動の主管部署が異なるために統合的なプランニングができていない状況が考えられます。販促部門と情報システム部門の分断により、広告やSNS、メールマガジンなどオンラインでの各チャネルのデータを横断的に集計・分析できない状況も縦軸での課題となるでしょう。
3. 想定される具体的な課題と解決策の一例
横軸(時系列)の課題解決に向けたデータ基盤統合と分析イメージ
ここからはより具体的な課題と解決策のケースをご紹介します。
データ観点で想定される横軸の課題例として「LINE広告で集客施策を実施したが、購買に寄与したか分からない」というケースがあります。何人のお客様が広告に反応して来店し、彼らが何をどれだけ購入したかなどのデータの紐づけができない場合は、広告施策の費用対効果が可視化できません。このケースではLINE上のデータと自社の購買データを統合したデータ基盤を作成・活用することで、施策の費用対効果を可視化できます。更にユーザー分析を掛け合わせることで、次回の施策改善につなげていくことも可能です。
(図4:統合データ基盤活用による施策効果可視化)
※当社調査
縦軸(チャネル間連携)の課題解決に向けたデータ基盤統合と分析イメージ
次はデータ観点で想定される縦軸の課題例として「会員管理がタッチポイントごとに独立しているため顧客構造の全体像が見えない」というケースを考えてみます。従来型の紙やプラスチックを用いたカード型の会員証を、新たに構築したオンライン会員証に切り替えていくフェーズでは、両者が併存してしまうために、店頭会員とオンライン会員のID共通化ができていないケースは多いのではないのでしょうか。このケースでも、LINE公式アカウントを活用したID共通化の推進に加え、LINE上のデータと購買データを統合したデータ基盤を連携することで、会員全体の中でどのユーザー群にどのチャネルでどのようなコミュニケーションを取るべきなのかを導き出せます。
(図5:統合データ基盤による顧客全体像把握と施策立案)
※当社調査
会員証コスト削減と情報発信強化に向けた会員IDとLINE IDの連携
実店舗を有する事業者では「ポイントカードの作成コストが嵩む」「店頭オペレーションの煩雑化」「ポイントカードの紛失による会員情報の消失」といった問題もあるでしょう。これらの問題はLINE公式アカウントにオンライン会員証を搭載し、LINE IDと自社顧客基盤のIDを連携することで会員管理の負荷も減らし、会員データの利活用も推進できます。
(図6:LINE公式アカウントでの会員証活用例)
※当社調査
4. まとめ
生活者の購買プロセスに関わるさまざまなサービスが乱立し、顧客を囲む世界は日々変化します。当社ではOMO推進も含む新たな顧客体験創出の支援もおこなっております。興味がある方はぜひ一度お問い合わせください。
この記事の著者
DIGIFUL編集部
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