顧客分析の重要性は理解されつつも、なかなか取り組めないという企業は多いようです。ビッグデータ時代と言われる現代ビジネスにおいて、顧客情報をもとに分析し、広告やマーケティング施策の効果を最大にすることは誰もが考えています。
しかし、手元に顧客情報があっても、それを活かすためのスキルが無ければ宝の持ち腐れです。日々企業が蓄積している顧客情報は可能性の宝庫なので、今まで顧客分析を苦手に感じていた企業でもぜひ取り組んでみていただきたいと思います。
今回は、顧客分析を図解し、分かりやすく解説します。
本記事はデジタル・アドバタイジング・コンソーシアム株式会社の「DAC Solution Service」より転載しました。
https://solutions.dac.co.jp/
代表的な2つの顧客分析シート
顧客分析の方法は実にさまざまですが、ここでは顧客分析において代表的な「デシル分析」「RFM分析」という2つの手法について解説します。
デシル分析
ラテン語で「10分の1」という意味を持つデシルは、ある評価軸において顧客を10のグループに分類するというマーケティング分析です。
たとえば、顧客全体が売上に与えている影響を知るためには、まず下図の左の表のように購入金額ごとに顧客を並べます。次に、全体を10分割して10個のグループを作ります。整理が完了したら集計して右の表を作成します。
この表から、上位5グループで累積購入金額の92%、つまり顧客の半数で売上の90%以上を占めていることがわかります。
このように顧客と売上の関係を整理することで、予算や時間といったマーケティングリソースを集中すべきグループを明確にできます。
デシル分析は次のグラフのように可視化することで、顧客傾向を分析することもあります。
デシル分析を行うにあたって注意することは、あまり長期的な売上データを使わないことです。期間が長くなると、過去に高額商品を1度だけ購入した顧客情報も含めてしまうことになり、その後一度も購入していない顧客が上位にランクインする可能性があります。
分析対象とする売上データの期間をしっかりと定義しておきましょう。
RFM分析
Recency(リーセンシー)、Frequency(フリークエンシー)、Monetary(マネタリー)という3つの軸で顧客をスコアリングし、各顧客が自社とどういった関係にあるかを理解するための分析手法です。
リーセンシー:直近性(直近の購入日、来店日、来訪日 etc.)
最後に商品を購入した日はいつか?という要素です。商品やサービスにもよりますが、購入した日が近いほど興味関心が高い傾向にあるためフォローアップなどの施策効果が高まります。
フリークエンシー:頻度(購入頻度、来店頻度、来訪頻度 etc.)
購入頻度が高い顧客はいわゆるリピーターなので、スコアによって評価に大きな影響をもたらします。顧客の購入履歴から過去に何回購入したかを整理して購入回数が多い順に並べれば、一番上にくる顧客が最もフリークエンシーの高い顧客となります。
たとえば、フリークエンシーが低い顧客が多い場合は、サービスレベルや料金などで満足していない可能性があります。一方、フリークエンシーが高い顧客が多い場合は、リピーターが多いということになりますが、フリークエンシーの低い顧客が少なければ、新規顧客獲得が弱いということになります。
購入頻度が低い顧客でもリーセンシーやマネタリーとの兼ね合いで優良顧客になる可能性もありますので、必ず合わせて分析してみましょう。
マネタリー:金額(購入金額 etc.)
購入金額の多さは有効なスコア基準の一つです。購入金額が大きいほど優良顧客だと考えられます。購入金額は大きいがフリークエンシーは低い場合には、積極的にマーケティングを実施してリピーター化することでさらに高い収益が見込めます。
以上3つの要素を評価基準として、5~7段階程度のランクをつけます。顧客ごとに自社へどういった形で収益をもたらしているかが把握できますし、それに応じてマーケティングリソースを集中すれば、効率良く効果が得られるでしょう。
RFM分析の概念が分かったところで、次は実際の分析方法です。
まず、下図の左の表のように顧客ごとのRFM情報を一覧に整理します。次にR、F、Mのそれぞれの情報をスコア(点数)化します。たとえばリーセンシーの場合なら「直近7日間=5点」「直近8~14日間=4点」・・・「直近3ヵ月以前=1点」とつけます。期間は商品や店舗といった特性に合わせてスコアルールを決めるとよいでしょう。点数は先述の通り、5~7点程度にします。
RFMの3軸のスコア分布から、顧客を分類します。たとえば「RFM全て高い顧客=優良顧客」「Rが低いとFやMが高くても競合に奪われ離反している可能性がある=離反予備軍」というように顧客をグループ化します。グループ化した顧客が優良顧客であれば、継続してもらう施策を打ち、新規顧客であれば優良顧客へ成長させる施策を打つという、顧客に合わせた施策検討と実行ができます。
RFM分析のスコアから、一般的には次のようなことが言えます。
- Rが高い顧客ほど将来的な収益に貢献する可能性がある
- Rが低いとFやMが高くても競合に奪われ離反している可能性がある
- Rが同じならFが高いほどリピーターということになる
- Rが同じならFやMが高いほど購買力があるの顧客
- RやFが高くてもMが少ない顧客は購買力が低い
- Fが低くMが高い顧客はRの高い方が優良顧客
- Fが上がらないが下がっている顧客は他社に奪われている可能性がある
- RFMすべてが低い顧客は切り捨てることも検討する必要がある
参考:奥瀬喜之 久保山哲二(2012)『経済・経営・商学のための「実践データ分析」』講談社
RFMの3軸だと分析が難しいと思います。その場合は、RとFの2次元で分析したり、FとMで分析したりと、複数分析するとよいでしょう。3軸で分析する場合は、クラスター分析を用いると具体的な顧客の分類が可能になります。
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この記事の著者
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