SEO担当者がクリスマス商戦に向けて準備しておきたい5つのルール

2020.12.22

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来年のクリスマス商戦のための準備をしよう

クリスマス商戦にあわせて特設ページを設け、販促強化をしている通販サイトは少なくない。今年は新型コロナウイルスの感染拡大で例年とは様相が少々異なるが、このシーズンにあわせてSEOによる検索エンジンの集客を強化している企業がたくさんある。クリスマス商戦は来年も、その次も、この文化が続く限り毎年迎えるであろうし、皆さんの事業が継続する限り、今後も毎年、商戦期であるクリスマスシーズンに向けた集客強化を考えていかなければいけないだろう。

今回は、期間限定で開設するページについて、SEO観点で注意すべき項目を説明する。

デジタル資産を継承するためのSEOガイドラインやルール

卒業・入学、春休み、夏休み、ハロウィン、クリスマス -- 「毎年発生するイベント」なのだから、それを前提にしたSEOのルール設計や施策を設計しておくことは非常に重要である。皆さんの企業では、このクリスマス商戦用のSEOルールを設けているだろうか。

SEOは継続性・毎日の積み重ねにより成果を最大限に引き出せるマーケティング手法である。検索エンジンは、あなたが過去に積み重ねてきたオンラインにおける人気や信頼、評判を評価するのであるから、一般論として長きにわたり真面目に運営してきたWebサイトほど、そしてその運営過程においてSEOを意識してきたWebサイトほど、検索での発見可能性(Findability)は高められる。

したがって、毎年開催されるイベントなのだから、今年蓄積できたデジタル資産は翌年に継承、引き継げるような施策にすることが望ましい。例えば、今年のクリスマス商戦で自然リンクが100本、ブランドメンション(オンラインでブランドに言及されること)が100増えたと仮定しよう。もしも、このリンクやブランドシグナルを来年に引き継ぐことができれば、来年のクリスマス商戦時には自然リンクとブランドシグナル各100を獲得した状態でスタートできる。仮に、毎年自然リンクとブランド言及が100ずつ増えていくとするなら、10年後のクリスマス商戦はそれぞれ1,000本からスタートできる。だから、デジタル資産を蓄積し、継承するためのSEOのルールやガイドラインが必要となる。

※ デジタル資産(Digital Assets):Webサイトに張られたリンク、URL、コンテンツ、ブランドメンションなど、Webサイトそのものの資産のこと。本稿では特に、時間経過あるいは累積により検索エンジンからの評価指標が変化する資産のことを指す

デジタル資産を毎年「リセット」してしまう企業、蓄積する企業

日本の通販サイトを見ていると、毎年クリスマス商戦をおこなっているのに、そのたびにリセット、すなわち「ゼロ」地点からスタートしている企業が意外と多い。ゼロからのスタートとは、仮に今年、自然リンクを100本獲得しても、このリンクを放棄してしまうために翌年のクリスマス商戦では、再び「自然リンク0本」から仕切り直しをしてしまう企業のことだ。

なぜこうした無駄なことが発生するのか。理由は極めてシンプルだ。

1) 毎年、クリスマス商戦用特設ページのURLが変更になる
2) 毎年、クリスマス商戦用特設ページのIA(情報アーキテクチャ)が変更になる
3) 毎年、リンクを"レンタル"している

 

1点目は、毎年迎える商戦期なのにURL設計構造がコロコロと毎年のように変えてしまうことだ。パーマネントリンク、つまり「URLの継続性」の観点からは、合理的な変更必要性がない限りそのまま継続運用した方が望ましい。

SEOの知識がある程度詳しい方なら、ここまでの話で「リダイレクト(転送)設定すればいいじゃないか」とお考えだろう。筆者もそう思う。しかし現実にみると、「ある期間に限定して開設されるページ」というのは、比較的高い確率で転送処理がおろそかになっているのが現状だ。継続公開型のコンテンツ、つまりストック(蓄積)型コンテンツであればともかく、一時的なもの故に忘れられてしまうのだろう。途中で担当者が変わってしまえば過去のことは知らないから、やはり必要な処理がおこなわれない。

2点目にあげた情報アーキテクチャは、毎年同じ商品を扱っているのに、カテゴリ構造を変更してしまうことが原因だ。例えば、ある年は「レディース」という大カテゴリを設けていたのに、次の年は「ニット」「セーター」といった具合にカテゴリ構造が変わると、リダイレクト設定も少しルールを変えなければいけなくなる。外部サイトからリンクを張られたときのトピック(コンテンツテーマやアンカーテキストなど全般)が違うから、必ずしも適切な形で資産継承されるわけでもないし、こうしたケースでは大概、正しくないリダイレクト設定をおこなうためにGoogleが正しく評価をおこなえない状態になってしまう。

3点目は、SEOは外部リンクをどこかから"調達"してくれば良いと考えている企業にありがちな話だ。有料リンク(金銭でリンクを購入することで、GoogleおよびBingのガイドラインに依存する)に手を出す企業は減少傾向にあるが、まだ存在する。

この発想は根本的に間違っている。それは、検索での発見性を高めるために必要なリンク、Googleが評価したいリンクというのは、「あなたが張ったリンク」ではなく「まわりのみんなが張ってくれたリンク(=自然リンク)」である。同時に、自然リンクとは、あなたのもの、あなたが所有するデジタル資産と考えなければいけない。それにもかかわらず(2020年というこのご時世に)時限的にリンクを"レンタル"してくるのであるから、レンタルを終了するたびにその評価はゼロにリセットされる、仮に競合が自然リンクを獲得する施策を継続しているのであれば、あなたは永遠にその競合に勝つことはできないのだ。

定例イベント向け特設ページにおけるSEOのルール

こうした定期発生するイベント系のページにおけるSEO運用は、例えば次のルールを設定すると良いだろう。

1. 毎年利用するURLを固定する

クリスマス商戦ページは必ず www.example.com/xmas-sales/ とする、といった具合に、毎年同じURLで開設するようにする。SEO的な細かなことが分からない担当者でも、とりあえず指定したURLで開設してもらえれば、最低限のデジタル資産継承は可能となる。Webサイトの全面リニューアルが発生するとしても、こうした期間限定イベント向けのページはURL構造そのものの変更を迫られることはそれほどないはずだ。事実、米国の大手通販サイトの過去5年あまりの運用状況を分析すると、SEOを十分に考慮したWebサイトほど、売上に直接的に影響を与えるであろうURLほど、URLの永続性を担保するよう努めている。

※ 過去分をアーカイブしたい場合は、3. の説明を参照のこと

2. サブディレクトリとファイル名を決める。名前は汎用性のあるものに

カテゴリ構造を設計する場合は、ディレクトリ名称も決めておこう。ただし、名前はできるだけ汎用的なもの、極端にいえば数字でも良い。要は、今年は"lady"なのに翌年は"sweater"になるような事態は避けよう。また、日本語文字列のURLにすると処理が面倒なので英数字限定とすること。コピペミスが発生しがちなためリンク切れの原因にもなりやすいからだ。

取扱商品が翌年変更になる可能性が高いのであれば、それを前提にして設計する。読者の中には「URLにはキーワードを入れた方が良いのではないか」という意見をお持ちのかたもいらっしゃるだろうが、本件における意思決定において優先すべき事項はURLの永続性である(URL内のキーワード文字列有無は無視できるレベルの影響しかないので、この要件自体を考慮する必要性すらない)。

3. 翌シーズンには「コンテンツが入れ替わるだけ」の状態が理想

これは上記1.2.と関連するが、毎年の商戦で扱う商材が基本的に同じケースであれば、コンテンツのみが入れ替わるようにすると良い。特にトップページや主要カテゴリトップはコンテンツの入れ替えだけで済むはずだ。しかし、個別商材によっては毎年の商品トレンドや検索クエリの傾向の違いもあるだろうから、それはタイトルやページ内詳細説明文のコンテンツ作成の中で調整をすると良い。

なお、過去のコンテンツをアーカイブしておきたい(2019年のクリスマスを"xmas2019"、2020年のクリスマスを"xmas2020"に格納する)ケースでは、例えば2019年のクリスマス商戦ページは "xmas" にしておき、翌年(2020年)を迎えた時にはまず、 2019年分のものを "xmas2019"フォルダへ、そして2020年分のものが"xmas" に格納されるようにする。2021年になったら2020年分は"xmas2020"、2021年は"xmas" …といった具合に、常に最新のものが "xmas" に入るようにすれば良い。1. で述べた URLを固定するとは、このような意味である。

4. イベント終了後に 404 Not Found にしない

中小通販サイトで多いのが、クリスマス商戦が終わった跡地(URL)にアクセスすると、ページが存在しないことだ。例えば「2020年のクリスマスセールは終了しました。また来年の来訪をお待ちしております」程度の文章でもいいから、ページの跡地をそのまま残しておく(もう少し文章を残して、そのページがクリスマスセールス関係のページであることを表現しても良い)。

5. 今年獲得した自然リンクやソーシャルシグナルの情報を整理する

今年のクリスマス商戦中(特設ページ開設期間)に獲得した自然リンクの本数やTwitterやFacebookなど、ソーシャルメディアの各種データ(反響率の高かった時間帯、リツイート数、シェア数、いいね数など)を把握する。YouTubeも活用した場合はそれも含める。また、被リンクやブランドメンションついては、どんな外部サイトが、どんな文脈の中でリンクを張っているのかまで把握しよう。商戦期の何日前に、何のコンテンツを、どのチャネルで公開すると、最大限にサーチ/ソーシャルでのリーチを広げられるかまで分析しておくのも良い。こうしたデータは、翌年のクリスマス商戦で効果的な検索マーケティングを行う上で大いに参考になるはずだ。

知識やノウハウの取得だけでなく、それを組織で実行する仕組みづくりを


以上、ざっと5つの項目を設けてきた。SEOに詳しい担当者にとっては「当たり前の知識」かもしれないが、現場に目を向けると実行されている企業は少ないのだ。なぜなら、この課題を解決するために要求されることは、知識やノウハウではなく、「組織に落とし込むこと、組織として動くこと」だからだ。つまり企業内におけるSEOの運用管理工程の話であるから、SEO担当者自身が理解しているだけでは不十分で、それを直接的にSEOの業務に携わらないであろう人たちに浸透させ、実行してもらうことが必要である。まだ来年のクリスマス商戦まで1年あまりの時間が残されているので、是非、組織のステークホルダーに本稿の重要性を認識・理解していただき、組織として解決する方法を探って欲しい。

 

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この記事の著者

渡辺 隆広

日本のSEO黎明期である1997年よりSEOサービスを開始。2002年に会社設立(株式会社イー ・プロモート)後、2005年4月から2021年12月まで株式会社アイレップにてSEM総合研究所 所長を務める。SEO分野での第一人者として多くの執筆・講演活動で活躍中。主な著書に「検索にガンガンヒットさせるSEOの教科書」(翔泳社刊)等。また、専門誌・サイトで多数の連載記事を担当し、その高い専門性で人気を博している。

日本のSEO黎明期である1997年よりSEOサービスを開始。...

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