指名検索数は4.3倍に!NTTドコモ「kikito」のガジェット系動画クリエイターを起用した施策

2024.09.10

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NTTドコモが2021年にローンチした家電レンタル・サブスクサービス「kikito(キキト)」。未開拓の市場で新規事業を拡大させるため、同社ではHakuhodo DY ONE(※)の「常駐型コンサルティングサービス」を利用しながらマーケティング活動を行っている。高い専門性を備えたマーケティング人材が、事業を深く理解した上で施策の立案・実行を支援した結果、どのような成果が生まれたのか?NTTドコモとHakuhodo DY ONEの両担当者に話をうかがった。

※Hakuhodo DY ONEは、アイレップとデジタル・アドバタイジング・コンソーシアムが統合し、4月1日に設立した新会社です。本記事は2024年3月時点の情報を基に執筆しています

※本記事は2024年5月27日に株式会社翔泳社が運営するMarkeZineに掲載された記事を転載しております
元記事:https://markezine.jp/article/detail/45437

スマホ以外の接点を強化する狙い

- 最初に「kikito(キキト)」がどのようなサービスなのか教えてください。

櫻井:kikitoはNTTドコモの家電レンタル・サブスクサービスです。アクションカメラやVRゴーグル、美容家電、フィットネスなど、様々な領域の最新家電やデバイスを気軽に試していただけます。

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NTTドコモ プロダクトマーケティング本部 プロダクト戦略部 ビジネスプラットフォーム ビジネスプラットフォーム担当課長 櫻井和幸氏

櫻井:たとえば「旅行のときだけカメラを使いたい」など、期間を日単位で選びたい方には短期レンタルプランを、月額定額制で好きなだけ使いたい方には月額サブスクプランを用意しています。商品によって条件は異なりますが、一定期間利用すると、その商品はお客様のものとなる仕組みです。

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kikitoのサイトトップ

櫻井:kikitoを利用いただくメリットは、購入前に試せることにあります。特にVRゴーグルのような先進性が高い製品の場合、興味はあってもなかなか購入に踏み切れない方が多いですよね。また、お子様の月齢が低い時期だけ「見守りカメラ」などのベビー用品を使いたい親御さんのニーズにも対応可能です。

- 通信事業をコアに据えるNTTドコモが、家電レンタル・サブスクサービス事業に参入した背景をお聞かせください。

櫻井:通信事業の場合、お客様との接点はスマートフォンがメインとなります。スマートフォンは今後も重要なデバイスであり続けると考えていますが、5GやAI、XRといった最新技術のポテンシャルをお客様に最大限感じていただくにあたり、スマートフォンだけでは不十分になりつつあると感じていました。

そこで当社では、スマートフォンと何かを組み合わせて価値を生み出したり、スマートフォン以外のデバイスを通じてお客様との接点を強化したりしています。その一環として2021年4月にローンチしたサービスがkikitoです。気軽に試せるサブスクの形をとることで、先進性の高い製品を多くの方々にとって身近な存在にしたいという思いもあります。

前例がなく手探りのマーケティングに課題

- kikitoのマーケティングを実行するにあたり、どのような課題がありましたか?

櫻井:kikitoのローンチに向けて準備を始めた2019年当時は、家電サブスクのプレイヤーが少なかったため、参照できる事例がありませんでした。社内にも当然前例はなかったですし、外に目を向けてもkikitoのマーケティング戦略につながる有効な事例を見つけることができなかったんです。「運用広告とオーガニックをどれくらいの比率にすれば獲得につながるのか」など、手探りの状態で進めていましたが、2022年よりアイレップさんに出向いただき、マーケティングを強化することになりました。

藤原:2022年度に出向という形でNTTドコモにジョインし、2023年度はアイレップの「常駐型コンサルティングサービス」を活用いただく形で櫻井さんのチームに所属していました。

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Hakuhodo DY ONE プランニング本部 ストラテジックプランニング局 局長 藤原くるみ氏

藤原:常駐型の場合、マーケティングのみならずサービス全体の状況を把握できるため、クライアント企業様の事業に対する解像度が上がり、ビジネスの構造や特徴を踏まえた提案ができるようになります。

常駐期間はNTTドコモの社員として、物流や商品の調達など広告以外の領域のミーティングにも参加しながら「アイレップのマーケティングの知見をどう活かせばkikitoの新規ユーザー獲得につなげられるか」を考えていきました。

ガジェット系インフルエンサー施策でサービス理解の促進へ

櫻井:一般的には、社内にマーケティング業務の経験者がいるため、そのメンバーがアイレップさんをはじめとする外部のパートナーとコミュニケーションをとる場合が多いと思います。ただ、kikitoは当社の新規事業です。先に申したとおり家電サブスクの前例が少ない中、サービスの細かなニュアンスも加味しながらマーケティングの意思決定を行う必要があります。その際、外部パートナーとの伝言ゲームをなるべく減らしたほうがスムーズに進むと感じました。

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櫻井:またkikitoのマーケティング担当者には、広告のオペレーションだけでなく、場合によってはサービスの設計自体を変えるような判断も求められます。そのため、アイレップさんを社外のパートナーとして迎えるよりも、社内のメンバーとして迎えるほうがコミュニケーションをとりやすく、PDCAもスピーディーに回せると考えて常駐型コンサルティングサービスを利用し始めました。

- NTTドコモとアイレップで実施した、具体的な施策を教えてください。

櫻井:常駐型コンサルティングサービスの利用を始めて以降、動画広告をはじめとするPR施策をいくつか実行したことで、kikitoの認知度は徐々に高まっていました。しかし、サービス名称の認知度は高まったものの、ユーザーのサービスに対する理解度が薄くなっているようにも感じていたんです。

そこで、kikitoのサービス理解を深めてもらう目的で実行したのがインフルエンサー施策です。ガジェット系のインフルエンサーにkikitoのサービスを紹介してもらうことで、認知度とサービス理解度の双方を高める狙いがありました。

縦型ショート動画も活用して視聴数を最大化

藤原:今回のインフルエンサー施策では、ファンが多いことで知られるワタナベカズマサさんをはじめ、3名のインフルエンサーに協力いただきました。ワタナベさんは日ごろから最新家電のレビュー動画などをYouTubeで発信されているため、kikitoで実際にガジェットをレンタルいただき、動画内で商品の説明やkikitoのおすすめポイントなどをご自身の言葉で伝えてもらいました。

ワタナベカズマサ氏が制作したkikito紹介動画

藤原:認知度アップを狙う際、インフルエンサーのフォロワー数に目を向けてキャスティングをすることが多いですが、今回はサービスに対する理解の促進を重視していたため、動画の視聴者に「この人が紹介するサービスなら信用できる」と思ってもらう必要がありました。ですから、フォロワーと深い信頼関係を築いているインフルエンサーの方々にお声がけした次第です。

今回インフルエンサーに制作してもらった動画は、広告素材として二次配信にも使用しました。視聴されやすい縦型ショートのフォーマットでも動画を制作し、視聴回数の最大化を目的とするYouTubeの「動画ビューキャンペーン(Video View Campaigns)」を活用した点もポイントです。また、NTTドコモではなく各インフルエンサーのアカウントから縦型ショートの広告動画が投稿されているように見える第三者配信も活用しました。

比較検討度は29%向上!コメント欄の意外な効用も

- インフルエンサー施策を通じてどのような成果が得られたのでしょうか?

櫻井:2023年12月にインフルエンサーのアカウントでタイアップ動画を公開していただき、2024年1月にそれらの動画を活用した広告の二次配信を実施した結果、kikitoの指名検索数が12月時点で最大4.3倍に、広告の二次配信を行っていた期間は合計で2.2倍に伸長しました。

広告の二次配信に使用したやまこう / yamako氏のkikito紹介動画

櫻井:YouTubeで実施可能なブランド効果測定調査では、認知度の相対的ブランドリフトが28%向上していました。2022年に実施したYouTube広告施策の数値が約14%だったため、大きく改善したと言えるでしょう。

藤原:比較検討度でも相対的ブランドリフトが29%向上し、当初の課題であったサービスに対する理解度の向上にもつながっていると考えられます。実際、動画のコメント欄にはサービスの魅力が伝わったことを示すユーザーからの投稿が数多く見受けられました。

櫻井:コメント欄では、家電やデバイスを「買う派」と「レンタルやサブスクで使う派」が、それぞれのメリットとデメリットを議論している様子もうかがえました。このディスカッションは、我々がまさに求めていたものでした。なぜなら、様々な意見を聞き、納得した上でkikitoのサービスを選んでいただけるからです。

的確なオリエンは深い事業理解の賜物

- 今回の成功の要因はどのような点にあると思われますか?

藤原:インフルエンサーの動画を通じて、kikitoと相性の良い家電・ガジェット好きのユーザーにコンテンツを届けられたことは大きいと思います。また、広告の嫌悪感が少ないと言われている縦型ショート動画のフォーマットや、動画ビューキャンペーン(Video View Campaigns)を通じた配信の最適化も、サービスの理解促進に寄与しました。

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櫻井:キャスティングをする際に実施したインフルエンサー向けのオリエンも、成功要因の一つだと考えています。インフルエンサー施策を得意とするアイレップさんのプランナーがオリエンを担当してくれたのですが、kikitoのサービスはもちろん、我々がユーザーに届けたいメッセージも的確に伝えてくださいました。インフルエンサーの動画にも反映されていたと思います。オリエンの内容については、藤原さんともう1名の常駐メンバー、アイレップのプランナーの皆さんが連携して、伝え方のニュアンスを調整してくださいました。やはりこの点も事業理解が深まる常駐型ならではの良さではないでしょうか。

- 最後に、今後の展望をお聞かせください。

櫻井:今回はガジェット好きのユーザーに向けた取り組みでしたが、kikitoでは美容家電やキッチン家電など様々なカテゴリの商品を取り扱っています。今回の成功事例を基に、今後は美容系などほかの領域のインフルエンサー施策にもチャレンジしたいです。

また、我々だけでマーケティングを実行するのではなく、お取り引きのあるメーカーや関連企業などと連携しながら、相互利益を生む企画も進めたいです。たとえば旅行関連事業を展開する企業と協力してカメラのレンタルキャンペーンを実施するなど、可能性は多分にあると思います。

藤原:広告会社にいるだけでは経験できない業務に携わることで、調達プロセスや物流の仕組みなど、他業種のビジネスに対する解像度が大いに上がりました。深い事業理解が今回の結果に寄与した手応えを感じていますし、視野が広がった分、今後も様々なクライアント企業に向けて提案の幅をさらに広げていきたいと思っています。

この記事の著者

MarkeZine

最新動向から具体的な施策、ノウハウを提供するデジタルマーケターのための実践メディア。毎月平均60本の記事、130本のニュースをお届けしています。

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