近年、BtoB企業※におけるマーケティングのデジタルシフトが加速しています。特に新型コロナウイルスの流行を契機に、デジタルシフトを意識しはじめた企業も多いのではないでしょうか。本記事では、BtoB企業のWebマーケティング担当者向けにSEOに取り組む重要性や基本的な考え方を紹介します。
※本記事では、サービスや商品が導入/購入されるまでに、法人営業担当が提案(コンペを含む)をして内容やプランのすり合わせをおこなってから契約に至るような商材を扱う企業をBtoB企業と定義します
BtoB企業がSEOに取り組む重要性
本章では、BtoB企業がSEOに取り組む重要性を紹介します。
デジタルマーケティングの位置づけ
検索エンジンの普及や進化に伴い、BtoBサービスのユーザーも検索を通じた情報収集をおこなうようになっています。また、ここ数年の新型コロナウイルスの流行に伴い、BtoB企業のマーケティング施策のデジタル化も急速に進んでいます。
BtoB企業のデジタルマーケティングの施策は多岐に渡り、自社の状況に合わせた取り組みをおこなっていく必要があります。
(図1:コロナ禍におけるBtoBマーケティングの全体像)
SEOに取り組む重要性
あらゆる施策の中でも、自社のサービス(商品)をアピールする場となるWebサイトは必須であると言えます。WebサイトがCVを後押しできる場になるよう構築することはもちろん、SEOも意識することで見込み顧客との接点増加を見込むことができます。
下記の調査データによると、BtoBの購買行動において企業はオンラインで情報収集し、(すでに取引実績がある企業を除くと)その情報が参考になった企業を候補として選定する傾向があります。この結果から、オンラインでの情報収集時に見込み顧客に自社を認知してもらい、Webサイトに参考になる情報を掲載できている状態が好ましいと言えますが、これにはSEOの取り組みが重要になってきます。
(図2:BtoBマーケティングにおけるパートナー選定時の調査データ)
出典:BtoB購買行動の調査結果レポート(株式会社リーディング・ソリューション)より作成
BtoBサイトのSEOの基本的な考え方
BtoBサービス購入検討時の購買行動は、社内で何らかの課題が顕在化した「課題顕在化」、解決するため情報を収集している「情報収集」、パートナーを比較検討している「比較検討」、契約を締結する「購入/導入」の大きく4つのフェーズに分けられます。
(図3:BtoBサービス購入検討時の購買フェーズ)
上記の各フェーズとBtoBサイトに掲載する情報を整理すると、下記のような分類ができます。
(図4:購買フェーズとBtoBサイトで対応する情報のマッピングイメージ)
集客型コンテンツ(図4のオレンジ部分)
何らかの課題が顕在化しているものの、解決方法や解決策を保有する企業名やサービス名を知らない状態の見込み顧客に向けたものとなります。一般的にはコラムや用語解説などのコンテンツが該当し、自社のサービスで解決できる課題、専門用語の意味などの情報を求めるキーワードでの流入を目指すコンテンツとなります。
接客型コンテンツ(図4の緑部分)
課題の解決方法や解決するためのサービス名や企業名などをある程度認知している状態の見込み顧客に向けたものとなります。一般的には、サービスや技術の紹介や事例、費用などのコンテンツでサービスの魅力を訴求したり、会社概要など取引開始時に必要な情報を提供したりするコンテンツとなります。
BtoBサイトの根幹となる接客型コンテンツを充実させることはもちろん、自社や自社サービスを認知していない見込み顧客にリーチするための集客型コンテンツを公開することにより、比較検討候補となる機会を増やすことが重要です。
BtoBサイトが抑えるべきSEOのポイント
BtoCとBtoBのWebサイトでは注力すべきSEOのポイントは異なります。本章では、特にBtoBサイトにおいて意識すべきポイントをご紹介します。
カスタマージャーニーを明確化し、発信すべき情報とそのタイプを検討する
特にBtoBの場合は購入/導入が決まるまでに複数の異なる立場の人が意思決定に関わるのが一般的です。見込み顧客が求める情報や抱える課題を具体化し、どの立場(決裁者、購入担当者など)の人向けのどのような情報が必要か整理しましょう。
(図5:閲覧者ごとに求められる情報が異なるイメージ)
また、情報ごとに適切なフォーマットを検討することも重要です。専門用語が多い、あまり知られていないなどのサービスや技術の紹介であれば、テキストのみではなく動画や図解コンテンツの活用が考えられます。
ロングテールキーワードを軽視しない
特にBtoBのビジネスにおいては、流入を見込むキーワードの検索数は相対的に小さくなります。また、検討を進めている人の検索キーワードは語数が多くなる傾向にありさらに検索数が少なくなりますが、CVに近い検索キーワードですので無視できません。自社や競合の流入キーワードデータを確認し、検索数が少なくても筋の良いものは流入を目指すキーワードとして捉えるようにしましょう。
コラム:検索数はあくまでも参考値として利用する
検索キーワードのデータを提供するツールは複数ありますが、これらが示す検索数はあくまでも参考値として活用することを推奨します。
下記は、企業向けのソリューションを提供するBtoBサイトのデータです。記事①②は、オーガニックセッションが多いですがCVは獲得できていません。記事③④は、オーガニックセッションは少ないですがCVを獲得しています。
流入上位KW |
検索数※1 |
オーガニックセッション※2 |
CV数※2 |
|
記事① |
●●(IT系専門用語) |
3,600 |
6,023 |
0 |
記事② |
〇〇(新設の法令) |
22,200 |
5,266 |
0 |
記事③ |
△△(課題解決施策) |
320 |
182 |
6 |
記事④ |
□□(企業が抱える課題) |
20 |
167 |
4 |
※1 検索数:Google キーワードプランナーから取得した過去1年間の月間平均検索数
※2 オーガニックセッション、CV数:解析ツールより取得した1ヶ月間の値
記事①②の流入上位キーワードのような自社の課題解決を意図しない人(BtoB企業のターゲット以外の人)の検索も想定される用語は主に集客向きとなり、記事③④の流入上位キーワードのように企業課題や課題解決のための施策に関連する用語はCV獲得に向いていると言えます。この例のようにCVと相性の良いKWと検索数の多いKWは一致しないことも多いため、こういった特性も理解してキーワードを選定する必要があります。
検索キーワードの妥当性を確認する
商材によっては、BtoCかBtoBかの線引きが難しいケースがあります。例えば、飲食店向けに食器の販売をおこなっている企業やホテル向けにアメニティ販売をおこなっている企業などは、商材として「ワイングラス」や「歯ブラシ」などを扱っていますが、これらのキーワードで上位表示されるのはBtoC向けのWebサイトがほとんどとなるため、流入を見込むキーワードとしてはかなりハードルが高くなります。また、「ワイングラス」と検索する人の大半が個人での購入(BtoCサイトからの購入)意向と推測できるため、このキーワードはBtoB企業にとっては筋が良くないと言えるでしょう。
自社の商品に関連がある、かつ検索数の大きいキーワードという観点だけでは、流入を見込むべきキーワードの選定基準に不十分であることも注意する必要があります。
業界における専門性、権威性、信頼性をアピールする
ブログや事例などで専門性の高い高品質な情報を発信することで、業界における専門性や権威性のアピールに繋げることができます。また、情報発信者を明記することでその情報の信頼性を示すことも重要です。これにより、見込み顧客から参考になる情報を掲載しているWebサイトであると認識してもらいやすくなるほか、Googleが設けるE-A-T(専門性、権威性、信頼性)という評価軸でも高評価を得やすくなり、結果的に検索結果での上位表示を目指しやすくなります。
関連リンク:E-A-Tとは|用語集|株式会社アイレップ
Webサイトの成果をモニタリングして定期的にチューニングする
Webサイトが売上にどの程度貢献しているか、定期的にモニタリングすることで更なる成果改善を目指すことができます。CVや流入数に寄与する要素を発掘し、さらに増やしていくための施策立案~実装を定期的におこないましょう。
まとめ
BtoBサイトがSEOに取り組む重要性やおさえるべきポイントを中心に紹介しました。BtoBサイトの集客に課題をお持ちの場合はお気軽に当社にお問い合わせください。当社では、SEOサービスに限定せずBtoB企業向けに包括的なサービスもご用意しています。
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この記事の著者
増渕 佑美
2014年に株式会社アイレップに入社し、SEOコンサルタントとして従事。ソリューション部署に所属。通販や人材などデータベース型サイトを中心に経験を積んでおり、現在はメディアサイトのSEOも担当し幅を広げている。
好きなこと:散歩、パズル、動物の動画をみること
2014年に株式会社アイレップに入社し、SEOコンサルタント...