国内のコネクテッドテレビ広告市場はここ数年で急速に拡大しており、広告主からの大きな注目が集まり始めています。
実際に「コネクテッドテレビ広告をおこないたい」という企業は増えていますが、「コネクテッドテレビってTVerのこと?」「スマホで見るAbemaはコネクテッドテレビ?」「OTTとは何が違うの?」というように、コネクテッドテレビという言葉は知っていても正しく理解していない方が多数見受けられているのが現状です。
本記事では、いつの間にか私たちの生活に入り込んでいたコネクテッドテレビの実態に迫りながら、いまさら聞けないコネクテッドテレビ広告の基本について解説します。
コネクテッドテレビとは
概要
コネクテッドテレビとは、インターネット回線に接続可能なテレビデバイスのことを指します。
テレビデバイスとインターネットの接続方法は大きく分けて3つあります。
-
OSを搭載したスマートテレビで接続する方法
-
ブルーレイ再生機器やゲーム機を介して接続する方法
-
GoogleのChromecastやAmazonのFire TV Stickなどのストリーミングデバイスを介して接続する方法
スマートテレビやストリーミングデバイスはコネクテッドテレビと混同されやすいですが、スマートテレビはインターネット接続の機能を持つテレビ端末のこと、コネクテッドテレビはインターネット回線に接続されたテレビ端末のことを指し、テレビ自体に回線接続機能があるかは問わないものですので注意しましょう。
(図1:コネクテッドテレビの接続方法とコンテンツ)
普及状況
【海外】
コネクテッドテレビの普及は海外、とくにアメリカで進んでいます。アメリカのテレビ市場に変化が起きたのは2007年、Netflixが動画配信サービスを開始してからだと言われています。アメリカでテレビ番組を観るためには有料のケーブルテレビを契約し料金を支払う必要があったことから、Netflixの登場以降、ケーブルテレビを解約する人が続出し、代わりにNetflixの契約者が増加しました。それ以降、他動画配信サービスの伸長も相まって、アメリカではコネクテッドテレビが急速に普及していきました。
【国内】
主要局に関しては基本的に無料でテレビ番組を視聴できるため、有料の動画配信サービスに対して抵抗を感じる人も多いです。しかし、アメリカから数年遅れではありますが、日本でも着実に動画配信サービス、コネクテッドテレビが広まっています。
2015年にNetflix、Amazonプライムビデオが日本での動画配信サービスを開始、さらに2020年以降のおうち時間の増加とともに、コネクテッドテレビ所有者はここ数年で急激に増加。いまでは日本のテレビ視聴者の約7割がコネクテッドテレビを所有しており、身近な存在となりました。
(図2:コネクテッドテレビ視聴用デバイスの保有率)
参考:2020年11月11日、コロナ状況下における消費者のコネクテッドTV視聴や 広告に対する態度変容傾向を公開|UNRULY
生活者はコネクテッドテレビで何を観ているのか?
従来のテレビ視聴に加えて、動画配信サービスが伸長
コネクテッドテレビが広く普及した現在ですが、生活者はどんな映像・動画コンテンツを楽しんでいるのでしょうか?
インプレス総合研究所が実施した2023年5月の調査によると、普段よく視聴する映像・動画は上から「リアルタイムのTV番組」(27.0%)、「動画共有サービス」(19.3%)。前年まで2位にランクインしていた「録画したTV番組」(18.7%)を「動画共有サービス」が追い越したかたちになり、YouTubeの影響力の大きさを感じます。
リアルタイム・録画ともにテレビ番組の比率は昨年に引き続き低下している一方で、Netflixなどの「有料の動画配信サービス」は昨年調査からの伸び率が最も大きく、人々の生活の中での存在感がますます大きくなっていることが伺えます。
(図3:最も好きな映像・動画の推移)
参考:2023年6月20日、映像・動画全体の視聴状況と有料動画配信サービスの利用率調査の注目の結果|インプレス総合研究所
アイレップ独自調査にて時間帯別利用メディアを調査したところ、隙間時間にはライトに情報を収集できるInstagramやX利用が多いのに対し、夕食中や夕食後のリラックスタイムにはYouTubeやAmazonプライム等の専念視聴メディア、就寝前ベッドの中ではYouTubeやTikTok、YouTubeショート等の簡単に読めて引き込むコンテンツを視聴する傾向があることが分かりました。配信サービス1つとってもユーザーが利用するシーンに特徴があることから、ユーザーの視聴態度に合わせた広告配信が必要不可欠であるといえます。
(図4:メディア別利用シーン)
(図5:ユーザー1日の行動とメディアのマッピング)
<調査概要> |
このように勢いがあり、今やユーザーの生活に根付いている動画配信サービスですが、これらは広告業界でOTT(Over the Top)と呼ばれることが多いです。
動画配信サービス、OTT(Over the Top)
OTTはコネクテッドテレビとよく混同されやすいですが、インターネット回線を通じて提供される“コンテンツ”のことを指します。「コネクテッドテレビを使用してOTTコンテンツをストリーミング視聴する」と表現するとイメージしやすいでしょう。広義ではSNSやSpotifyなども含みますが、広告業界では動画コンテンツに絞ってOTTと呼ぶことが多いです。本記事でもOTTを「インターネット回線を通じて配信される動画コンテンツ」と定義して話を進めていきます。OTTは具体的にはYouTube、Netflix、Amazonプライムビデオ、TVer、Abema、GYAO!などの動画共有&配信サービスを含んでおり、一般にVOD(Video On Demand)と呼ばれるサービス群と共通します。
コネクテッドテレビで視聴されるOTT
OTTはコネクテッドテレビ以外のデバイス、スマートフォンやPCでも視聴可能です。どの程度コネクテッドテレビで観られているのでしょうか?
Netflixは約7割がテレビスクリーンで観られており、映画やドラマなどのコンテンツを大きい画面で観たいと考える人が多いことがうかがえます。株式会社TVerの発表によると、TVerのコネクテッドテレビでの視聴は2020年から2021年の1年間で7.5%から22.7%と急速に増加しました。スマートフォンやPCで視聴されるイメージの強いYouTubeも、2021年3月時点で日本で月間2,000万人以上がテレビ画面でYouTubeを視聴していると発表しています。YouTubeの利用者が月間約6,500万人であることを考えると、おおよそ3人に1人がYouTubeをコネクテッドテレビで観ているといえます。
(図6:利用デバイスの変化|広告配信のボリュームの変化 )
参考:2018年3月7日、 You can watch Netflix on any screen you want, but you’re probably watching it on a TV|Vox
参考:2021年4月13日、TVer、コネクテッドTV広告の展開を本格化|Screens
参考:2022年10月、生活者に選ばれる YouTube、商品購入に強い影響力 —「ブランド・ジャパン」でも 1,000 ブランド中 1 位|Think with Google
参考:2021年6月、「テレビでYouTube」が月間 2,000 万人に急成長中―コネクテッドテレビ広告、スマートニュースやパナソニックはこう使った|Think with Google
各サービスの特性によって数字にばらつきはあるものの、コネクテッドテレビでOTTを観るという習慣は急速に身近になってきています。
なぜコネクテッドテレビが注目されるのか、コネクテッドテレビの広告チャンネルとしての成長
国内のコネクテッドテレビ広告の市場規模は、2024年には558億円の市場規模にまで発達すると予測されています。
(図7:国内のコネクテッドテレビ広告の市場規模)
参考:2020年10月22日、 SMN、国内コネクテッドテレビ広告市場調査を実施~2020年の市場規模は102億円の見通し、2024年には、558億円規模と予測~|SMN
OTT広告の伸長
株式会社AJAによる国内OTT(動画配信サービス)市場調査によると、OTT広告市場は2024年には1兆円を突破し、2025年のOTT市場規模は1兆1,910億円に到達する見込みと、今後も成長が期待されます。
(図8:国内OTT市場規模―動画配信サービスの視聴者に課金をする課金収入型と、広告主からの広告出稿による広告収入型に二つのビジネスモデルにより構成されるユーザーと広告主双方による需要総額をOTT市場と定義)
参考:2022年3月25日、 AJA、国内OTT市場調査を発表 2021年の国内OTT市場は7,151億円、動画広告がけん引し2025年には1兆1,910億円に成長|サイバーエージェント
コネクテッドテレビに相性の良い広告媒体
従来、テレビスクリーンに広告を出したい場合にはテレビCM一択でした。しかし、コネクテッドテレビとOTTの普及によって、テレビスクリーンへの広告配信にYouTubeやTVer、Abemaなど新たな選択肢が出現しています。
中でもおすすめなのがYouTube、TVerです。
・YouTube
日本国内のYouTube利用者は7,000万人以上を超え、日本で最も使われているソーシャルメディアのひとつとなっています。YouTubeは、コネクテッドテレビから気軽にアクセスでき、コネクテッドテレビからYouTubeにアクセスするユーザーは月間2,000万人を超えます。さらにはテレビでYouTubeを視聴するユーザーのうち20%がほとんどテレビでのみYouTubeを視聴している状況です。
先述した通り、普段よく視聴する映像・動画、第2位に「動画共有サービス」がランクインし、「録画したテレビ番組」を追い越したように、今やYouTubeは生活者にとって欠かせない存在となってきています。
参考:2023年3月、YouTube をマーケティングのヒントに —— トレンドが生まれ、マルチフォーマットなどで生活に定着進む|Think with Google
参考:2021年6月、「テレビでYouTube」が月間 2,000 万人に急成長中―コネクテッドテレビ広告、スマートニュースやパナソニックはこう使った|Think with Google
・TVer
TVerとは民放TV局が共同で提供する無料の動画配信サービスです。違法動画アップロードの防止対策を目的に2015年からサービスが開始されており、総ダウンロード数は4,000万を超え、CU全体のMUBは2,300万を超えています(2023年1月現在)。
TVerの最も大きな特徴はスキップ不可の広告である点です。広告の完全視聴率がどのデバイスでも90%以上と非常に高く、広告視聴後に商品やサービス内容を想起されやすくなることがメリットとして挙げられます。
また、テレビCMと比べて柔軟にターゲティング・運用できることも大きな強みです。さらには、運営会社が民放キー局なので安全性が高く、ブランド棄損やアドフラウド(成果水増しによる広告不正)を防げるといった特徴もあります。
その他、コネクテッドテレビに出向できる広告媒体は複数ありますが、それぞれの媒体特徴を理解した上で、適切な組み合わせで効果を最大化させることが有効です。
まとめ
おうち時間の増加もありコネクテッドテレビユーザーは急速に増加しています。そのため、コネクテッドテレビは広告の配信面として有力な選択肢のひとつといえるでしょう。生活者は、コネクテッドテレビでさまざまなコンテンツを楽しんでいます。コネクテッドテレビとOTTの普及によって生活者がテレビでYouTubeやTVerを視聴するといった新たな選択肢ができました。広告主はユーザーの視聴態度や媒体特性を考慮しながら、適切な出稿面を選んでいく必要があります。ご興味のあるかたはぜひご相談ください。
前回更新:2021.10.19
この記事の著者
生沼 光悠
2021年にアイレップへ入社。
ストラテジックプランナーとして化粧品・金融・人材・レンタルサービスなどのプランニング・運用を担当。
ユーザーに寄り添ったコミュニケーション設計のほか、戦略設計~ロワー領域の運用まで幅広い領域に従事。
2021年にアイレップへ入社。
ストラテジックプラン...