Cookieレスの基本の「き」
そもそもCookieとは?
Cookieとは、SafariやChromeなどのWebブラウザに保存されるIDのようなものです。CookieによってユーザーのWeb上での行動をコンピュータが一時的に記憶し、私たちが日常的に利用しているECサイトやSNSなど多くのWebサービスの仕組みを支えています。例えば、「Webサイトにログインする」というアクションだけでもCookieが使われています。ログイン画面で入力したIDが維持されたままサービスを使い続けられるのは、CookieによってID情報がブラウザに保存されているからです。Cookieはさまざまな形で応用されており、デジタル広告のターゲティングや計測にも用いられている重要な技術です。
ファーストーパーティーCookieとサードパーティーCookie
CookieにはファーストーパーティーCookieとサードパーティーCookieの二種類があります。
Cookieを書き込んだ場所と書き込む主体が同一であれば「ファーストーパーティーCookie」、異なる場合は「サードパーティーCookie」です。上記の「Webサイトにログインする」を例に挙げると、Cookieを書き込んだ場所と書き込む主体が基本的に同じになるので、ファーストーパーティーCookieとなります。
一方で、広告配信のトラッキングに使われるCookieの大半は「サードパーティーCookie」となります。Google ディスプレイネットワークなどに代表されるAd NetworkやDSP(Demand-Side Platform)などは、基本的にCookieを書き込む場所(www.example.com)と主体(www.yahoo.co.jpやwww.google.comなど)が異なるため、サードパーティーCookieとなります。サードパーティーCookieは広告配信において、主に(1)コンバージョン計測 (2)ターゲティングのふたつに活用されています。具体的な仕組みの説明は割愛しますが、Cookieを活用することで、広告のコンバージョン計測やリターゲティングによる獲得効率の良い配信が可能となります。
“Cookieレス”はなぜ起きる?
近年、サードパーティーCookieの活用が制限される「Cookieレス」環境への変化が起きています。ここからは「Cookieレス」を起こしているふたつの規制について解説します。
ひとつ目は「法律」による規制です。生活者の知らない間にさまざまなデータが収集され、第三者に提供されていることが問題となっています。そこで欧州や米国カリフォルニア州、日本でも個人情報に関する法律により第三者データの利用規制を強めています。これらの法律は、Web上の行動データなどが同意のない状態で第三者に渡り利用されるリスクからユーザーを守ります。
ふたつ目はAppleをはじめとした、WebブラウザやOS側での独自規制です。独自規制の影響により、各ブラウザでサードパーティーCookieの利用に規制がかかり、広告主やプラットフォーマーはブラウザ側が定めた規制に従わざるを得ない状況となっています。2021年8月現在は主にSafariを中心にサードパーティーCookieの利用規制がされていますが、Google Chromeでも2023年までにCookieの利用を規制することが発表されています。
(図1:独自規制の流れ)
Cookieレスがデジタル広告配信に及ぼす影響
前述の通り、サードパーティーCookieは広告の効果測定や、ターゲティングの精度を高めて広告成果を最大化するために重要な役割を担っています。そのため、サードパーティーCookieの利用規制は、コンバージョン計測の欠陥によって広告施策に対する適切な評価ができなくなることや、ターゲティング精度の悪化による広告効果の低下に繋がります。すでにサードパーティーCookieを用いたコンバージョン計測やターゲティング活用が制限されているSafariに加えて2023年からはGoogle ChromeでもサードパーティーCookie規制がおこなわれます。それにより近い将来、大半のWebブラウザでサードパーティーCookieが利用できなくなり、広告の配信精度の低下と広告効果の正確な計測ができなくなります。
今、実際に起きていること
実際の数字で見る、デジタル広告への影響
実際にデジタル広告を配信するなかで、サードパーティーCookie規制による広告配信の影響をどの程度受けているのか、疑問を抱いている広告担当者は多いと思います。本項では実際に当社内データを用いたサードパーティーCookie規制による広告配信への影響を解説します。
サードパーティーCookieの利用が制限されると、リターゲティングシグナルを判別することが困難となり、リターゲティング広告の配信対象のユーザーボリュームが減少します。図2は、実際の案件でのリターゲティングのコスト比率の推移を示しています。ITP※1リリース前後でボリュームが減少するだけでなく 、その影響で広告のCPM(掲載単価)が高騰していることがわかります。
※1 ITPとは:Intelligent Tracking Preventionの略称。Apple社がユーザーのプライバシー保護を目的に、Cookieの働きを制限することで個人情報のトラッキングを防ぐ機能。
(図2:非リターゲティングコストに対するリターゲティングコスト比率)
2019年1月∼2021年6月までの期間、当社で取り扱いのあるディスプレイ広告におけるリターゲティングの平均CPMの推移をグラフ化しました(図3)。近似曲線で見たところ、徐々にCPMが高くなっているのが分かります。2021年6月の平均CPMはすべてのサードパーティーCookieの完全規制が始まった2020年3月以降と比較すると、約140%と高騰していることが見て取れます。このように実際の数値で見てみると、サードパーティーCookie規制が実際の広告配信に影響を及ぼしていることが分かります。
(図3:リターゲティングのCPM推移)
これから起こること
Google ChromeでのサードパーティーCookie規制
前述した通り、Google社は2023年を目途にGoogle ChromeでもサードパーティーCookieの利用を規制すると発表しています。当初、2022年1月までに規制が開始される予定でしたが、2023年後半までに延長することが6月24日に発表されました。
発表によると2022年後半から段階的に規制をかけ、2023年後半までにGoogle ChromeにおけるサードパーティーCookieが排除される予定です。これにより、これまで以上に広告配信に影響を及ぼすことが予想されます。国内の利用Webブラウザシェアを見てみると、現状でサードパーティーCookieの利用が規制されているSafari、Edge、Firefoxが占める割合は全体の47% にも上ります。ここにGoogle Chromeでの規制が追加されることで全体の90%以上でサードパーティーCookieの利用が規制されることになり、日本国内で利用されているWebブラウザ の大半でサードパーティーCookieが利用できなくなることを意味します。
参考:statcounter
(図4:国内の利用ブラウザシェア)
デジタルマーケターとして求められること
ここまでで解説した通り、2~3年後にはGoogle Chromeを含む大半のWebブラウザでサードパーティーCookieの利用ができなくなり、広告配信におけるコンバージョン計測とターゲティング精度に大きな影響を及ぼします。これまで通りのデジタルマーケティング手法では、広告効果の悪化が容易に考えられるため、デジタル広告施策をおこなう企業の担当者は、サードパーティーCookie規制を正しく理解し、対策を講じる必要があります。
次回の記事では、サードパーティーCookie規制に対する各プラットフォームが推奨している対応策の解説と、Cookieに依存しない配信手法の活用というふたつの軸で、デジタルマーケターがCookieレス時代に求められることを解説します。
この記事の著者
井内 拓真
北海道の札幌出身で、小樽商科大学商学部を卒業後、2020年にアイレップへ新卒として入社。入社後から一貫して、クライアント企業へのメディアプランニングや媒体社向き合いの業務に従事。メディアプランニングはBtoBから玩具メーカーまで幅広い業種での企画・提案経験を持つ。
担当する媒体社は、ヤフー社やLINE社をはじめ、TikTokを展開するByteDance社やSpotify社など多岐にわたる。2020年4月より昨今のITPをはじめとするアンチトラッキング環境へ対応すべく、アイレップ社内で発足されたプロジェクトチームに参画。
北海道の札幌出身で、小樽商科大学商学部を卒業後、2020年に...
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