リターゲティング広告は、一度Webサイトに訪問したユーザーをターゲティングできる有用な手法ですが、頼りすぎることによるデメリットも存在しています。リターゲティング広告に偏った運用にはどのようなデメリットが生じ、どのような施策を実施することで既存施策の改善・拡大につながるのでしょうか。今回は、Yahoo! JAPANのビッグデータ活用の観点から、「脱リターゲティング依存」の方法について紹介していきます。
100種類以上 のさまざまなサービスを展開し、月間PV数が約790億PVと日本最大級の規模を誇るYahoo! JAPAN。検索データをはじめとするバリエーション豊かなユーザーデータは、サービス横断×ユーザー規模において日本有数のマルチビッグデータといえます。そんなYahoo! JAPANのビッグデータを使ったセグメント配信により、リターゲティングの成果改善・新規ユーザー拡大を図ることが可能です。
1. リターゲティング広告に偏った運用のデメリット
リターゲティング広告はリスティング広告と並び、顧客ファネルにおいて最もコンバージョンに近いフェーズで利用されることが多いメニューです。獲得重視のキャンペーンであれば注力したい施策に間違いありません。実際に広告予算の大半をリターゲティング広告に使用しているクライアント企業も存在します。しかし、長期にわたり新規ユーザーに対する施策を実施せず、リターゲティング広告のみを実施しつづけた場合、成果はどうなるでしょうか。おもに以下の2点が考えられます。
(1) ターゲットリスト枯渇によるコンバージョン数減少
第1に考えられるのは、ターゲットリストの枯渇によるコンバージョン数の減少です。限られたWebサイトへの訪問ユーザーを対象に広告を配信し続けることになるので、当然リストボリュームは徐々に減少していきます。配信対象となるユーザーの減少は、コンバージョン数の減少に大きく関わります。Webでのコンバージョン数拡大を目標とする場合、リターゲティングリストの枯渇は避けるべき問題といえます。
(2)獲得効率の悪化
第2に獲得効率の悪化です。枯渇したターゲットリスト内で獲得施策を続けることのデメリットは、コンバージョン数の減少だけではありません。コンバージョンを狙い入札強化をした場合、確度の高いユーザーには配信しつくし、見込み確度の低いユーザーにまでリーチが及んでしまいます。その結果、キャンペーン全体の獲得効率における悪化につながってしまいます。また、本記事では詳述しませんが、今後ITPのアップデートが進むとCookieの利用規制がさらに強化される可能性があります。するとリターゲティング可能なユーザー数は減少しつづけるでしょう。きたるCookieレス時代のデジタルマーケティングに順応するためにも、非リターゲティングセグメント配信は必須となるといえます。
2.顧客ファネルの拡大
では、どのようにすればターゲットリストの枯渇を防ぎ、効率よく顧客ファネルを拡大することができるのでしょうか。以下の2軸の観点をもつことにより、リーチを広げて幅広く見込みユーザーの獲得が可能になります。
縦軸:上位ファネルから下位ファネルへの誘導
横軸:さまざまなターゲティングを使ったリーチ範囲の拡大
(図1:顧客ファネルの縦軸と横軸の拡大)
(1)顧客ファネル 縦軸への拡大
顧客ファネルを拡大するうえで、上位ファネルから下位ファネルへの誘導が基本となることはイメージしやすいのではないでしょうか。具体的には、リターゲティング広告・リスティング広告といったロウワーファネルの獲得向けメニューだけでなく、Webサイト誘導や認知を目的としたキャンペーンを並走させるということです。興味関心カテゴリ・デモグラフィックターゲティングなどのセグメントがよく用いられます。顧客ファネルの縦軸の拡大を図ることで、リターゲティング広告のターゲットリストにおけるボリュームの増加に寄与します。
(2)顧客ファネル 横軸への拡大
横軸方向への拡大とは、多様なユーザーインサイトをとらえるターゲティング実施により、単一のターゲティングではリーチが難しいユーザーもカバーするという考え方です。
見込みユーザーのコンバージョンパスはさまざまです。ここでは化粧水を例に、購入検討に近いフェーズのユーザー行動を考えてみましょう。サービスサイトのリターゲティングや、ブランド名などのリスティング広告のほかに、コンバージョンの見込みが高いユーザーはどのようにリーチすればよいでしょうか。
化粧水の購入見込みが高いと予想できるユーザー行動の例
・特集ページなど美容に関連するページを閲覧している
・ECモールでコスメをよく購入している
・コスメに親和性の高いアプリを利用している
上述のようなユーザーにリーチすることで、既存キャンペーンでは網羅できなかった新たな高いモチベーションのユーザーを取り込むことが可能になります。コンバージョンに近いユーザーがターゲットリストに増えることで、無理な入札強化をせずともコンバージョンが獲得できるようになるため、キャンペーン全体の獲得効率改善につながります。そして、このロジックを成立させるには、狙いたいターゲットに的確にリーチさせる、精度の高いターゲティングができることが前提となります。
3.Yahoo! JAPANビッグデータを活用したターゲティング
冒頭でも述べましたが、Yahoo! JAPANのディスプレイ広告(運用型)においては、Yahoo! JAPAN保有のビッグデータをもとにした質の高いターゲティングが実施可能です。この章ではマルチビッグデータを擁するYahoo! JAPANの媒体力と、実施可能なターゲティングについてご紹介します。
(1) Yahoo! JAPANのマルチビッグデータ
Yahoo! JAPANは日本において代表的な検索エンジンであるYahoo!検索をはじめ、ニュースやショッピング、地図、決済サービスなど100種類を超える多様なサービスを有するメディアです。これらのサービス展開により、日本のインターネットユーザーにおいてスマートフォンでは約9割、PCでは約6割のユーザーをカバーする圧倒的なリーチ力を持っています。サービス横断で得られるマルチビッグデータ、過去の膨大なデータと照らし合わせてターゲティングロジックが確立されていることが、Yahoo! JAPANの大きな強みといえます。
Yahoo! JAPANの有するおもな行動データ
・検索ワード(90億種類以上)
・Yahoo! JAPANのサービスページ・その他Webページ閲覧データ
・購買データ
・決済データ
(2) Yahoo! DMPの活用
サーチターゲティングは、指定のキーワードの検索ユーザーというモチベーションの高い層を狙える優れたターゲティングのひとつです。一方で、先に述べた化粧水の例では、ECモールでの購入ユーザーや親和性の高いアプリ利用ユーザーへのターゲティングを挙げました。こうしたディスプレイ広告(運用型)では実施が難しいオリジナルセグメントは、「Yahoo! DMP」を利用することで調整可能な場合があります。 さらに、クライアント企業の持つデータを掛け合わせて配信に活用することも可能なため、キャンペーン目的に沿った柔軟な設計ができるようになります。もちろん業種・商材により相性はありますが、サーチターゲティングとは異なる層からユーザーを誘導できるターゲティングのひとつといえるでしょう。
まとめ
ディスプレイ広告(運用型)では、Yahoo! JAPANでのサービス内のユーザーインサイトにもとづいた、質の高いマルチビッグデータをターゲティングに利用することが可能です。そうすることで、顧客ファネルの縦軸方向だけでなく、ユーザー獲得の間口を広げ、横軸方向にも拡大できるソリューションとして、新規ユーザー拡大・既存キャンペーンの成果改善が期待できます。
Yahoo! DMPを利用したセグメントの配信や、効果的な運用手法についてはアイレップにご相談ください。お問い合わせはこちらから。
この記事の著者
小見山 智衣
2019年アイレップ入社。メディアプランナーとして担当のYahoo! JAPAN/Criteoを中心に、純広告からダイナミック広告まで幅広いメニューのプランニングに携わる。
2020年よりパフォーマンスメディアUnitのタグ&フィードチーム兼務。
趣味:最近ハープを習い始めました。ディズニー音楽の弾き語りが夢です。
2019年アイレップ入社。メディアプランナーとして担当のYa...