BtoB マーケティングを統合的に推進するためには?(1/3)

2020.07.06

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本記事は、法人向けに商品やサービスを提供している企業に対して、デジタルマーケティングの技術や手法を活用して、潜在リードから効率的に売上をつくる方法や、業務を効率化させる方法など、最新の考え方やノウハウを体系的にまとめています。経営者の方は、全社視点で、どのようにデジタルマーケティングをマネジメントに組み込んでいけばいいのか、マーケティング担当者の方は、どのようにマーケティング施策を立案し、現場に落とし込んでいけばいいのか、営業担当者の方は、自分の業務がどのように変化していくのか、という視点で読んでもらえればと思います。

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この記事は第3回まで続きます。
BtoB マーケティングを統合的に推進するためには?(2/3)
BtoB マーケティングを統合的に推進するためには?(3/3)

BtoBマーケティングの大まかな流れを知ろう

本章では、BtoBマーケティングを全社レベルで推進するための大きな流れを定義し、プロセスごとにどのような施策を行うべきかを見ていきたいと思います。

やるべきことを俯瞰して整理する

図1 は、BtoBマーケティングを推進していくときの全体像です。横軸では「戦略・事業理解」「課題の整理・構造化」「マーケティング施策立案」「ソリューション実装・運用」の4つのステップを定義し、縦軸では「7つのC」という分析フレームワークを活用して検討する範囲を定義します。

4つの検討ステップ

BtoBマーケティングの具体的な施策に入る前に、自社のサービスや事業がどのような収益モデルやコスト構造で成り立っているかを整理する必要があります(A)。その上で、KGI(Key Goal Indicator)やKPI(Key Performance Indicator)の数値目標を立てます。次にマーケティングやセールス領域の課題を抽出し、本質的な課題を見つけていきます(B)。ここまでできて、ようやくリードジェネレーションやリードナーチャリングに関するマーケティング施策の企画立案を行う(C)ことができ、最終的にどのようにオペレーションを回していくかという運用体制を構築(D)することができます。

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(図1:BtoBマーケティングの全体像)

7つのCで検討範囲を整理する

次に縦軸の定義です(図2)。マーケティングで4P(Product, Price,Place,Promotion)などの分析フレームワークがありますが、BtoBマーケティングを構造的に整理する軸として7つの切り口から検討範囲を整理していきます。上段の4つのCは、企業と企業(顧客)がどのようなやりとりを行うべきかを定義しています。具体的には、「どの顧客に(Customer)」「どのチャネルで(Channel)」「どのようなクリエイティブ・コンテンツを活用して(Creative/Contents)」「どのようなコミュニケーションを行うか(Communication)」を定義します。一番重要なのは「Customer(顧客)」になります。

下段の3つが、「どのようなモノ・ツールで(Cloud:System)」「どれくらいのコストで(Cost)」「どのような体制で(Collaboration)」を定義しています。BtoB企業に限らず、デジタルマーケティングを推進していくときは、様々な部署が関連することになるので体制づくり(Collaboration)は非常に重要です。また、MAやCRMなどのシステム投資が絡むので、費用(Cost)に関しても継続的に観察していく必要があります。「マーケティング施策立案(C)」としては、コンテンツマーケティングや広告などのリードジェネレーションと、MAを活用したリードナーチャリングの2つに絞り込まれます。ただし、企業ごとに推進している事業とその課題は全く違います。ですので、まずはマーケティング施策立案の前工程から検討することをおすすめします。ソリューション実装のステップから、MAを先に導入してしまい、後になってから、そもそも何の課題を解決するためにBtoBマーケティングをやることになったのかよくわからない、という失敗例を数多く見てきていますので気をつけてください。

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(図2:分析フレームワーク「7つのC」)

KGI/KPIの定義と評価指標の設定

全体設計する際にもう1 つ重要なのが、KGI・KPIの設定です。一般的にKGI(Key Goal Indicator)は売上/利益の最大化になります。KPI(Key Performance Indicator)は、法人企業の場合、顧客数と顧客単価に分解し、顧客数に関しては、さらに新規の見込み顧客と既存顧客に分解します(図3)。図を見てわかるとおり、売上利益を上げていくためには、顧客数を増やすか、(1社あたりの)顧客単価を上げる以外に方法はありません。顧客単価は、品揃えの充実や、プロダクト販売からソリューション販売へのシフトなど、商品・サービスそのものに起因することが多いため、BtoBマーケティングの施策が効果を発揮するのは、新規見込み顧客の創出と、受注するまでのプロセス改善になります。

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(図3:KGI/KPI定義と評価指標の設定)

パイプラインの考え方

図4は、新規に獲得した見込み顧客(新規リード)をパイプライン管理した場合の設定例です。ビジター数は、サービスサイトへの訪問者数やセミナー・イベントの出席者数になります。プロスペクトがMAに登録された新規リード数で、MQL(Marketing Qualified Lead : 購買の状況がある程度進んでいるリード)、SQL(Sales Qualified Lead : インサイドセールスや営業がフォローしているリード)、商談成立という順番で見込み顧客が絞られていきます。プロスペクトからSQLまでが、顧客数(新規見込み顧客)に関わるKPIになるため、実際の運用では、オンライン・オフライン両方で獲得したリード数を細かく管理していく必要があります。

31717054074_04(図4:バイプラン管理の評価指標の設定例)

施策を考える前に、既存顧客を分析して優良顧客を見つける

複数のデータベースを横断して分析する

企業のデータベースが、最低限、社内で整備されていれば、企業名をキーにして外部データを活用した企業分析を行うことが可能です。例えば、Sansanの名刺管理データベースや、CRMの営業管理システムなどが導入されていれば、それをベースに分析していきます。その他、MAもすでに導入されていれば、新規リードの傾向値と、すでに商取引のある企業の傾向値の比較を行うことも可能です。図5は、顧客分析のステップです。ステップ①では、自社のデータ(例えばSalesforceに入っているデータ)と外部データ(例えばFORCASのデータ)を企業名で連携させて、ステップ②でデータを分析し、ダッシュボードやエクセルなどでデータを可視化します。最終的にステップ③で、既存顧客にどういった傾向があるのか、様々な切り口で分析していきます。

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(図5:既存顧客の分析プロセス)

対象顧客を絞り込む

図6は対象顧客を絞り込むときの考え方です。例えば、市場全体が約120万社あったときに、市場全体で自社の既存顧客がどれぐらいいるのか、また同様に、上場企業がどれぐらいいるのか集計し、最終的に既存顧客の中にいる上場企業の数を集計します。既存顧客かつ上場企業が分析できれば、そこから、まだ取り込めていない上場企業の傾向値などを把握することも可能です。

31717054074_06(図6:対象顧客の絞り方)

既存顧客の分析から潜在顧客をリスト化する

具体的にどのようなステップを踏んで、優良顧客化しそうな潜在顧客を見つけていくかを見ていきたいと思います(図7)。初めのステップは、すでに取引のある既存顧客を分析・理解することです。社数が多い場合は、売上上位100社で絞り込む、上場企業のみで絞り込むなどの工夫をして、対象顧客を分類(セグメント化)していきます。分類方法は様々ありますが、例えば、売上高と資本金の軸で顧客を10から20ぐらいのセグメントに分類していきます。次に行う作業は、ターゲット顧客の特定です。例えば、顧客セグメント単位で、どれぐらいの企業数と取引実績があるのか、世の中の企業数を母数として市場占有率をだします。また、顧客セグメント単位で、どういった商品・サービスが売れているのか、顧客単価がどれぐらいなのかを分析します。既存顧客を理解し、ターゲットとなる顧客が特定できたら、それらの分析結果を踏まえて、潜在顧客のリストを作成していきます。取引実績がある顧客数はまだ少ないが、高単価の商品・サービスが売れている顧客が存在するセグメントであれば、同じセグメントに属する企業をリストアップしてアプローチをかけていくのが有効な打ち手となります。一方で、顧客セグメントの市場占有率が高い場合、顧客へのアプローチ数を増やしていくのは難しいため、既存顧客に対してクロスセル・アップセルをしていく提案のほうが打ち手として有効です。 運用方法に関しては、KPIのロジックツリーを作成した上で、件数や単価などのデータを可視化するためのダッシュボードを構築し、複数の部門が同一のデータを共有できるようになると成果が把握しやすくなります。

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(図7:既存顧客の分析から潜在顧客をリスト化するまでの流れ)

見込み顧客が求めているコンテンツを充実させる

見込み顧客が求めているコンテンツを充実させるためには、キーワード(KW)分析を行います。ユーザーの検索意図(インテント)や検索市場を考慮して、ユーザーの求めている情報を適切に提供するためです。参考になるデータとして、例えば、アクセスログや行動ログデータ、Googleの検索傾向などを分析し、キーワードそれぞれの検索意図を捉えていきます。図8は、車両保険関連のキーワード分析を実施した例です。まず、競合劣位しているものや、競合も手をつけていないキーワードを抽出します。次に、抽出したキーワードを検索意図によってグルーピングして整理します。検索意図の分析は、各キーワードで検索したときに上位に表示されるWebページを目視で確認します。検索意図をもとにページ数を確定し、コンテンツの構成要件を定義していきます。最終的に検索ボリュームと競合の順位状況をもとに優先度を定義します。

31717054074_08(図8:キーワード分析から要件定義までのフロー)

キーワード分析後のコンテンツづくり

キーワードとコンテンツテーマが確定してから、ランディングページ(LP)作成のためのワイヤーフレームを定義し、効果的なタイトルや見出し、コンバージョンの導線を考慮した全体の構成を決めていきます。その後、外部の制作会社と連携して、ページのクリエイティブ制作と、ブログ記事やホワイトペーパーなどのコンテンツの執筆を行っていきます。キーワード分析からワイヤーフレームの決定までが1~2か月程度、その後の制作フェーズで、2 ~ 3 か月程度の工数がかかります(図9)。

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(図9:コンテンツ制作のフロー)

デジタル広告やSEO でリード件数を増やす

オンラインで新規リードを増やしていく主なやり方は、デジタル広告を活用して流入数を増やす場合と、検索エンジンを活用して流入数を増やす場合(SEO)の2つです(図10)。

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(図10:デジタル広告とSEOの比較)

広告vs SEO

広告に関しては、検索エンジン最適化(SEO)と比較するため、デジタル広告(検索連動型広告)でメリット・デメリットを見ていきます。まず、広告のメリットは、仕込んでから検索エンジンの上位に表示されるまでの期間が短いことと、Webページの修正が不要なことです。デメリットとしては、やり続けている間は費用が発生し続けることと、CTR(Clock Through Rate:広告やサイトのクリック率)が低くなりやすいことです。ファネルで見ると、広告施策は認知段階から有効です(図11)。SEOのメリットとしては、費用がかかりますが、一度上位に表示されるようになるとアルゴリズムが変更するまで出続けることになるので、それ以降の費用はかかりません。また、自由度が高いのでCTR が高くなりやすいです。デメリットは、上位表示されるまでに早くても数か月かかることです。また、Googleの検索エンジンから評価されるようにサイトの見直し(内部施策)をする必要があります。ファネルで見ると、興味関心が高まった段階でユーザーがキーワードを打ち込むため、SEOは認知段階ではなく、興味・関心フェーズや比較・検討フェーズでサイトの見直しをするほうが有効です。

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本記事の続きはこちら
BtoB マーケティングを統合的に推進するためには?(2/3)

 

<DL資料>BtoBデジタルマーケティングレベル診断シート

 

この記事の著者

竹内 哲也

NTTデータ、コーポレイトディレクション等を経て、2014年にデジタル・アドバタイジング・コンソーシアムに参画。2018年より株式会社アイレップも兼務し、グループ全体の統合デジタルマーケティングを包括的に牽引。2019年度より株式会社アイレップ専任執行役員。早稲田大学政経学部卒。専門は事業開発。

NTTデータ、コーポレイトディレクション等を経て、2014年...

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