この記事は、「【Cookieレス連載#1】Cookieレス徹底解説!~基本から対策までを一気におさらい~」の続編です。Cookieレスの世界に向かっていくなかで、今対応できることや対策すべきことをお伝えします。
※本記事は2021年10月4日時点の情報をもとに執筆しています。
Cookieレス環境に対抗する物理的な対応策
各プラットフォーマーごとの施策まとめ
(図1:各プラットフォーマーが発表しているCookieレス対応策の一覧)
各プラットフォーマーから打ち出されている対応策とその効果
(1)Google
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Google クリック ID
広告がクリックされるとURLに渡されるパラメータ。1st Party でのドメインからのサイト流入を記録。Googleの自動タグ設定が必要。 -
拡張コンバージョン
1st Partyの顧客データ(メールアドレスなど)をハッシュ化してGoogleへ送信。ユーザーがログインしていたGoogleアカウントと照合する。 -
サーバーサイド タグ
ユーザーがサイトを訪れた際のタグ処理をGCPの新しいサーバーサイド コンテナに転送させる。
(2)Yahoo!
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クリックID
広告がクリックされるとURLに広告ごとにユニークで発行されるパラメータ。1st Party でのドメインからのサイト流入を記録。 -
ローカルストレージ
ウェブブラウザに存在するデータ保存領域・機能。Cookieとは別の領域。
(3)Facebook
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Advanced Matching
タグ経由で1st Partyの顧客データ(メールアドレスなど)を自動取得し、ハッシュ化してFacebookへ送信。 -
コンバージョンAPI
顧客データや、Web上で発生したユーザーアクションなどのデータが広告主のサーバーからFacebookのサーバーへハッシュ化された状態で送信される。
(4)LINE
Advanced Matching
タグ経由で1st Partyの顧客データ(メールアドレスなど)を自動取得し、ハッシュ化して
LINEへ送信。
(5)Twitter
クリックID
広告がクリックされるとURLに広告ごとにユニークでIDが発行される。Twitterのウェブサ
イトタグが作動すると、タグはこのIDを読み取ってTwitterに送信し、このサイト訪問を広告
クリックにひも付ける。
(6)Criteo
図1に記載しておりませんが、Criteoでは、以下のようなターゲティング手法を活用することによるユーザー獲得施策を進めています。
- ユーザーレベルのターゲティング
1st Party Media Networkの構築。1st Party Media Networkは、コマースデータとAIを組み合わせたCriteoが開発してきたシステム。 識別子(ID)を関連付け、クロスドメインでユーザーにリーチする。
広告主とパブリッシャーのファーストパーティIDをもとに、ハッシュ化されたメールやサードパーティID(例:LiveRampのRampID)など追加のIDシグナルと組み合わせて、ドメインを横断してユーザーを特定・識別できる。
- 興味・関心グループレベルのターゲティング
コホート、Privacy Sandboxへの参画。 - コンテキストターゲティング
閲覧中のページの内容に関連する広告を表示する新しいプロダクトを開発し、テスト中。
各媒体の対策における効果
3rd Party Cookieの利用規制を受けて、各媒体は大きくふたつの目的において対策を推進しています。
(1)リターゲティングをはじめとするCookie
リターゲティング広告とは、「自社のサイトを訪れたことがあるユーザーに広告を配信する」手法です。
3rd Party Cookie利用が制限されている現在、リターゲティング広告の配信ボリュームは縮小を続けています。サイトを訪れているユーザーの計測補完を行うことでリターゲティング広告の成果維持を図ることを推奨します。
(2)コンバージョン計測補完
リターゲティング補完を行うだけでは、Cookieレス対応策は不十分です。リターゲティング広告のみならず広告の効果計測には3rd Party Cookieが利用されているためです。したがって、コンバージョン計測においても実際に広告経由で獲得できた数値の計測漏れが起きる可能性が高くなります。各媒体の対策を進めることが広告パフォーマンスの維持につながります。
対策しきれない影響について
実は、前章でご紹介したリターゲティング補完・コンバージョン計測補完をすべておこなったとしても、これまで通りの広告パフォーマンスを維持し続けることは不可能といわれています。
対策をしてもなお、計測の有効期限が制限されているためです。加えて、来年施行される改正版個人情報保護法により今後はCookieやIDFAの第三者提供に同意したユーザーのみで計測する状態になり、計測対象ユーザーが減っていくことが予想されるためです。
Cookieレス環境に順応するための備えと心構え
各媒体の施策と影響についてまとめましたが、これらを踏まえてマーケターの皆様は以下を意識して対策することを推奨します。
(1)現在の広告成果から影響を把握する
リマーケティングボリュームの縮小やコンバージョン計測漏れにより、今後は過去の広告パフォーマンスと成果比較をすることが難しくなっていきます。「最近、広告のCPAが上昇している」と課題感を感じている方は、リマーケティング広告の掲載単価が上がっていないか? コンバージョン数が減少していないか?を確認してみると、広告におけるCookieレスの影響を実感できるのではないでしょうか。
(2)各対策の導入を検討する
広告主側・代理店側で一緒にCookieレス対応策の実装に向けて進めましょう。システム関連の複雑な作業が多く、要件整理から実装まで2~3か月程度要するものもあります。
(3)リターゲティングでの獲得に依存しない配信手法を検討する
非リターゲティング広告はリターゲティング対象ユーザーのボリューム補完で利用している、といった広告主も多いかと思います。しかしリターゲティングを利用できなくなるなかで、早めに非リターゲティング広告の配信拡大を進めていく必要があります。
(4)KPIを見直す
ここまでは、Cookieレスの広告配信における対策と影響について説明してきました。しかし各対策を完全に実装したとしても、計測は100%補えるものではありません。広告費に対しての成果を過去と同じ基準で比べることはできなくなってくるため、今後、広告主の事業拡大において何をKPIとするのかを今一度検討していくべきです。 例えば、Cookieに依存しない指標(自社で管理している売上データなど)と広告施策との相関を見てみる、という手もそのひとつです。
まとめ
現在、CPAの目標値を見直すことやコンバージョン以外の指標で広告パフォーマンスを評価することを広告主・代理店ともに検討していかなくてはいけない段階になるまで、Cookieレスの動きは進んでいます。次回は具体的なKPI設定の一例や、アイレップの推奨設計を説明します。
この記事の著者
田中 梨花子
2019年にアイレップ入社。入社後2年間では、Google・Yahoo!やSNSの広告運用を担当した後、アカウントプランナーとして認知~ダイレクト領域まで広く担当。現在はメディアプランナーとしてプランニング業務に従事しながら、ITPをはじめとするアンチトラッキング環境での媒体横断施策をリードする。
2019年にアイレップ入社。入社後2年間では、Google・...