EMOFUL #2:Twitterを通じて生まれるファンの盛り上がり 〜オタクは推しを応援したい〜

2021.09.13

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アイレップには、”エモーショナルエンジン”と称したゲームアプリを中心としたエンタメに愛ある集団がいます。そんなメンバーひとりひとりが持つ愛を伝えるべく、デジフルで連載を始めます。連載名は、エモーショナルエンジンのデジフル=「EMOFUL(エモフル)」です。ただ愛を語るのではなく、アイレップらしくロジカルな視点からも切り込んでいけるような、 そんな内容を掲載していきたいと思っています。今回はその第2回となります。

最後までお付き合いいただけましたら幸いです。

第1回はこちら

はじめに

Twitterを通じて盛り上がるコンテンツとは

突然ですが、皆様は「忍者と極道」というWeb漫画作品をご存知でしょうか。

『Webマンガ総選挙2020』第9位、『このマンガがすごい!2021』オトコ編第8位、『次にくるマンガ大賞2021』Webマンガ部門第10位にランクインという実績があり、一見すると「それなりに人気のある漫画」という印象をお持ちになるでしょう。

ですが、Twitterにおいては他の漫画とは一線を画する盛り上がりを見せており、連載更新日である毎週月曜日には「忍者と極道」が何度もTwitterトレンド入りするほどの人気ぶりです。TwitterトレンドについてまとめているWebサイト※1によると、「忍者と極道」がTwitterトレンドインした回数は累計で97回となっています。

※1:出展 株式会社 AutoScale「Twitterトレンド速報」2021年9月6日時点データより

さまざまな企業やコンテンツがTwitterアカウントを開設して情報発信していくなかで、Twitterを通じてコンテンツが盛り上がるケースはしばしば見られます。しかし、何度もトレンドインするというのは滅多に見られない光景です。

「忍者と極道」のように、Twitterを通じてファンがコンテンツを応援したくなる土壌はいったいどうやってできたのでしょうか。「忍者と極道」公式TwitterアカウントでのTwitterコミュニケーションに注目することで、その盛り上がりの軌跡を追っていきます。

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「忍者と極道」とは

トラウマから笑えない少年「忍者(しのは)」、表向きはエリート会社員ながら裏では組を牛耳る「極道(きわみ)」。そんな2人が出会った時、300年にわたる忍者と極道の殺し合いの炎が熱く燃え盛る!孤独を抱えた漢達による、情熱と哀切に彩られた命のやり取り。決めようか…忍者と極道、どちらが生きるかくたばるか!!(作品あらすじより)

講談社がリリースしている漫画アプリ「コミックDAYS」において、2020年1月より週刊連載されているWeb漫画作品です。作者は「近藤信輔」※2。過去作品として、週刊少年ジャンプにて「烈!!!伊達先パイ」「ジュウドウズ」を連載していました。

※2:ファンの間では「作者神」や「近藤神」と書いて「サクガミ」と呼ばれている。

「忍者と極道」がTwitter向きなワケ

有名アニメのファンも唸らせる「オマージュ」

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※出典:単行本1巻 10ページ(https://comic-days.com/episode/10834108156722664318

分かる人には分かりますが、「忍者と極道」には「有名アニメシリーズ※3」らしきもののオマージュが登場します。「忍者と極道」の凄いところは、このオマージュが一発ネタで終わるわけではなく、作品のストーリーの根幹に深く関わっていくところです。「忍者と極道」を読み進めていくと、「有名アニメシリーズ」のストーリーやシーンをまるで再現しているかのようなオマージュが次々と展開されていきます。

※3:毎週日曜日の朝8時半に放映されているもの。

血に染まった世界の「忍者と極道」で、キラキラした世界の「有名アニメシリーズ」のオマージュが展開される。そのことに対して「有名アニメシリーズ」のファンたちは苦言を呈するどころか、圧倒的な”愛”によって構成されたオマージュに対して心を揺さぶられ「(流血表現に耐性があるなら)他のファンたちにも薦めたい」と絶賛するほどです。

このように、オマージュが分かりやすく作品に組み込まれていることによって「このシーンはあのアニメシリーズのオマージュだ!」とTwitterで話題に上げやすくなっているのです。

強烈で目を引くキャラのセリフ「ルビ芸」

ルビ芸※4とは「宿敵」と書いて「とも」と読むような、通常ではあり得ない漢字のふりがなを記載することを言います。「忍者と極道」では、キャラクターのセリフに対して他と漫画とは比べ物にならないレベルでルビ芸が頻出します。

※4:ファンの間では忍極語と呼ばれている。

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※出典:単行本5巻147ページ(https://comic-days.com/episode/13933686331707014805

「恐怖超えて絶望」を「ぴえんこえてぱおん」と読ませるなど、若者言葉やヤンキー言葉のトレンドを取り入れた独特なルビ芸によって、読者に強烈な視覚的インパクトに与えています。こうすることで、一目で見たときに印象に残りやすくなります。ちなみに筆者の一番好きなルビ芸は「児戯(ヌルゲー)」です。

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※出典:単行本2巻189ページ(https://comic-days.com/episode/13933686331616691752

その他にも、ルビ芸はセリフを読みやすくしたり、セリフに深みを持たせる役割も担っています。例えば、「弾丸(だんがん)」に「タマ」というルビを振ることで、読者が本来読むふりがなの文字数が2文字減っています。また、「強請(きょうせい)」とは本来「ゆすること」ですが、「オネダリ」というルビを振ることで、ガラの悪い言葉から一転してお茶目なニュアンスの言葉へと変化しています。

こうした他の漫画では見られない独特なルビ芸が、Twitterユーザーの興味関心を誘い、呟きたくなる・拡散したくなる気持ちに火をつけているのです。

Twitterが盛り上がった「3つのポイント」

ユーザーの呟きを公式アカウントがピックアップ

自分たちのツイートを見てくれる。自分たちが応援している想いを受け止めてくれる。ファンの存在を認知してくれる。そういったファンの愛を受け止め、ファンに対する愛を可視化しているのが、このツイートなのです。

スクショ撮り放題の感想ツイートキャンペーン

「忍者と極道」では、単行本発売のタイミングに合わせてキャンペーンを必ず実施しています。その中でも注目しているものが「感想ツイートキャンペーン」です。

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※出典:https://twitter.com/nin_goku/status/1279924693491806209?s=20

キャンペーン用のハッシュタグをつけて作品の感想をTwitterで呟く、というよくあるキャンペーンに見えますが、注目すべきは「スクショが撮り放題」というところです。これはWeb漫画だからこそできた施策でしょう。

どのページでもスクショ撮り放題ツイートし放題という、自由度の高く敷居の低いキャンペーンによって、ファンの呟きがどんどん増えていきました。その呟きが「忍者と極道」を読んでいないフォロワー達の目に入り、添付されたスクショによって興味関心が芽生えたフォロワーが「忍者と極道」を読んでいく。こうしてTwitterによる「面白さの伝染」が次々に起こったのです。

作品の盛り上がり・成長の可視化

「忍者と極道」公式Twitterアカウントでは、Twitterトレンドインしたとき※6、単行本の重版出来が決定したとき、漫画ランキングで上位に入った時ときなど、作品が何かしらの盛り上がりを見せたときには必ず報告ツイートを呟いてくれています。

※6:最近はほぼ毎週トレンドインしているため、紹介を控えているようだ。

こうした「作品の盛り上がりの可視化」をおこなってくれることで、ファンは自分たちの応援が結果に結びついているという「成功体験」を感じることができるのです。また、報告の際には必ずファンの応援に対する感謝が込められており、作品としてファンを大事にしているという姿勢を常に見せてくれています。だからこそ、「忍者と極道」のファンはコンテンツから離れることなく、継続的に応援し続けてくれるのです。

「忍者と極道」がファンから愛される理由

「忍者と極道」がこれほどTwitterで盛り上がり、ファンから愛されている理由は何故か。作品が面白いことはもちろんですが、圧倒的な”愛”が答えです。

ファンの応援を常に見てくれている”愛”、ファンの応援に応えてくれる”愛”、ファンへの感謝を忘れない”愛”、作家本人を気遣う”愛”、さまざまなキャンペーンを実施してくれる”愛”。 「忍者と極道」公式Twitterアカウントからは溢れんばかりの”愛”を感じます。その”愛”こそがファンの心に火を付け、Twitterの盛り上がりに繋がったのです。かくいう筆者自身もTwitterから溢れる”愛”によって心が揺さぶられ、単行本1巻を10冊購入して社内の人間に布教のため配り歩きました。

ファンは作品に対して愛を呟き、作品サイドはファンからの愛を受け止めて感謝を返してくれる。この「愛のキャッチボール」こそが、ファンを盛り上げている最大の要因だと考えています。

まとめ

10~20代の若い世代の間で「推し活」という言葉が流行っています。ひとつのコンテンツに対して盛り上がっていくユーザーが増える一方で、盛り上がらずに消えていくコンテンツも少なくありません。

Twitterで盛り上がるコンテンツを作り上げるためには、ユーザーとの「アクティブコミュニケーション」が必要な時代に突入してきているのはないでしょうか。一方的な告知だけではなく、ファンを巻き込んで一緒にコンテンツを盛り上げていくようなコミュニケーションのために、改めてファンの声に耳を傾け、彼らとともにコンテンツを盛り上げていく考え方にシフトしていくべきでしょう。

エモーショナルエンジンでは、コンテンツに対するユーザーの熱量を可視化するパッケージを鋭意開発中です。また、コンテンツ運用やIPプロモーションに関するご相談なども随時承っております。ぜひお気軽にお問い合わせください。

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「忍者と極道」は漫画アプリ「コミックDAYS」にて大人気連載中、単行本は現在6巻まで発売済みですので一気読みにも最適です。ちなみに6巻の表紙は300歳のおじいちゃんです。何を言っているのか分からないと思うでしょうが、読めばわかります。この機会にぜひ読んでみてはいかがでしょうか。

以上、「EMOFUL」第2回となります。最後までお読みいただきありがとうございました。次回以降もご愛読いただけましたら幸いです。それではまた次回。

画像出典:講談社発行「忍者と極道」電子版コミックスより

この記事の著者

エモーショナルエンジン

「Emotional Engine(エモーショナルエンジン)」とは、 ゲーム案件を中心にユーザー視点に基づいて「熱狂を科学する」プロジェクトチームです。 

ゲーム市場をはじめとしたレッドオーシャン化が進んでいる業界において、アイレップが得意としてきたロワーファネル(獲得領域)だけでは不十分な時代が訪れています。 ファンの愛着を醸成するミドルファネルからアッパーファネルの攻略と、そのファンの熱量を可視化することが重要になっていると考えます。 

そこで私たちは、施策を通じてファンの醸成をしていくミドルファネル攻略を主軸とした体制を整えました。 長年データマーケティングで培ってきた知見を活かして、プロダクトの特性やファンの属性を定量的に導き出して効果検証を行い、最適なクリエイティブをご提供します。

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