【アプリ×iOS14】広告配信への影響とアプリ状況に応じたCV評価方法選定のススメ

2022.03.23

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2021年4月にiOS14.5がリリースされてから約1年が経ちますが、広告の評価方法がわからずiOS広告配信を停止したり、Androidに予算を寄せたりと、場当たり的な対応をされている方もいらっしゃるのではないでしょうか。そうした対応は、ときに iOSユーザー獲得の機会損失を招く恐れがあります。だからこそ、仕組み・対応内容を正しく理解すること、そしてアプリ状況に応じた最適な評価方法を選定し、精度の高い成果判断をおこなうことはとても重要です。本記事では、アプリ状況に応じた評価方法をお伝えします。

iOS14アップデートとは

Appleは2020年9月16日、最新OSとなるiOS14をリリースしました。

このアップデートによって、サイトトラッキング防止機能であるITPが、SafariだけでなくiOS14環境下で動作するブラウザ(Google Chrome、Firefox等)もすべて対象となったり、IDFA※1の利用がデフォルト不可に変更になったりと、データ利用に大きな制限がかかることとなりました。

その後、アプリ内でポップアップを表示させユーザーにIDFA取得の許諾を得る仕様は、2021年4月26日にリリースされたiOS14.5より実装されました。これにより、アプリケーションごとにIDFAの利用をする場合はATT※2フレームワークの実装が必須となり、データ利用のハードルがさらに高くなりました。同時に、ATTにてIDFA取得を拒否したユーザーの広告効果計測や、ターゲティング広告配信などが不可となりました。

※1:IDFA(Identifier for Advertisers)
Appleがユーザーの端末にランダムに割り当てるデバイスIDで、個人情報を明らかにすることなくユーザーの計測と識別に使用されます。IDFAはユーザーデータを匿名化するため、広告主はユーザーのプライバシーを保護しながらアプリ計測を実施できます。
IDFAを使って広告キャンペーンへのユーザーエンゲージメントを計測し、広告経由のインストールを高い精度で確認できると同時に、広告配信に活用することも可能です。

※2:ATT(App Tracking Transparency)
iOS14アップデートに伴い、広告トラッキングの許諾はATTシステムによって管理されるようになりました。アプリとウェブサイトをまたいでトラッキングする目的でユーザーのデータを収集し、サードパーティと共有する場合、アプリ開発者はATTフレームワークの実装が必須となります。
ユーザーがアプリによるトラッキングに自らオプトインしない限り、IDFAの取得を含み、ATTはクロスWebサイトおよびクロスアプリトラッキングを許可しません。UX機能の設計時にユーザーの許諾フローを念頭に置くことで、オプトイン率を最大限に高め、ユーザーに必要な情報を提供することができます。

iOS14アップデートに伴うアプリ広告配信への影響

計測環境の変化

SKAdNetworkの登場
これまでアプリ広告配信では、IDFAを用いた計測がメインとなっていました。今回のiOSアップデートによりIDFAの利用がデフォルト不可になったことで、計測において多大なる影響を受けるのは、MMP※3とAPI連携をしているメディア(Google/Facebook/Twitter)です。これらは基本的にIDFAのみをキーとして広告効果の紐づけをおこなっていたため、IDFAが利用できなくなったり、IDFA取得母数が少なくなったりすることで広告配信に大きな影響を与えます。

そのため、新たな計測方法としてAppleからSKAdNetworkという「プライバシーに配慮したトラッキングツール」が提供されています。SKAdNetworkでは、個人が特定されないようユーザーレベル・デバイスレベルでのデータを削除した上で広告掲載媒体やアドネットワークにCVデータが送られることになります。

※3:MMP(Mobile Measurement Partner)モバイルアプリの広告効果計測ツールのことを指します。代表的なツールはAdjust・AppsFlyerで、アプリのインストール計測に加えアプリイベントやアトリビューション測定も可能です。

SKAdNetworkの問題点
SKAdNetworkの計測は、ユーザーのプライバシー保護の観点から多数制限があります。そのため、従来のIDFA計測を100%代替できるものではありません。以下が制限内容の一例です。

・計測対象となる広告配信面
SKAdNetworkを導入しているアプリ面のみ計測対象となり、Web面は計測不可となります。掲載先が多岐にわたるアドネットワークでは導入率の把握が難しく、計測漏れが発生する可能性が高いです。

・データ反映遅延
SKAdNetworkは独自のタイマー機能を持っており、媒体へのデータポストバックは従来と比較し大幅に遅延します。そのためリアルタイムでのCV成果把握が困難な状況です。加えて、インストールの計測とその後のイベントデータのポストバックは1回のみとなっており、インストール後の継続的なLTVの可視化やイベントデータの分析はできません。

iOS14.5以降のCV評価方法

iOS14アップデート後、CV指標はSKAdNetwork・IDFA・プロバブリスティック(MMPモデリングCV)・メディアごとのモデリングCVと多岐にわたり、成果判断が複雑化しています。今後CV評価方法をどのようにすれば良いのか、考え方を紹介します。

アプリ状況にあったCV評価方法の選定を
計測環境の大きな変化に伴い成果評価手法も複数存在しますが、ご担当のアプリ状況や広告配信をおこなっている媒体によっても対応は異なります。適した評価方法を選定しないと精度の低い評価となり、マーケティングの方向性を見誤る可能性もあります。闇雲に考え方を取り入れるのではなく、ご担当アプリではどのような評価方法が最も適しているか、検討することが大切です。

CV評価方法詳細
実際にどのように配信結果を評価していけば良いのか、一例を紹介します。

1.SKAdNetwork評価の採用
ご担当のアプリがSKAdNetwork数値を評価していなければ、ぜひ評価の採用をご検討ください。数値確認自体に難しいステップはなく、Adjustは「データキャンバス」、AppsFlyerは「SKAdNetworkオーバービュー」にて確認が可能です。

2.補正値を用いた評価方法
■ATT承諾率を活用したCV数補正※4
ご担当アプリと広告配信先アプリのATT承諾率が判明していれば利用可能な方法です。
現在計測可能なのは、ご担当アプリのATTを承諾かつ広告配信先アプリでもATTを承諾したユーザーとなります(下図の①領域)。その他の②③④に関しては正しく評価ができていない領域となります。

※4:本章で算出しているユーザー割合や補正CV件数はすべて推定値となります。

(図1:正しくCV評価できていない領域)

ここで、②③④領域も評価をするためにご担当アプリ・広告配信先アプリのATT承諾率を用います。ご担当アプリの承諾率が40%、広告配信先アプリの承諾率が42%※5で実成果件数が2件だった場合を例とします。①②③④全体のユーザーを100%とすると、①に含まれるユーザーはご担当アプリATT承諾率40%×広告配信先アプリATT承諾率42%=16.8%分となります。また、②③④に含まれるユーザーは100%-16.8%=83.2%となり、約9.9件分となります。

実際に計測できたのは2件ですが、ご担当アプリと広告配信先アプリのATT承諾率を用いて算出し直すと12件に補正されることとなります。

※5:一般的には広告配信先アプリのATT承諾率は開示されておりません。広告配信先アプリジャンルのATT承諾率を参考値として引用することは可能です。
参照:AppsFlyer「iOS 14とATTに関する統計レポート」

(図2:補正CV数算出)

■過去数値比較による算出
SKAdNetwork数値の評価採用が不可の場合や、広告配信先のATT承諾率が不明な場合に有効な方法です。また、iOS14アップデート以前の配信結果との比較をおこなうため、2019年から広告配信を実施していることが望ましい手法となります。

例として、2019~2021年にて以下のようなインストール数推移をした場合を想定します。

(図3:3年間のOS別月次インストール推移)

iOSの数値推移を見ると、2020年10月以降広告経由でのインストール数が100件から40件に減少していることがわかります。広告経由のインストール数推移のみを追っていると、iOS広告配信のパフォーマンスが悪くなったという考えに陥りがちです。
しかしここで考慮しなければならないのは、2020年9月のiOS14アップデートによりインストール数の計上方法が変わったことです。ご担当アプリと広告配信先アプリの両方、もしくは片方でATT非承諾によりIDFAが取得できなかったユーザーがインストールした場合は、オーガニックに計上されるようになりました。

そのため、2020年10月から60件増えているように見えたiOSオーガニックインストール数は、IDFAが取得できなかった広告経由でのインストール60件がプラスで反映されている状況です。このような見方ができれば、iOS広告配信のパフォーマンスは落ちていないことがわかります。

iOSの広告配信成果を過小評価しないためにも、iOSのインストール数に関しては広告経由、オーガニック経由、トータルの推移全てを注意深く見ていく必要があります。

まとめ

このように、iOS14アップデートにより計測環境は大きく変化し、従来の評価方法は通用しなくなりました。アップデート内容やSKAdNetworkの仕組みは複雑ですが、ひとつひとつ内容を理解し、適切な対応を取ることで精度の高い成果判断が可能となります。

iOSインストール計測ができなくなってきている実感はあるものの、よくわからず放置してしまったりiOS配信を停止したり、Androidに予算を寄せるような場当たり的な対応はiOSユーザー獲得の機会損失を招きます。

仕組み・対応内容を正しく理解し、アプリ状況に応じた最適な評価方法を選定することで、ご担当のアプリユーザー拡大に活用していただければ幸いです。

本記事について、少しでもご興味をお持ちのかたは、ぜひお問い合わせください。

この記事の著者

野口 遥花

デジタル広告代理店にて主にアフィリエイト広告分野の営業・メディアセールスを担当したのち、2019年アイレップに入社。現在はストラテジストとして、アプリ領域を中心に金融や通信業界、BtoBなど業界を問わず幅広いメディアの運用・コンサルティングを務める。社内向けアプリ領域研修の立ち上げメンバーとして、アプリ領域の情報・ナレッジ集約なども担う。

趣味:リアル脱出ゲーム、太鼓の達人
特技:絶対音感があるので、聴いたことがある曲はピアノで弾ける
ここ最近の癒し:YouTubeで「もちまる日記」の動画を見ること

デジタル広告代理店にて主にアフィリエイト広告分野の営業・メデ...

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