リスティング広告で成果を創出するためには、自動入札の導入が必須になっています。そこで本記事では、自動入札の基礎から導入方法までをわかりやすく解説します。
自動入札とはどのような機能なのか?
自動入札とはリスティング広告の入札を自動でおこない、目的に応じた成果を最大化/最適化する機能です。「オークションが発生するたびにCVR(Conversion Rate)を予測」し入札価格に反映させています。
(図1:予測CVRが入札単価を決定する計算式)
また、予測CVRは媒体社が所持している膨大なデータをシグナルとして用いて算出しています。自動入札は、参照できるシグナルの数が手動よりも圧倒的に多いため、商品を購入する可能性の高いユーザーが検索した場合には高い入札をするなど、精度の高い入札が可能になります。
(図2:自動入札が参照するシグナル例)
自動入札の機能が最大限に活用できる導入方法を3ステップで説明します。
ステップ1:自動入札で成果を出すためのアカウント構造に変更する
自動入札は、データ量が多ければ多いほど予測CVRの精度が高まり成果が最大化されます。自動入札の導入グループ単位で可能な限り多くのコンバージョンが発生するアカウント構造に予め変更しておきましょう。また、広告グループが細分化されている結果、コンバージョンも細切れになっている状況であれば、可能な限りグループを統合して、自動入札側にインプットするデータの量を増やします。
(図3:アカウント構造変更例)
ステップ2:データを蓄積する
自動入札設定時の学習期間目安
機械学習アルゴリズムが十分なデータに基づいて入札単価を設定できるようにし、最大限の成果を得るには、過去 30 日間にGoogle 広告は 30回、Yahoo!プロモーション広告は50 回以上のコンバージョン獲得が推奨になります。コンバージョン数が多ければ多いほど、学習制度が高まり、また学習完了までの時間も短くなります。
一方、推奨コンバージョンに満たない場合においても自動入札が機能し成果が大きく改善する例もあり、過去30日のコンバージョン数が15件程度であっても成果改善につながったケースもあります。自動入札の精度は日進月歩で機能改善していると想定され、データインプットの量が推奨数に満たない場合でも自動入札の導入の検討余地はあります。
出典:Google 広告ヘルプ「スマート自動入札について」
出典:Yahoo!広告ヘルプ「自動入札タイプ別の設定条件について」
(図4:自動入札導入目安になるコンバージョン量)
コンバージョンが不足している場合の対処/マイクロコンバージョン設定の検討
ビジネスモデルによってはコンバージョン数が少なく自動入札導入目安になるコンバージョン数を担保することが難しい場合もあると思います。その際は、例えばカートページへの到達ユーザーをコンバージョンに設定し、人為的にコンバージョンを増やしデータインプット量を増やします。当社事例においてもマイクロコンバージョンの設定による成果改善例があります。自動入札導入後、うまく機能してきた場合は、マイクロコンバージョンの設定を解除し、通常コンバージョンの設定に戻すことも検討してください。
上限CPC(Cost Per Click)の設定
媒体社の推奨としては、自動最適化が制限されるのを防ぐために設定しないことが推奨されています。しかし、特に学習期間において、自動入札で設定されたCPCが手動時に比べて著しく上昇することがあり、且つその特定キーワードが配信コスト全体との連動性が高い場合は、上限CPCを用いてコストコントロールを実施することも検討余地があります。
部分一致キーワードの設定ボリュームの影響
手動では発見することのできないクエリを発見し入札をかけるため、部分一致キーワードが多い広告グループのほうが成果改善の余地があります。部分一致キーワードの登録数を増やし、新たなターゲットを発見していくという意識を持つことが重要です。
ステップ3:自動入札を導入し成果をモニタリング
遡及コンバージョン(戻りコンバージョン)を考慮すること
自動入札は遡及コンバージョンを考慮して入札をするため、短期間で成果を評価すると成果が悪化しているようにみえることがあります。リスティング広告ではクリックが発生した日にコンバージョンが遡ってカウントされるので、過去データのコンバージョン数が増えることが一般的です。そのため、自動入札の成功可否は評価期間を長くして評価する必要があります。遡及コンバージョンは30日間発生しますので正確な評価は30日以上前のデータで実施することになります。
入札変更記録のススメ
自動入札導入直後は特に成果の変動幅が大きくなりますので、毎日数値確認することが重要になります。その際、いつ、どのような変更を、なぜ加えたのかを記録し、その結果、翌日以降の数値変動にどのような影響があるのかを確認していきます。
マッチタイプ別コンバージョン獲得構造の変化をモニタリング
自動入札はクエリ単位の入札に対応できるため、基本的には部分一致キーワードからのコンバージョンが増加する傾向を示します。部分一致キーワードからのコンバージョン数が増加しているか、効率悪化につながっていないか、をモニタリングします。
典型的な数値変動例
以下は自動入札と手動入札での典型的な数値変動を表した図です。自動入札はCPCとCVRが手動入札に比べ高くなり、結果としてコンバージョン数、CPA(Cost per Acquisition)効率共に改善しています。自動入札が予測CVRに基づいて高い入札価格で入札をした結果改善していると考えられます。
(図5:自動入札と手動入札での典型的な数値変化)
手動でのチューニングの余地
自動入札導入後においても手動入札での改善余地はあります。以下がその例になります。
・キャンペーンに適した目標CPAに随時変更
実績CPAが目標CPAと大きく乖離した場合、目標CPA変更も視野に入れてください。基本的な考え方としては以下図の通りです。
(図6:自動入札導入後の数値変動と目標CPAの設定)
・クエリ精査
自動入札導入後はクエリ量が増大します。その中には明らかに成果が悪く且つ改善見込みが薄いだろうと想定されるクエリも発生しますが、自動学習でその判断がされるまで時間を要してしまい、無駄なコストが発生してしまう場合があります。明らかに提供しているサービスが異なるクエリで入札が強化されている場合などがその例です。そのため、クエリ精査の頻度を上げて対応する必要があります。
・重要キーワードの掲載順位が下がっている場合
重要キーワードの掲載順位が下がっている場合、なにを優先させるかで対応が分かれます。1位掲出などブランディング観点も含めて掲載順位を優先させる場合は手動に切り替えて個別入札単価で対応します。また当該キーワードの掲載順位が下がってしまうことで成果インパクトが大きい場合は、一時的に手動に戻し個別入札を実行します。その後、自動入札の挙動安定をみながら再度、当該キーワードにも自動入札の導入を検討してください。
まとめ
今後ますます、自動入札を前提とした戦略が求められます。自動入札を導入するか否かという議論ではなく、自動入札の癖を分析し、その機能を最大化させるという視点からアカウント改善に取り組んでいくことが重要だと考えられます。
この記事の著者
DIGIFUL編集部
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