(当社アナリティクスソリューションチーム、データアナリストの内山恵美と松山隼人)
アナリストが架空の企業を題材に解説
「Domo」の導入から活用まで
ECサイトのモデルケースを紹介
(企画:内山恵美、松山隼人)
テクノロジーの発展により、企業が扱う情報の種類や量が増えたデジタルマーケティング。データの利活用が近年注目されていますが、各部門が集めたデータを集約する仕組みが整っておらず、俯瞰的な分析ができていない企業はまだまだ多いとみられます。そこで登場するツールが、データの収集や分析などを手助けする「ビジネスインテリジェンス(BI)」です。BIツールはデータの一元管理を容易にし、CMO(最高マーケティング責任者)らによる企業の意思決定を一層促進。また各部門や担当者が集計したデータの多角的な分析が簡単になり、デジタルマーケティングを統括する責任者が今まで以上にデータを有効活用できるのです。
データの種類や量を増やしたり、集客を促す手段にSNSやオウンドメディアなどを加えたりすれば、すぐにデジタルマーケティングが推進できるわけではありません。現場の責任者が正確にデータを集め素早く関係部門へ周知。そしてデジタルマーケティングを担う担当者らがさまざまな角度から分析して初めて、デジタルマーケティングを推し進めることができるのです。つまり組織やデータの連携・統合がますます重要になるということです。これらを実現させる手段として、株式会社アイレップが掲げる「統合デジタルマーケティング」ではBIツールが有効です。認知から購買までのプロセス(ファネル)を細分化し、各ファネルで実施した施策などに関する数値を部門ごとに集計。そして集約したデータをマーケティング担当者らが俯瞰で捉え施策につなげる統合デジタルマーケティングは、この連携を前提にPDCAを回すためBIツールが欠かせません。
BIツールの特徴は主に二つ。データの「集約」と「可視化」です。ユーザーによる設定の下、各部門が蓄積したさまざまなデータを自動的に集約し、リアルタイムでそれらを管理画面に可視化します。企業が扱う複数のシステムからデータを抽出し、変換・加工してデータベースを構築するプロセスなどがBIツールで容易になるのです。また複数のデータを一目で把握し分析しやすくするため、情報を表示させるダッシュボードのカスタマイズも柔軟です。このようにデータの共有などが効率的に行えることから、デジタル広告を扱う担当者や販売管理を行う担当者らが、現場レベルで互いのデータを活用することもできるのです。
「Domo」を使い統合デジタルマーケティングを実践
では実際に、ドーモ株式会社(東京都渋谷区)が提供するビジネス管理プラットフォーム「Domo」を用いて、統合デジタルマーケティングを実践しましょう。同社販売パートナーのアイレップでは、ドーモ社が実施する「Domoサービスコンサルタント認定」の資格を社員2人が取得。これは、顧客のプラットフォーム導入を成功に導くために必要となる知識や能力を、パートナーが保有していることを認定する資格で、データ基盤の構築をサポートする「テクニカルコンサルタント」と、課題の抽出や施策を考える「ビジネスコンサルタント」に分かれています。以降、弊社アナリティクスソリューションチームのデータアナリストで、ビジネスコンサルタントの松山隼人が、架空の企業を題材にデジタルマーケティングを実践。課題の抽出や施策の分析などを解説します。
(データの分析などについて解説する松山)
架空企業の設定
題材はカー用品の販売を行う小売業者です。ECサイトでの売上額は近年減少傾向に。また18年度の売上額目標は前年度の約15億円で、18年度上期(4~9月)の売上額が前年同期比で下回っているのが現状です。サイトに関わる部門間のデータを連携できておらず、デジタルマーケティングを統括する責任者らの意思決定に時間がかかっていることがDomo導入の理由です。また統合デジタルマーケティングを進めるに当たり、(図①)の重要業績評価指標 (KPI)などを分かりやすく可視化することも導入理由の一つです。
(図1:KGI/KPIの設定)
データ基盤の構築
まずはデータ基盤の構築を解説します。各部門のデータ基盤とDomoをひも付け、リアルタイムのデータが供給できるよう設定。データの収集から出力までを自動化することによって、責任者らによる分析や意思決定が素早くできる仕組みを作ります。企業に散在した異なるデータをつなぎ合わせる技術に加え、サービス内にデータの抽出・変換・書き出し処理の機能を持ち合わせるDomo。これについてテクニカルコンサルタントの内山は「データをつなぐための主要コネクターが600種類以上あり、複雑なプログラミングが不要。このため基盤構築に関するシステム担当者の作業時間が短縮できる」と強調します。さらに「情報の可視化に必要なデータの変換処理は、デジタルツールに疎いビジネスユーザーでも簡単に操作できる」と説明しています。また内山はDomoに実装されているチャット機能「Buzz(バズ)」に言及し、「トラブルなどについてシステム担当やデータ分析担当がやり取りする際、電子メールの画面や他のアプリケーションを開く必要がない。このためDomo内で全てのコミュニケーションが完結し管理もしやすい」などと他の長所についても語っています。
売上額などの現状把握
ではDomoのダッシュボードを用いて具体的に数値を把握します。(図②)によると、18年度上期の売上額は6億2,360万円で、売上額達成率は前年同期比で89.1%。17年度上期の売上額は7億円だったため、7,640万円下回っていることが分かります。目標の15億円を達成するには、下期の売上額が8億7,540万円以上となる計算です。
(図2:売上額の推移)
次に顧客数などの数値をグラフ化し、既存顧客と新規顧客を軸にデータを分析します。(図3左図)に注目してください。既存顧客は18年度上期で9,270人となっており、17年度上期の9,240人と比べ30人増加とほぼ横ばい。一方、新規の顧客数については、18年度上期で2,730人。前年度上期は3,260人だったため、530人も減少していることが分かります。ECサイトの規模が大きく売上額などの管理が複数部門にまたがる企業では、データの集約に時間がかかります。しかし各部門とDomoを連携するとリアルタイムで合算データの把握や分析が可能になるため、デジタルマーケティングを統括する責任者が今まで以上に早く意思決定することができるのです。
(図3 左:顧客数の推移 右:客単価の推移)
一方、客単価の増減はどうなっているでしょうか。(図3右図)を見ると、18年度上期では客単価の平均は5万2,000円。グラフからはほぼ横ばいで推移していることが分かります。客単価平均が5万6,000円の17年度上期と比較すると約7%マイナスで、4,000円も減少しています。
顧客数の分析と同様、客単価の内訳をさらに掘り下げましょう。ダッシュボードに「既存顧客」と「新規顧客」のデータを表示させると、俯瞰したデータ分析が可能になります。(図4左図)によると、既存顧客に関する18年度上期の客単価平均は5万4,600円。また17年度上期の客単価平均は5万7,700円で、前年比で3,100円の減少です。一方、新規顧客の場合では、18年度上期の客単価平均は4万9,400円。17年度上期の客単価平均は5万4,300円のため、前年比で4,900円減少したことが把握できます(図4右図)。データの組み合わせの数だけ分析の切り口があるため、データを速やかに並べて可視化できるDomoはアナリストにとって必須です。
(図4 左:既存顧客における客単価の推移 右:新規顧客における客単価の推移)
18年度上期の実績について、(図5)を使い整理します。17-18年度上期を比較すると、既存顧客は30人増加し客単価は3,100円減少しました。一方、新規顧客は530人減り、客単価は4,900円も減少。つまり下期で客単価の高い新規顧客の数を伸ばす必要があるとの結論に至りました。このようにDomoは、データアナリストだけではなく一般のビジネスユーザーも使うことを想定して作られているため感覚的に操作ができます。このためデータの扱いに不慣れな人にとっては、特に強い武器となるでしょう。
(図5:KGI/KPI前年度比較まとめ)
デジタル広告などの施策分析
最後は施策の分析について解説します。18年度上期の客単価(既存顧客と新規顧客)は毎月約5万2,000円とほぼ横ばいのため、下期も同額で推移すると仮定。その上で課題となる新規顧客獲得に向けた施策を考えると、18年度下期の売上額が8億7,540万円超で通年の売上目標達成となるため、下期では、新規顧客と既存顧客を合わせた顧客数が1万6,826人必要になります。上期の既存顧客数がほぼ一定で推移していることを踏まえ、下期の顧客数を9,270人と推定。この場合、下期で新規の顧客数を7,556人獲得しなければならない計算となります。
(ビジネス管理プラットフォームについて語る松山)
獲得施策の方法はさまざまですが、ここでは弊社が注力するデジタル広告を題材にします。(図6)にならい、ECサイトへのアクセス数やその経路などに関するデータをダッシュボードに一覧表示させましょう。これにより配信媒体などの良しあしが一目で把握可能になるため、割り当てられた広告費の適切な予算配分が感覚的にも論理的にも知ることができるようになります。客単価を上げる施策では、サイトに集まったデモグラフィックデータ(性別や年齢、所得、職業など、その人がもつ社会経済的な属性に関わる情報)から高単価の顧客グループをアクセス解析部門などが抽出。そしてデジタル広告を手掛ける部門がそれに類似するターゲットへ広告配信するなどして単価の引き上げを狙います。もちろん単価を変えずノンターゲティングで顧客数だけを伸ばす場合もあります。具体的な効果検証は割愛しますが(図表⑥左図)によると、インターネット広告会社Criteoのリターゲティングを使った広告配信が客数アップに貢献しているため、広告費の予算配分を同社に多く割く方法が良いとみられます。
(図6:流入経路別ユーザー遷移数比較など)
まとめ
企業に散らばった大量のデータを集約し、分析しやすい状態に可視化するBIツールは、一般のビジネスユーザーでも手軽に情報や分析結果を閲覧できる特徴があります。またデータを通して組織をつなげることから、統合的にデジタルマーケティングを進める上で必要不可欠となっています。BIツールは俯瞰したデータの把握や分析、素早い意思決定を可能に。さらに現場レベルでは各部門双方向のやり取りを促し、インタラクティブな施策を導きます。このデータや組織の連携強化は、統合デジタルマーケティングを展開する上で非常に重要です。意思決定にデータを有効活用すべきと考える企業が増えていますが、データの収集や分析などの体制に課題を抱える幹部や経営者は少なくありません。しかしBIツールの導入は、こうした企業の問題を根本から解決するのです。
※図表はイメージです
この記事の著者
DIGIFUL編集部
「DIGIFUL(デジフル)」は、株式会社Hakuhodo DY ONEが運営する「デジタル時代におけるマーケティング」をテーマにした、企業で活躍するマーケティング担当者のためのメディアです。
当社がこれまでに得たデータや経験から、具体的事例・将来展望・業界の最新注目ニュースなどについて情報を発信しています。ニュースやコラムだけでなく、日常業務や将来のマーケティング施策を考えるときに役立つダウンロード資料や、動画で学べるウェビナーコンテンツも随時追加していきます。
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