トラッキング規制・プライバシー保護規制への対応策~トラッキング規制後のデジタルマーケティングとは~

2024.08.09

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前回の記事「トラッキング規制の正体とは ~プライバシー保護に向けたAppleとGoogleの取り組み~」では、インターネット上における「ユーザーのプライバシー保護」の潮流の中で、AppleとGoogleが取り組むトラッキング規制の内容についてご紹介しました。

AppleとGoogleによるプライバシー保護規制・クッキー規制の影響を受けて、広告プラットフォーマー各社は様々な代替手法を開発しています。今後デジタルマーケティング施策を実施する上で、これらの代替手法を理解し、活用していくことは非常に重要になります。本記事では、その具体的なソリューションについて解説していきます。

なお、ポストクッキー対策に関するブログ記事一覧は、こちらにまとめています

※本記事はDAC Solution Serviceより転載しています
元記事:https://solutions.hakuhodody-one.co.jp/blog/tracking-regulation-solution

トラッキング規制への対応策の方向性

クッキーやモバイル広告IDが規制されていく中で、企業はどのような対応策を取れるのでしょうか。その方向性は、二つに大別されます。

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- 方向性①:個人をターゲティングしない新しい手法の導入

一つ目は個人をターゲティングしない新しい手法を導入する方針です。これは個人レベルでの識別を必要としない手法、または今回から規制されるクッキーを始めとした識別子をそもそも必要としない手法に注力する方針であり、Googleが開発中のPrivacy Sandboxやコンテキシャルターゲティング等が該当します。

▼関連ページ
Privacy Sandboxとは【用語集】

- 方向性②:規制を受ける機能・技術の代替手法の構築

二つ目は規制を受ける機能・技術の代替手法を構築し、オーディエンスターゲティング・計測を継続する方針です。これはクッキーやモバイル広告IDによらない何らかの手段で個人を識別し、ターゲティングと計測を実施する方法であり、プラットフォーマー各社が提供するクリックID連携やアドバンスドマッチの技術が該当します。

次の章からは、それぞれの方向性の具体的な手法を紹介します。

方向性①「個人をターゲティングしない新しい手法の導入」の具体的な手法

まず一つ目の「個人をターゲティングしない新しい手法の導入」では、代表的な手法として、「コンテキシャルターゲティング」「privacy sandbox」「SKAdNetwork」の三つがあります。
一つずつ順番にご紹介します。

- ①コンテキシャルターゲティング

これは特定の面を指定した広告配信のことを指しており、広告配信を行うメディアの内容に目を向けたターゲティング手法です。これまでも活用されてきた手法ではありますが、昨今のクッキー規制を受け、注目を集めています。以下3つの方法に分解することが可能です。

  • コンテンツターゲティング
    webページの内容を解析し、カテゴライズした面に向けての広告配信

  • コンテキストターゲティング
    webページのキーワードや画像などをAIが自動で解析し、文脈に沿った広告の配信

  • キーワードターゲティング
    webページ内に含まれるキーワードを指定した広告配信

当然ながらこれらの手法においては、クッキーやモバイル広告IDを活用していないため、Apple、Googleの規制の影響を受けません。

- ②Privacy Sandbox

これはGoogle(Chrome)が提供を予定しているクッキーを代替するAPIです。複数の機能が含まれていますが、主要なものとしては「conversion measurement API」「FLoC(Federated Learning of Cohorts)」(※1)、「PIGIN(referring to private interest groups, including noise)」等があります。

  • conversion measurement API
    ユーザーが広告を踏んだかどうか、最終的にコンバージョンに至ったかどうかといった情報を広告主に知らせる機能

     

  • FLoC(※1)
    ユーザーの閲覧情報を元に、機械学習を活用してユーザーを一定の興味関心グループに分類する機能

  • PIGIN
    各ユーザーのブラウザが先ほどFlocで作成された興味関心グループのどこに所属するのかを判別し、そのユーザーが所属すると予想される興味関心グループをブラウザに追跡させる機能

このように企業側が個人を識別できない形でのターゲティングを実現しているのが、privacy sandboxの機能の最大の特徴です。このAPIは現在まだ開発途中であり、今後の発表にも注目をしていく必要があります。

※1:「FLoC」は2022年1月にGoogle社より開発休止の発表があり、これに代替する技術「Topics」の発表がありました。詳しくは、他ブログ記事(ゼロ知識の人でもわかる!Googleが提唱するCookieレス対策「Privacy Sandbox」とは?)をご参考ください。

- ③SKAdNetwork

これはAppleが提供する機能で、モバイル広告IDに代わって、アプリ領域における計測を実現します。

具体的な仕組みとしては、まず各媒体社はAppleに登録を行い、広告主の署名入りの広告を配信し、その広告からアプリインストールが行われた場合、アプリの初回起動時に媒体情報をApple側に送信します。その後インストールが一定の閾値や期間を過ぎればインストールの結果およびアプリ内でのイベント情報がAppleから媒体へ個人を識別できない形で共有されます。

これまで広告主が直接認識することができたモバイル広告IDの識別をSKAdNetwork内で処理し、ユーザーのプライバシー保護を担保しつつ従来の計測に応えるためのツールです。

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方向性②「規制を受ける機能・技術の代替手法の構築」の具体的な手法

二つ目の「規制を受ける機能・技術の代替手法の構築」の代表的な手法としては、「クリックID連携」「アドバンスドマッチ形式」「サーバー間連携方式」「データクリーンルーム形式」があります。各プラットフォーマー毎に提供するソリューションの内容は異なりますが、主要なものを一般的な仕組みとともにご紹介させていただきます。

- ①クリックID連携

これはクリックした広告、つまりWebサイト流入元の情報を遷移先URLにパラメータとして付与し、その後Webサイト上でCV情報等とまとめて1st パーティクッキーとして取得するというソリューションです。本来であれば3rd パーティクッキーを利用する必要がある流入元の判別を1st パーティクッキーで代替しており、AppleやGoogleによる3rd パーティクッキー減少の影響を回避することが可能です。

注意点としてはあくまでタグ(JavaScript)による1st パーティクッキーを利用した方法のため、AppleOS上でのブラウザでは無効化されるリスクが伴います。

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- ②アドバンスドマッチ形式

これは企業サイト上でコンバージョンが発生した際に入力された個人情報等のCRMデータをキーにして、プラットフォーマー側でユーザーを特定し流入した広告を判別する手法です。コンバージョンの際に入力されたユーザーの個人情報をタグで収集、暗号化して広告出稿先のプラットフォーマーに送信します。その後プラットフォーマー側でサービス登録情報を基にユーザーマッチングを行い、そのユーザーがどの広告を踏んだのかといったデータを突合させ広告効果を測ります。CRMデータをユーザーの特定に活用するためクッキーの利用をしておらず、また個人情報を送付した場合にはクッキー以上に正確な効果測定を行うことができます。

注意点としては計測精度が向上する一方、広告主サイトの仕様に合わせたデータ収集タグの書き換え対応と、個人情報連携に際して必要な手続きを行う必要があります。また、あくまでタグによるCV情報の収集が軸となっておりますので、ITPによるクッキーの利用制限は少なからず受けることが想定されます。

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- ③サーバー間連携方式

これは概ね先ほどのアドバンスドマッチングと仕組みは同じですが、大きく違う点として企業サイト上におけるCV情報や入力された個人情報等の収集をタグではなくサーバーで直接送信しております。これによってアドバンスドマッチ形式の際に懸念であった、ITPのJava script発行、つまりタグ発行のクッキーが一定期間で無効化されてしまうリスクを回避することができます。

注意点としてはデータ取得からAPIリクエストまでの一連のプログラムの構築と、必要に応じて情報を取得するためのサイトの仕様変更が求められるため実施ハードルが高いソリューションです。
また、補足になりますがデータ連携に際しては企業側サーバーとして、パートナーソリューション(Tealium、Shopify、TreasureData等)を活用することができる場合もあります。

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- ④データクリーンルーム形式

データクリーンルームとは各プラットフォーマーが集積した広告データに、企業がアクセスできる環境のことを指します。ただしこのデータクリーンルームにおいてはプライバシー保護の観点から、ユーザー個人レベルのデータを企業が見ることはできません。あくまでも統計値としてデータ分析のアウトプットを得られるソリューションとなります。

利用方法としては、広告効果の可視化、また一部データクリーンルームでは外部データを掛け合わせた集計、およびそこから作成されたセグメントの広告配信への活用などがあげられます。
 注意点としては、まだ開発中のプラットフォーマーが多く、利用環境が整備されていないケースも多いです。

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まとめ

今回の記事をまとめると、以下のようになります。

クッキーやモバイル広告IDの活用制限に対応していく方向性は大きく二つあり、それぞれの代表的な対応策は、以下の通りです。

方向性1:個人をターゲティングしない新しい手法を導入する、または従前の「枠」指定の広告運用に戻す方針
 ①コンテキシャルターゲティング
 ②privacy sandbox
 ③SKAdNetwork

方向性2:規制を受ける機能・技術の代替手法を構築し、オーディエンスターゲティング・計測を継続する方針
 ①クリックID連携
 ②アドバンスドマッチ形式
 ③サーバー間連携方式
 ④データクリーンルーム形式

本記事ではプラットフォーマーによるデータ規制に対する各種対応策の概観をご紹介させていただきました。

既にAppleによるデータ規制が開始されている中で、今後Googleも2024年にクッキーの廃止に乗り出すことも考えると、データ規制に対し早めの対策を打つ必要があります

Hakuhodo DY ONEではこれらデータ規制への対応のサポートサービスを提供しています。本記事を読んで、自社の対策に対しての不明点・懸念事項などを感じられた場合には、ぜひお気軽にご相談ください。ご連絡をお待ちしております。

 

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プロフィール

石山 大揮

株式会社Hakuhodo DY ONE
石山 大揮

2021 年にDACへ新卒で入社し、企業が持つ顧客CRMデータの活用に伴うプライバシー保護にまつわるコンサルティングやデータ分析やモデル構築のサポート、CDPの営業を担当。企業に対してデータを基軸とした一気通貫の支援を行っている。

 

 

 

この記事の著者

DAC Solution Service

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