効率化最優先の常識を変えていく「越境するダイレクトクリエイティブStudio」は、どのような研究をしているのか?
TEAM JAZZは、アイレップがデジタル広告運用で培った独自のノウハウを土台に、データとクリエイティブを駆使してデジタル時代の新たなマーケティングを実践するプロジェクトです。2023年9月より、企業の統合マーケティング支援を強化する目的で新たに5つの研究組織「JAZZ Studio(ジャズ スタジオ)」を設立しました。
その研究組織のひとつである「越境するダイレクトクリエイティブStudio」は、運用型広告の成果からブランド戦略への逆上がりの示唆や、フルファネルマーケティングでの相乗効果の発揮など、「ブランド×ダイレクト」の視点から新たな成果を創り出すスキームの確立を目指しているStudioです。中心メンバーである湯浅直人と尾崎咲美、TEAM JAZZを統括する木野本朋哉に、Studio設立の背景、体制、活動内容、目標などを聞きました。
従来の境界線を越境し、ダイレクトクリエイティブ領域を拡張する
「越境するダイレクトクリエイティブStudio」が発足した背景を教えてください。
木野本:
このStudioは、ダイレクトクリエイティブ領域が将来的にあるべき形を模索し、実現することをミッションとしています。
ダイレクトクリエイティブとは、運用型広告全般で使われるクリエイティブやマーケティング手法を指します。この領域のクリエイティブを制作する際は、「整理された情報をいかにわかりやすくレイアウトしていくか」が主眼となっており、クリエイティブといいつつも左脳的なアプローチを基本とします。そのため、成果を数値で分析し、その結果をフィードバックしながら精度を高めていくことができるデジタル広告との親和性が高く、最新のテクノロジーを取り入れやすい領域でもあります。実際、近年はAIを活用してより効率化を目指す流れが加速しています。
しかし、効率化だけを追求する世界は一概によいものとはいえません。一時的には利益は増えますが、効率化な観点においてはどこかで限界が訪れます。効率化だけでは、売上の低下や顧客満足度の低下、ひいてはブランディングへの悪影響など、さまざまな弊害が出てくる可能性もあるからです。これでは、継続的な事業の売り上げ拡大にはつながりません。アイレップでは、新たなアプローチによってダイレクトクリエイティブ領域におけるこれまでの常識を変えていこうと考えています。そのために、さまざまなクリエイティブや他領域のよさを取り込み、従来の境界線を越境させることで、今あるダイレクトクリエイティブの領域をより拡張させていきたいと考えています。
その突破口のひとつが、ダイレクトクリエイティブに「ブランド」という概念を取り入れることです。ブランド広告とはコンバージョンを目的とせず、認知やイメージ向上を目的としたもので、ダイレクト広告とは異なる広告手法です。このブランド広告の芯となる「ブランド」という概念をダイレクトクリエイティブに取り入れることで、「ダイレクト」と「ブランド」の垣根を越境し、AIだけなく、人間が主となってテクノロジーを使いこなすことで、意味のあるクリエイティブを作っていく世界を目指していきたいと考えています。
おふたりのこれまでの経歴を教えてください。
湯浅:
アイレップに入社して以来、一貫してクリエイティブ部門に在籍しています。デザイナー、ディレクターを経て、現在はクリエイティブ部門のマネジメントを担当しています。2023年からUX部門を立ち上げ、現在はそのマネジメントもおこなっています。
尾崎:
新卒でアイレップに入社し、運用型広告の運用コンサルティングからキャリアをスタートさせ、メディア戦略、分析に関わってきました。その後、メディア横断R&Dプロジェクトを経て、2018年からはクリエイティブ部門も兼任することになりました。現在はクリエイティブ、マネジメント、さらにテクノロジー部門において、クリエイティブツールの企画や、AI戦略の策定などに取り組んでいます。
クリエイティブテクノロジーの取り組みにはどのようなメンバーが所属していますか?
尾崎:
中心メンバーは私と、クリエイティブ部門のWebディレクター、企画のアイデアを要件定義にまとめるUIデザイナーの3人です。
Webディレクターのメンバーは、私と同様テクノロジー部門も兼務しており、「Creative Table PINGPONG」の企画を一緒に推進しています。また、「クリエイティブAI活用プロジェクト」という別のプロジェクトにも属していて、テクノロジー領域全般に関して非常に感度が高く、さまざまな意見を起案してくれる頼もしいメンバーです。
おもに、企画する段階とエンジニアが形にしていく段階にわかれるのですが、企画段階ではWebディレクターとAI研究をおこなっているエンジニアが中心となり、アイディア出しから要件定義までおこなっています。そして、企画が固まったらエンジニアがカタチにする、というのが大まかな役割です。
こうした活動をおこなうエンジニアメンバーが15名ほど、さらにクライアント企業への提案や実装を担うクリエイティブメンバーまで含めると合わせて30名ほどが所属しています。湯浅さんは、それら全体を統括する立場にいます。
ダイレクトクリエイティブStudioが研究する3つのテーマ
「越境するダイレクトクリエイティブStudio」では、「クリエイティブテクノロジー(AI×クリエイティブ)」「ブランド×ダイレクト」「行動心理学×クリエイティブ」の3領域を研究対象としているとのことですが、それぞれどのような取り組みをしてきたか、教えてください。
尾崎:
まず、私が担当する「クリエイティブテクノロジー(AI×クリエイティブ)」についてお話しします。アイレップにテクノロジー領域を専門とする部門ができたのが3年ほど前のことです。そのタイミングで、柴山大さん(現・取締役CTO)がアイレップにジョインしているのですが、そこから当社としての開発範囲が一気に広がり、DXシステムの構築に取り組むことになりました。詳細は後述しますが、4年かけて開発したそのシステムは、AIを活用したクリエイティブワークフローシステム「Creative Table PINGPONG(以下PINGPONG)」として、2023年8月から運用を開始しています。
PINGPONGは、プランニングから制作進行までをカバーし、情報の一元管理機能やレポーティング機能を搭載しています。さらに、GPT-4を活用した「PINGPONG PERSONA」というAI機能によって、ユーザーインサイトやペルソナを読み解いてプランニングしたり、「H-AI IMAGES」という配信前成果予測による独自のスコア付けをおこなったりすることで、制作作業の効率化を促し、より人のクリエイティビティを加えることができる時間的余地を生み出します。
いま紹介した PINGPONG を中心に、これまで生み出してきた成果や価値を外に向けて発信していこうということで、AI×クリエイティブ関連の複数のプロジェクトを立ち上げ、取り組みを推進しています。
湯浅:
ふたつ目の「ブランド×ダイレクト」が取り組むべきテーマとなった背景には、運用型広告におけるクリエイティブに対する広告主の要求が大きく変わったことが影響しています。これまで求められてきたことが「とにかくユーザーを獲得することためのクリエイティブ」であったのに対し、この3年ほどで「ブランドイメージを醸成しながら獲得成果も出せるクリエイティブ」が強く求められるようになりました。
そうした要求に対して、ブランドとダイレクト、このふたつを掛け合わせたときに、われわれにどのような表現ができるのか、どのようなクリエイティブを広告主やエンドユーザーに提供できるのかについて、このStudioで日々研究しています。
ブランドダイレクトの考え方を解説した記事はこちら:「ATA(Attention-to-Action)感情トリガークリエイティブ」
みっつ目の「行動心理学×クリエイティブ」は、行動心理学や認知科学の視点から、クリエイティブによって深掘りできることを探っていこうというテーマです。
運用型広告における効率化の行き着く先は、AIを導入し、媒体そのものが自動最適化するなど、徹底的にパターン化された世界です。それらをやりきったことによる閉塞感をブレイクする突破口は、クリエイティブだと思っています。そこで、小手先のテクニックではなく、本質的に人間に刺さりやすい表現とは何か、について追究していきたいと思っています。
AIと人間が共創し、発想や表現の幅を広げていきたい
これから取り組んでみたいテーマはありますか?
尾崎:
運用型広告において、AIだけにすべてを任せるのではなく人の洞察力とAIの能力が融合することで、より効果的なクリエイティブを生み出す仕組みを作っていきたいと考えています。行動心理学の知識を活用し、生活者の気持ちを動かしていくクリエイティブを作る、ということに挑戦していきたいと思っています。
湯浅:
これまでにわれわれが培ってきた運用型広告に関する知見やノウハウにプラスして、自由な発想で企画を練り、デザインの表現を考えられるエッセンスを取り入れた取り組みを進めていきたいです。
クリエイター自身が楽しんでクリエイティブを作れば、その思いは広告主や生活者にも伝わると思いますし、きっと成果にもつながるはずです。厳しい目標を掲げながらも、その過程を楽しめるような仕組みを作っていきたいです。
どのような課題を抱えている企業に参加してほしいと考えていますか?
尾崎:
「AIやブランド×ダイレクトというキーワードに関心はあるけれど、何から着手すればいいかわからない」という企業のご担当者には、ぜひ相談いただきたいです。
湯浅:
「運用型広告のクリエイティブに課題を感じる」「新しいことに挑戦したいが、その余裕がない」というような問題意識を抱えている企業と共創し、われわれの新しいチャレンジに取り組んでいきたいと思っています。
今後の目標を教えてください。
尾崎:
アイレップは「ブランド×ダイレクト」を実現するクリエイティブをフルファネルで提案できることが、強みのひとつであると考えています。越境するダイレクトクリエイティブStudioの取り組みを通して、業界的にも先進的な研究開発や、「さすがアイレップだ」と納得いただけるクオリティのサービスを開発し続けたいですね。そして、支援させていただくクライアント企業のビジネス成果にしっかりと繋げていきたいと思っています。
湯浅:
これまで、運用型広告のクリエイティブは、獲得の受け皿でしかないという捉えられ方が主流だったと思います。今はまだ、運用型広告のクリエイティブを担当したくて業界に入る人はマイノリティだと思っていますが、そういった人がマジョリティになる世界を実現したい。私個人が設定している最終ゴールは、そこになります。
プロフィール
株式会社アイレップ
取締役
木野本 朋哉
2008年に博報堂に入社し、ストラテジック・プランニングから、制作・メディアのプロジェクトマネジメントまで、幅広くマーケティング・広告実務に従事。2015年には、外資系PEファンドに1年間出向し、M&A・PMI実務を経験。帰任後は博報堂DYホールディングスにて、グループ中期経営計画の立案・D.Aコンソーシアム・ホールディングスのTOBに携わる。2019年よりアイレップに参画し、2022年より取締役としてマーケティングサービス部門全体を管掌。また、自らが深く経営計画・事業開発に携わってきた経験から、クライアント企業の事業課題を捉えたマーケティング戦略・施策立案を得意とする。
株式会社アイレップ
湯浅 直人
グラフィックデザイナーのアシスタントを3年経験後、2013年にアイレップに入社。デザイナー・ディレクターを経て、2016年よりマネージャーに就任。プランニング・施策設計・デザイン・効果検証など幅広い領域を守備範囲とする。さまざまな商材のクライアント企業案件において、LP/バナー等のクリエイティブを起点とした成果改善を経験。現在はパフォーマンスクリエイティブ領域の責任者、およびUX領域の部門立ち上げに従事。
株式会社アイレップ
尾崎 咲美
2015年にアイレップに入社。4年間、ストラテジストとして運用コンサルティングを経験。その後、媒体R&D部隊を経て、現在はクリエイティブプランニングとマネジメントに従事。媒体と運用を熟知したロジカルなクリエイティブ分析とPDCAが強み。また、システムの開発をおこなうセクションを兼任しており、クリエイティブAI企画開発とクリエイティブのシステム開発にも携わる。
この記事の著者
DIGIFUL編集部
「DIGIFUL(デジフル)」は、株式会社Hakuhodo DY ONEが運営する「デジタル時代におけるマーケティング」をテーマにした、企業で活躍するマーケティング担当者のためのメディアです。
当社がこれまでに得たデータや経験から、具体的事例・将来展望・業界の最新注目ニュースなどについて情報を発信しています。ニュースやコラムだけでなく、日常業務や将来のマーケティング施策を考えるときに役立つダウンロード資料や、動画で学べるウェビナーコンテンツも随時追加していきます。
デジタルマーケティングの最新情報や知見を得るための信頼できる情報源の1つとしてお役立てください。
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