中長期的な態度変容効果を見込めるライブコマース【ライブコマース調査レポート(後編)】

2022.02.17

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ライブコマース視聴者の理解を目的に実施したアンケート調査結果を元に、ライブコマースによる態度変容効果や態度変容に影響を与える要素を分析しました。その分析結果と考察、そしてライブコマースの中長期的な効果について、より核心に近い発見を紹介します。前編では、アンケート調査結果を詳しく紹介しました。

▼前編の記事

 

ユーザー調査実施の背景

ライブコマースには、オンライン配信により実現できる高いライブ性・インタラクティブ性を持つことで他の施策にはないメリットがあります。

メリットが多数ある一方で、クライアント企業がライブコマースの実施にふみきれないボトルネックはやはり費用対効果でしょう。きちんとライブコマースを実施するのであれば、やはり費用はかかりますが、その費用を回収できる売上が見込めないのであれば実施に二の足を踏むのは当然です。しかし、これは短期的な売上をKPIとした施策としてライブコマースを考えているからこその懸念であり、「中長期的な効果」を期待した施策として考えると話は別です。中長期的な効果とは、ライブコマース中での視聴体験や商品説明・ブランドの理解促進が、長い時間軸で見た時にその後の視聴者の商品購入や継続購入を促すことです。

視聴者によっては、ライブコマースを商品の使用感や見た目を具体的に確かめる「情報収集の機会」として考え、後日実店舗で商品を再確認し購入を決意するかもしれません。ECサイト上でライブコマースの短期的な売上効果を見ていると、こうした後日の実店舗での売上を見逃してしまいます。また、もしもライブコマースが既存顧客のブランドへのファン化・ロイヤル化を促していれば、見るべき数値はリピート率や顧客ロイヤリティ、LTVになってきます。ライブコマースを回数を重ねておこない既存顧客をしっかりとロイヤル化させれば、ある時からライブコマースを実施すると売上が上がる、という結果にもなりうるでしょう。

つまり、ライブコマースを施策として評価する時に短期的な売上をKPIとして設定していると、その効果や価値を過小評価することにつながってしまうということです。この考え方は「ライブコマースにより視聴者が態度変容を起こしブランドへの理解や好意度が高まった」ことを確認できてはじめて実証できます。しかし、こういった態度変容の有無は定性的なものであり、計測ツールからはなかなか把握できないという課題がありました。

そこで本記事ではライブコマースによる態度変容効果や態度変容に影響を与える要素を特定し、ライブコマースの中長期的な効果について、より核心に近い発見を紹介します。

ライブコマースの効果とは? ~行動変容・効果態度効果も見込めるライブコマース~

ライブコマース視聴者の行動経験

まずライブコマースの効果を解明するために、ライブコマース視聴後に感じたことを調査しました。ライブコマース視聴者が視聴後にとったことのある行動を見ると、何かしらの購買経験があるユーザー割合は25.2%。何かしらの情報収集行動を取ったユーザー割合は31.5%。合わせて、56.8%のユーザーがライブコマース視聴後に何かしらの行動を取っている状況がわかります(図1)。

(図1:ライブコマースを見た後にとったことのある行動について)


また、ライブコマースを視聴してから購入まで至った場合のタイミングを見ると、視聴中・視聴後すぐよりその3日後以内の購入率の方が高い結果となりました(図2)。さらに、ライブコマースはその場の販売促進効果だけでなく、1週間後までは少なくとも17%以上のユーザーに残存効果があることも分かります。この結果からも、ライブコマースは短期的な効果だけではなく、ある程度の残存効果が見込めることが分かります。

(図2:ライブコマースを見た後に商品を購入した場合の購入タイミング)

ライブコマース視聴者の態度変容

次に態度変容効果をみていきます。図3はライブコマース視聴後の態度変容の結果です。アンケート調査の結果、ライブコマース視聴後に約90%の人に何かしらの態度変容(商品やブランドのことが理解できた・購入したいと思った・好きになった)が発生していることがわかります。

(図3:ライブコマース視聴後の態度変容)

具体的に見ていくと、特に商品やブランドへの理解度が向上している様子がわかります(図4)。

(図4:ライブコマース視聴後に感じた気持ちの変化)

以上の結果から、ライブコマースには短期的な効果だけでなく、残存効果を含めた行動変容効果も見込まれ、さらに商品・ブランドへの理解や好意度など態度変容効果があることもわかりました。

このような結果が得られた理由には、

 ① 双方向のコミュニケーションにより、視聴者の求める情報が提供されやすい
 ② 出演者が商品を実際に使ってみる場合、使用感が伝わりやすい
 ③ 好きなブランドのスタッフやタレントの紹介は説得力を持ちやすい

など、ライブコマースの特徴が関係していると考えられます。

態度変容効果を高めるライブコマースとは? ~狙いたい態度変容別のコンテンツ設計~

前章の調査結果から、ライブコマースは態度変容効果も見込める施策であるということがわかりました。ではどうしたらより態度変容を起こすライブコマースをつくれるのでしょうか?ここではライブコマースのコンテンツ要素を分解し、狙いたい態度変容ごとに効果のある要素を分析していきます。

※ 今回つかった分析方法:ロジスティック回帰分析
目的変数が2値で分かれる時、説明変数の値から、目的変数がどちらになるかの確率を導出する分析手法です。今回はその計算過程において検出される、目的変数の値の決定に各説明変数がどれだけ影響を及ぼしているかの影響力に着目し、ライブコマースにおいて態度変容を引き起こす要素を分析しました。

ブランド好意度が高まるコンテンツ要素は?

ライブコマース視聴後にブランド好意度が上がった人が感じたことを分析すると、「会話ができた」と感じられることが最もブランド好意度向上への影響度が大きい結果となりました。その他、「商品の説明がわかりやすかった」や、「ブランドの新作の情報が知れた」ことも影響していることがわかります(図5)。つまり、ブランド好意度を高めるためには、会話を通して情報を得られることに対する特別感・リアルタイム性を感じられることが重要であると考えられます。

(図5:ブランド好意度への影響度)

商品理解度を高めるコンテンツ要素は?

ライブコマース視聴後に商品理解度が上がった人が感じたことを分析すると、「商品の説明がわかりやすかった」の影響が圧倒的に大きくなっています(図6)。つまり、ブランド好意度の上昇にはリアルタイムのコミュニケーションが求められていましたが、商品理解度上昇については店員からの説明のわかりやすさが重要になってきている様子がわかります。

(図6:商品理解度への影響度)

購入意向を深めるコンテンツ要素は?

ライブコマース視聴後に商品理解度が上がった人が感じたことを分析すると、「使用感がリアルに確認できた」「説明のわかりやすさ」の影響が最も大きい結果がみられています(図7)。つまり、購入意向を高めるためには、店舗での接客のように、ライブコマースを通してしっかりと使用感を伝えることも重要であると考えられます。

(図7:購入意向度への影響度)

今回の分析結果から、狙いたい態度変容によって重視される項目は異なることがわかりました。つまり、コンテンツに可変要素を持たせながら企画を行うことで、意図した態度変容が生まれる、購入につながるライブコマースを生み出せる可能性があるとみてよいでしょう。

さいごに

今回の調査結果から、ライブコマースには短期的な売上増加を目指すセールスプロモーションだけでなく、商品・ブランドへの理解や好意度、商品の購買意向を高めるような広告プロモーション・CRM施策としての価値も創出しうることがわかりました。即日・短期的な売上額以外にも貢献していることを考えると、中長期効果を前提としたマーケティング戦略への組み込みも検討してみてはいかがでしょうか。

一方で、現状ライブコマースは、費用対効果が不透明なことやまだ配信者や配信知識・テクニックが不足していることからなかなか始めにくい・続けにくい環境にあります。そのため、発展途上のライブコマース施策をより効果のあるマーケティング施策にするには、コミュニケーション開発・検証手段の開発が必要です。

アイレップでは、ライブコマース企画~検証設計まで、トータルでサポートさせていただいております。「コマーサー」の育成をはじめ、キャスティング事業独自の検証スキームを用いた配信最適化~検証まで実行いたします。

クライアント企業のニーズやブランド・商材のブランド・エクイティによって様々なパッケージソリューションをご用意しておりますので、設計・実施など運用に関してもお気軽にお問い合わせください。


【スクリーニング調査概要】
・調査主体:株式会社アイレップ
・調査方法:インターネット調査
・調査対象:全国15~49歳の男女5,178人
・調査実施日:2021年9月1日(水)~9月6日(月)
 ※性年代の人口構成比に合わせて回収しています。

【ライブコマース視聴に関する調査概要】
・調査主体:株式会社アイレップ
・調査方法:インターネット調査
・調査対象:ライブコマース視聴経験のある、全国15~49歳の男女600人
・調査実施日:2021年9月1日(水)~9月6日(月)
 ※ライブコマース視聴割合・性年代の人口構成比に合わせてウェイトバックをかけています。

この記事の著者

植田 瑞季

2019年アイレップに新卒入社。ストラテジストとして放送・電子書籍・通信業界などの運用を担当。ロワーファネル向けの広告運用のほか、ミドルファネル向けの動画広告運用・配信設計も担う。2020年よりストラテジックプランナーを兼務。デジタル×マスの統合プランニングおよびコミュニケーションプランニング領域に従事。
 
趣味:ドラマ鑑賞、カフェ巡り、ジャズピアノ

2019年アイレップに新卒入社。ストラテジストとして放送・電...

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