ウェビナーレポート 業界第一人者たちが語る日本のライブコマースの未来

2022.02.18

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2021年11月11日(木)にアイレップ主催ウェビナー「ライブコマース展望ウェビナー~業界の第一人者たちが“独身の日”に徹底議論」を開催しました。各業界のさまざまな視点から、ライブコマースを実施する際に重要な考え方やノウハウ、これからの日本のライブコマースに必要な要素について議論が繰り広げられた本ウェビナー。その議論のポイントを抜粋した、ウェビナーレポートをお届けします。

出演者(画像左から順に紹介)

株式会社アイレップ 武者慶佑
株式会社KOS 菅本裕子様(以下、ゆうこす様)
株式会社ファンケル 寺西麻帆様
商品アドバイザー、ライブコマーサー、ライバー 石橋真珠様
17LIVE株式会社 村井宏海様
パロニム株式会社 小林道生様

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武者:
ライブコマース業界の第一人者の方々にお越しいただき、ライブコマースの未来を探っていきたいなと思います。MCを務めます武者慶佑と申します。

ゆうこす:
同じくMCを務めさせていただきます。ゆうこすこと菅本裕子です!本日はよろしくお願いします!

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武者:
ゆうこすさんといえば、ライブコマースの第一人者でございます!
タレント、インフルエンサー、そしてコマーサー※1もされていながら、ご自身でも「YOAN」というD2Cブランドもやっていらっしゃいます。MCとしても、コマーサーとしても語っていただきたいと思います。

※1 コマ―サー:アイレップが定義する人材の概念。インスタグラマーやユーチューバーではなく、リアルタイムにユーザーの質問やコメントに応えながら商品・サービスを自身の言葉で伝えるライブコマースに特化した配信者を指す。

中国でライブコマースが盛り上がる「独身の日」

(図1:中国独身の日流通取引額と参加ブランドの内訳)

武者:
今日11月11日がまさに「中国の独身の日」なんですけれども、中国のライブコマースの市場はどんどん伸びているんですね。
アリババの今年の売上目標は9兆円となっていて(2021年11月11日時点)、どんどん伸ばしていこうというフェーズです。その中で注目したいのが、25万ブランド参加しているなかで海外ブランドが3.1万を占めているのですが、なかでも日本が一番多いところです。日本のなかでの独身の日の位置付けや、日本で独身の日にどう取り組んでいくべきなのか、考えていきたいと思っています。

(図2:独身の日の売上と検索数)

この図は、左が独身の日の売上、右がオンラインショッピングに関するキーワードの検索数を示したGoogleトレンドのグラフです。独身の日は、ブラックフライデーやサイバーマンデーなどと比較して圧倒的に売上があるのに、検索されていない、ということが分かりますよね。ですから、独身の日とライブコマースの認知度を上げることで、オンラインショッピングを盛り上げていけるのではないかと思っています。

小林:
中国の企業や大学の取り組みからお聞きした話なのですが、そもそも日本以外の国で、リアル店舗においてリッチな接客を受ける機会はありません。一方、ライブコマースは長時間その商品に対する説明を聞いたり質問ができるというのが、中国でライブコマースが成功している理由のひとつです。また、中国の国内企業の商品に対する国民の信頼度はまだ高くないので、企業からお勧めされるよりも、KOL※2やインフルエンサーからお勧めされた方が信頼できます。第三者からの客観的な視点がコマースに繋がっていると考えられます。

※2 KOL:「Key Opinion Leader(キーオピオニオンリーダー)」の略で、特に中国の消費者の購買意志決定の際に強い影響力を持つ、なんらかの専門性を持ったインフルエンサーを指す。

武者:
信頼というのがひとつのポイントになっているのですね。
ゆうこすさんは、独身の日に便乗してライブコマースをしようと考えたことはありますか。

ゆうこす:
まだ日本では独身の日が知られていないので、独身の日にライブコマースをしようと思ったことはないですね。
中国ではKOLやインフルエンサーのおすすめが信頼できる文化がありますが、逆に日本は、ハッシュタグPRを嫌うなど、インフルエンサーが紹介する商品の方が信頼できないという風潮がありますよね。まずは、そこを変えていきたいと思います。変えることができたら独身の日にライブコマースしたいですね。

武者:
なるほど。そのまま中国で流行っているライブコマースを日本にインストールするのではなく、日本には日本のやり方でというのを考える必要があるということですね。

日本におけるライブコマースの現状
プラットフォーマー視点から見た現状の盛り上がり

武者:
現状、日本でのライブコマースの認知度は非常に低いです。7割近くはライブコマースという言葉すら知らないという状況です。ライブコマースは日本にまだ根付いていないと考えられます。ゆうこすさんは日本におけるライブコマースについてどのように考えていますか。

(図3:ライブコマースの認知度)

ゆうこす:
2017年〜2019年ごろに一度盛り上がっていたと思います。ただ、いろいろなプラットフォームが登場したなかクローズしてしまった背景がありますよね。

武者:
昨年から再び盛り上がっている印象もありますが、村井さんは当時と今を比較してどう思いますか。

村井:
間違いなく盛り上がってきていると思います。コロナ禍の影響が後押しした部分も大きいのですが、3年前と今ではライブコマースのサービス自体が全く違うものになっています。
3年前には瞬間風速的な売上や視聴者数の拡大を狙ったプロモーション文脈が多かったものから、現在は中長期的な顧客エンゲージメントの拡大を意識した接客のようなニュアンスになっています。今ライブコマースで販売をするうえでは、売り場・商品・配信者・視聴者の4つのマッチングが重要だと考えています。

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小林:
技術やインフラがどうというよりも、コンテンツドリブンであることというのは変わらないと思っています。無機質なライブコマースからは購入されないと思うので、企業努力や視聴者の慣れもあり、有機質なコンテンツが増えてきているというのが再燃の兆しに繋がっていると思います。

ゆうこす:
わたし、1回つぶれてよかったな、とは思っているんですよね。

武者:
言っちゃいますね(笑)!それは、どういう意味なんでしょうか。

ゆうこす:
以前は動画コマースをしている意識がありました。台本があり、売っているものを紹介して終わる、YouTubeを撮影しているような感覚がすごくあったんです。だから、ぶっちゃけて言うとこれは終わるかも…と思っていました(笑)。
それでやっと、日本のライブコマースはどうしたらいいかと考えるきっかけになったと思うんです。今は接客や双方向のコミュニケーションを重視したライブコマースも増えてきましたし、今後楽しいコンテンツが増えていきそうで、いち視聴者としては楽しみです!

武者:
今どんどん新しいプラットフォームが出ていますし、盛り上がっているということなのかなとは思いますよね!

企業視点から見た現状の盛り上がり

寺西:
前提としてなぜファンケルがライブコマースを始めたかというと、コロナ禍がきっかけです。全国200店舗がコロナの影響をうけて閉店してしまった際に、お客様とコミュニケーションの場をつくるために始めたのがライブコマースでした。
配信者として盛り上がりを感じるのは、配信前に多くの方が待機してくださっているんですよ!「楽しみ」などのコメントもいただきますし、ライブコマースの楽しみ方を知っている方が盛り上がりを少しずつ作ってくださっている印象です。

石橋:
一度盛り上がったときにうまくいかなかった理由はたくさんあると思いますが、見る文化が醸成されているかどうかが第一関門だと思います。それを後押ししたのが、やはりコロナ禍による、人に会いたい、人に接客されたい、お店に出向いて買い物をしたいという欲求が高まったことではないでしょうか。
テレビショッピングはライブコマースと近い土壌だと思います。メインターゲットが40〜60代で、なかには外に出られない、地方に住んでいて車がないと買い物に行けない人もいます。そういった方々でも素敵なものがすぐそこで買える喜びというのがテレビショッピングのベースです。その体験がライブコマースでさまざまな世代に波及するきっかけとなり、ECサイトを普段見る人が、動画で説明を聞くという新しい買い方のチャンスが広がったと思います。そんななかで私にライブコマースのオファーが来るようになったのは、ここ1、2年なんです。ここから日本のオリジナルのライブコマースが広がるきっかけにどんどんなっているように感じています。

テレビショッピングとライブコマースの違い

ゆうこす:
石橋さんはテレビショッピングのご出演の経験も豊富ですよね。
テレビショッピングとライブコマースの違いってどういったところにありますか?
私もライブコマースをするにあたって、勉強のためにテレビショッピング見ているんですよ!

石橋:
素晴らしい!お互いに影響し合って良いところを取り入れるのが良いと思います。テレビショッピングは一方向発信の横型メディア。テレビなどの横型メディアでは、番組としての完成度を求められたり、視聴者は受け身でいられたりするのが特徴です。ライブコマースは縦型メディアで、「親近感」がキーワードになってくるんですよね。LINE通話やテレビ電話などと似ていて、配信者と視聴者の双方向的な発信ができる点が大きな違いだと感じています。

武者:
接客から繋がって、縦型メディアだからこその「親近感」というのがひとつポイントとしてありそうですね。

「親近感」の作り方

武者:
親近感を作れるライブコマースというのは企業の担当者からすると難しい部分だと思いますが、親近感の作り方はありますか。

寺西:
ファンケルの場合は、社員が出ていること自体が親近感に繋がっていると思います。タレントさんやインフルエンサーさんではなく、商品の企画担当者や研究担当者など、中で働いている人が商品に対する想いや熱意を自分の言葉で伝えられるのは、企業の担当者ならではだと思います。

武者:
ものに思いを乗っけているという親近感は面白いですね。ゆうこすさんはどうですか。

ゆうこす:
インフルエンサーはPR商品や案件動画を嫌う傾向にあると思います。それは、嘘をついているのではないか、本音が言えないのではないかというところから来ていると思います。
だからこそ、私は本当にこれが好きだと伝えるときに、配信前からInstagramのストーリーやTwitterで「家から出ます!」とか「今打ち合わせしています!」などUPしていき、「この商品が良すぎて、始まる前にも使っています。…というわけで配信スタート!」というように、その配信までのドキドキを伝えていくようにしています。

石橋:
おもしろい!!「私はこの商品が世界一大好きで、絶対満足させますよ」というその先の世界を売るのがテレビショッピングの鉄則なんですけど…。その構築の仕方が、ライブコマースではTwitterやInstagramのストーリーを使って一緒に臨場感を味わう、というのが新しいなと思いました。

ゆうこす:
そうですね〜。タレントとしてはそれができなければならないので、芸能事務所さんやクライアントさんからご提案いただくときに、こういうふうにアップしていってくださいと言われますが、「1投稿何円」ではなく、「言われた投稿数より2倍3倍投稿しよう」と考えられるのがプロコマーサー※3だと思います。

※3 プロコマーサー:社会やSNS上で影響力を持ち、ライブコマースのスキルを身につけているコマーサーのこと。

武者:
またキラーワード出ちゃいましたね(笑)。
ストーリーを作っていくところからがプロコマーサーの仕事であるということですね。
村井さんはプロコマーサーに仕事を依頼する側ではないと思うのですが、プラットフォーマーとして気づいたことなどありますか?

村井:
親近感というキーワードが出ましたが、企業さん側はまだライブコマースに対してトライアルのフェーズなんです。ライブコマースは定期的にやっていってコミュニティを育成する動きが必要なのですが、それがまだまだ弱いと思っています。
一方それを上手くやっているのがファンケルさん。ぜひファンケルさんの配信を見ていただきたいです!

武者:
本当にそうですよね!今は毎週配信されていますか?

寺西:
今(2021年11月時点)は、月に4~5回なので、トータルで見ると週に1回です。
始めた当初は、週に2回など結構な頻度で配信していました。

武者:
なるほど。小林さんはいかがでしょうか?

小林:
親近感を私たちの言葉でいうと「情報の透明性」「客観性」と呼んでいます。企業の開発者さんやトレーナーさん、店員さん、コマーサーがスクラムを組んで信憑性や透明性を上げていくことで、エモさが出て有機質なものになってくると思います。

武者:
企業の方や生産者の方だけでなく、ゆうこすさんや石橋さんのようなコマーサーの方々と一緒にスクラムを組んでいくことで親近感も増してくるのかもしれませんね。

ライブコマース成功のプロセス

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演出面でのライブコマースで成功するプロセス

武者:
スキンケアブランド「YOAN」が、ライブコマースで成功した過程を教えてください。

ゆうこす:
今は毎週月曜20時から「YOAN」の配信をしています。スキンケアブランドの配信は、塗ってすぐに変化するわけではないことや、薬事もあってなかなか話すことができないこともあり難しいのですが、そのなかで大事にしているポイントがあります。

ゆうこすさんがライブコマースで大事にしているポイント

  1. 商品の開発段階から、プロセスエコノミーを意識して発売前の様子を配信する
  2. 配信時、挨拶・自己紹介・配信時間・発売のタイミングを冒頭の15秒で言い切る
  3. 紹介商品の購入のため離脱しようとしているユーザーに対し、ライブ配信に再び戻ってきてもらえるよう声がけをしている。例えば、「是非感謝を伝えたいので、戻ってきてください!」のように、離脱ユーザーが再び戻ってきたくなるような声掛けをする
  4. 戻ってくる率・離脱率を指標として見ることで、コアなファンがどれくらいいるか見ている
  5. 一歩間違えるとファングッズで終わってしまう可能性があるため、発売のタイミングなどはイベントとしてゲストを呼んで客観的な意見も配信に取り入れるなど、視聴者側の気持ちを意識している

武者:
「離脱率」と「戻ってくる率」まで分析している方はほとんどいないと思います。相当研究されているなと思いました。プラットフォーム側から見て、裏側だからこそ言える話はありますでしょうか?

村井:
離脱率のお話がありましたが、実際に我々HandsUP※4では1分ごとに配信者の行動と離脱やコメントなどの視聴者の行動を実際に追っています。寺西さんがコメントを返すと、その1分後くらいにコメントの数が一気に跳ね上がるんですよね。

※4 HandsUP:ライブ配信 アプリ「17LIVE(ワンセブンライブ)」を運営する17LIVE株式会社の「HandsUP(ハンズアップ)」は、"買う楽しさ"と"繋がる楽しさ"を体感いただけるライブコマースサービス。ライブコマースの本格運用を目指す企業様向けに、独自のツール提供から、導入~効果最大化までのコンサルティングを一気通貫でおこなう伴走型のソリューションを提供している。

武者:
なるほど。ちなみに寺西さん、実際に追っているKPIなどありますか。

寺西:
ファンケルのライブコマースはすでに商品を知ってくださっている方が多いのですが、その方には、プラス1品のご案内を心がけています。例えば、基礎スキンケアを購入されている方が新しくサプリメントや肌着などを買ってご購入いただくことで、お客様ひとりあたりの単価が上がるかを見ています。

石橋:
ゆうこすさんがやっていらっしゃる、「視聴者の動きを追う」というのは、まさにテレビショッピングでおこなわれている手法なんです。キャスト(配信者)はセールスプロデューサーからイヤホンで販売状況や視聴者数、受注率が常に伝えられています。例えば、赤、白、黒のお洋服を売っている状況があったとして、「今一番赤が売れています」という販売状況と、「クリスマスが近いからではないか」という赤が売れている理由の推測が伝えられます。このように、状況を常に追っているところが非常に似ていると思いました。今テレビショッピングでおこなわれている配信のノウハウが、もしかするとライブコマースにも生きていくのではないか思いました。
また、寺西さんのお話のように、メインの商品を買う人のお悩みを掘り下げていき、併売して単価を上げていくこともテレビショッピングでも共通しているので、ライブコマースの成功の鍵って実は長い間テレビショッピングで蓄積されていたデータや成功事例を活用することで可能性が広がるのではないかと思いますね。

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武者:
たしかに、テレビショッピングを科学してライブコマース化したときにどうできるかは、まだ落とし込めていないですよね。意外とライブコマースとテレビショッピングを分けて考えてしまっているようにも思います。

プラットフォーマーから見た成功のプロセス

武者:
ここまで演出についてお伺いしてきましたが、プラットフォーマーから見た成功するためのプロセスは、どういったところが重要なのでしょうか?

小林:
とにかく継続が大事だなと思います。願わくば1年、最低でも半年は必要で、これはやっていただければわかると思います。100倍近く売上が変わります。

武者:
データ上でも全然違いますか?

小林:
全然違いますね。ゆうこすさんから購入に繋がる離脱の話もありましたが、ネガティブな意味での離脱率が圧倒的に減っていき、コンテンツの時間が伸びます。数十回から文化ができていきます。

武者:
「離脱率」についてゆうこすさんに聞きたいのですが、理想の離脱率はありますか?

ゆうこす:
3分の1が減るとちょうど良いですね。

武者:
企業の方からすると、ハラハラする数字ですよね(笑)。
寺西さんにお聞きしたいのですが、数値はリアルタイムで追っていった方がよいですか?

寺西:
リアルタイムの数値を一番見てますね。ゆうこすさんの話を聞いて、今まで離脱は減っていくことが悲しかったのですが(笑)、お買い物に行ってくださっているというポジティブな見方ができることで、データの見方も変わっていきそうです。

武者:
ライブコマースのKPIやデータの見方はまだ確立していないのですが、ヒントが見えてきましたね。

石橋:
ライブコマースのオファーをいただいて、みなさん一様におっしゃるのが「継続性が一番大事」ってことですね。この時間、このお店にきてもらう習慣が必要で、「社員の顔・内側の顔を知ってもらう」というブランディングのつもりでライブコマースを導入すると成功に近づくのではないかと思いました。

武者:
親近感と信頼の話に戻ってきましたね。
寺西さんはどのくらいの回数・期間で成功したと感じましたか?

寺西:
1年で70回以上ライブ配信をして、見にきてくださっている視聴者の方同士がコミュニケーションをとり始めていて、そういう所もまた面白いなと感じてます。私たちと視聴者の双方向のコミュニケーションだけでなく、視聴者同士がライブコマースを楽しみながらコミュニケーションが生まれ、新しい人が入ってくるという循環が起こっているんだなと思いました。

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武者:
ゆうこすさんはどうですか?

ゆうこす:
テレビショッピングは最悪視聴者がいなくても成り立つと思うのですが、ライブコマースはコメントがこないと成り立たないんですよね。そうすると、お客さんの中に「私が行ってコメントしてあげなきゃ」という方が現れて、ツッコミ役をしてくれたりするんですよね。「ゆうこすはいつもここで噛んじゃうなぁ」みたいな(笑)。視聴者さんにいろいろな役を与えるというのも面白いと思っています。

武者:
親近感や視聴者同士のコミュニケーションは、継続することで文化になっていきそうですね。

ライブコマース成功の法則

ディスカッションから見えてきたライブコマースの重要な項目

  • 透明性
  • 親近感
  • 視聴者同士で作り上げる文化
  • 継続することによって指標的に見えてくる部分

武者:
皆さんがここまでで印象に残ったことや気になることを聞いていきたいと思います。

寺西:
小林さんの「エモいスクラムを組む」という言葉に「なるほど!」と思いました。研究員・開発者・インフルエンサー・視聴者、皆が新しいお客様を取り入れるために肩を組みながら、いいライブコマースを作っていくというのはいいことだなと思いました。

小林:
ビギナー、ミドル、ロイヤルユーザーで異なる質問を適切に打ち返せた時は、非常に良い結果が出るなと思っています。また、ライブコマースは、結構うんちく系の話題がハマるなと思っています。例えば、ワインやデニム、バイクなど、ビギナーが入っていきにくいものや聞きたいけど言語化ができない商材は、別の視聴者が代弁してくれて、「その質問がしたかった。ありがとう!」と視聴者の中でコミュニケーションが活性化していくので、エモさのエッセンスになると思います。

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ゆうこす:
私が配信でよくやっているズル作戦があるんですけど(笑)。A or B 作戦をしています。最初のコメントはみんな緊張しているから、「赤とピンクではどっちが好きですか」と聞くと一回はコメントができるじゃないですか。そうすると、「あ、武者さんコメントありがとうございます!赤なんですね!なんでですか?」みたいに、そこから会話に繋げられます。

武者:
ライブコマースの中でコメントは重要と言われていますが、名前を呼ぶことが大事ですね。これはテレビショッピングにはないですよね。

石橋:
実はテレビショッピングでも、生電話というものがあるんです。コールセンターにお電話してくれたヘビーユーザーさんを放送にお呼びして、「東京都にお住まいの田中さん!どうしてこちらの商品を購入されたんですかー?」など生の声を聞くことで、視聴者の方から一気にお電話がきたりするんです。
お客様は同じような気持ちの人の声を聞きたいし、自分の気持ちを聞いてほしいという欲求は常にあるんだなと今わかりました。

ゆうこす:
ユーザーとして、配信プラットフォームにこういう機能があったらいいな、という意見なのですが、漫画やワインなど好きな人って、買ったものを人に見せたがると思うんですよ。視聴者さんの購入履歴を見れるプロフィールがあれば、配信者も「武者さんグミを500個も買っているんですね。そんな武者さんにはこちら!」っておすすめできるじゃないですか。なので、その人が何を買ったかが分かる機能が欲しいです!

村井:
たしかに、ユーザーのことをより知れば、よりいい接客ができますよね。リアル店舗ではやっていることですが、それがライブコマースにも欲しいということですね。貴重なご意見ありがとうございます。

これからのライブコマース

武者:
最後におひとりずつ「未来のライブコマースがこうなったらいいな」という想いをお聞きしたいと思います。石橋さん、いかがですか?

石橋:
地方でみんなに知られていない良いものがまだまだたくさんあると思うんですね。そういった私たちが知ることができない地方の方にライブコマースをやっていただくことで、販売の場所や機会が増えるようなことがあればいいなと思います。

あと、これは日本独特かもしれませんが、日本でライブコマースを成功させるために必要な要素は、「商品への愛を伝えること」だと思います。「ライブコマースやれば売れるんでしょ」とか、「ブランディングになるんでしょ」と思われてしまう節はあるのですが、購入された方の顔を想像するとか、商品のその先のお客様の暮らしを想像することが大切です。ライブコマースもそうなっていって欲しいという願いがあって、「この商品を買ったみなさんの気持ちが豊かになる自信が私にはあります」ということを伝えていく場所になる必要があるかなと思っています。

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武者:
今、ドキッとしました(笑)。なんぼ売れんねん、っていう話じゃないんだなと。
好きな気持ちを届けるにあたって、視聴者さんのコメントやアイコンしか分からないところの先まで考えてお話しできるかって結構違いますよね。
これからライブコマースが日本で育っていくうえでかなり必要なことだと思います。寺西さんはどうですか?

寺西:
私、イヤホンが欲しいなぁと思いました。

一同:
(笑)

寺西:
というのも、コンテンツや企画を面白くしたい、ライブコマースの精度をあげていきたいと思っていて…。来てくださった方に楽しんでいただくためには、どういう状況なのか知ることでより皆様に魅力を伝えられるのかなと思いました。帰ったらお願いしちゃおうかな(笑)。

武者:
精度をあげて細かく見る分、結果としてそのひとりのお客様の満足度が上がると。

寺西:
もちろん商品への愛があるというところは前提のもと、よりよくしていくためにはそういったところも+αでどんどん工夫していかなければならないのかなと今日思いました。

武者:
ここからはプラットフォーマーさんの未来の視点を聞きたいなと思います。村井さんはどうですか?

村井:
今日、「信頼」というキーワードが出たと思うんですが、信頼を得るにはやっぱり継続が重要で、継続をするためにはライブコマースを始める企業側が正しい理解が必要なのかなと思っています。ライブコマースがもっともっと発展していくためにはそこが一番重要だと思います。ライブコマースを始めようと指揮をとる人は、どこか中国の数字を目線感として持っているんですね。
ただ実際に配信をしているスタッフさんは、日々の店舗の売上にライブコマースでもう少し上乗せすればいいという視点で、ここの視点の違いがこれから合っていけばいいと思います。なのでここで言いたいのは、中国のライブコマースの例を出すのは今日で終わりにしませんか、という。

武者:
お!面白い!いいですね。
日本のライブコマースを考えようというのはいいですね。なるべく意識したいと思います。
決裁する方ってやっぱりいくら売れるか、という考えから入ってしまうけど、実際に配信をされる方はお店の方ですもんね。そこのギャップは確かにあるかもしれないですね。
小林さん、継続といった点もふまえていかがでしょう?

小林:
村井さんがおっしゃった、中国の文化が今後も永続するという考えはやめましょう、という意見に私も賛成です。
違う視点なのですが、2019年と2020年の中国の独身の日で面白いデータがあって、視聴者が購入までに踏むチェックプロセスが4つから8つに増えたというデータがあるんです。

視聴してから、カートに入れて、そして本当に買うまでにレビューを見たりとか、2019年は4ステップしかなかったものが2020年は倍に増えた。これって要は、信頼性や信憑性という部分が少し乖離してきているっていうのはあると思います。中国はダメだったら返品すればいいという非常に合理的な文化ではあるんですけど、それでさえもチェック項目が増えていることは注視しなくてはならないと思います。

武者:
たしかに。KOLが良くないという話ではなくて…。中国のものがそのまま日本では通じないうえに、中国自体も変わってきているということですね。
ゆうこすさん、最後に未来のライブコマースについて一言金言をお願いします。

ゆうこす:
大きく分けて2つあると思っていて。「神」と「パーセンテージ」です。
今、芸能人がYouTubeをするのが当たり前の時代になってきましたが、3年前はなかった話だし、当時はテレビからYouTubeに行ったことで、「落ちたよね」と言われてたと思うんですよ。けど今は、むしろかっこいい。
それが今ライブ配信の世界にきていると思うんです。今、マギー審司さんがライバーやってて、めちゃくちゃ人気なんですよ!なので、降りてきた最初の人はその世界の神になれると思っているんです。

武者:
たしかに!TwitterとかInstagramもそうでしたよね。

ゆうこす:
渡辺直美さんもローラさんも早かった。最初は揶揄されるかもしれないですけど、芸能人が降りてくることが大事だと思ってるんですね。で、今は降りやすい環境にあると思うんですよ。芸能人やユーチューバーもフリーランスに近くなってきていて、D2Cブランドをしている人も多いんですね。D2Cブランドで売るとなったらやっぱりコロナ禍の様子を見て、芸能人が生配信で商品を売るというのが当たり前になってくると思うんです。それを見てライブコマースという言葉が広がっていって、一般の人たちが「なんかかっこいい!」「私もやってみたい」って販売してみるとか。なので、神がどんどん降りてくることを願うばかりです。その神が降りてきた時に、プロコマーサーなり、企業やプラットフォームの方々がいかにコミュニケーションが大事か教えてあげて、神がちゃんとコミュニケーションが取れているかが大事なんです!

武者:
たしかに!神と直接話せるなんてね!

ゆうこす:
一番最初に日本でライブコマースがうまくいかなかったのは神と話せなかったからですよね。当時の神は台本と話してたので、神がコミュニケーションとれたらそれは勝ちますよ!

もうひとつは「パーセンテージ」って言ったんですけど、日本がもっともっと、ライブコマースすごいぜ、11月11日は独身の日だぜー!と持っていくためにはやっぱりパーセンテージ。割引をすることですね。日本で勝つにはパーセンテージを安くする、そこだけは中国と一緒にした方がいいと私は思っています。ライブコマースを観たら安く買えてラッキーとか、コミュニケーションとれてよく知れる、という感じになっていけばもっともっとライブコマースとか独身の日は広まっていくと思います。
あと、超最終的な理想言いますよ!こんなのもう何年後〜って話なんですけど…。

一同:
(笑)

ゆうこす:
検索したときに、上に検索結果・画像・動画・ライブコマースまで出てきて欲しいなって思っていて…。

武者:
ショッピングまでは出てきていますもんね!

ゆうこす:
例えば「トマト」って検索してライブコマースを選ぶと、北海道のおじいちゃんたちがトマトのライブコマースをしている動画と、寺西さんがトマトのライブコマースをしている動画が出てくるとか。いろんなトマトのライブコマースが出てきて、それらを見比べてどの商品を買うか決めていくっていうのができたらめっちゃ面白いだろうな〜と思います。

武者:
現在配信中のライブコマースが出てくるっていうね!いやぁ〜、面白いですね。
金言出たんじゃないでしょうか。

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まとめ

小林:
Tig LIVE※5をリリースしてからちょうど一年と一日経つのですが、ここまで配信者様やコマーサーの方のお話をお伺いすることがなかったので、プラットフォーマーとしてのミッションが非常に明確になりましたので、内輪向けのコメントになりますが貴重なお時間をありがとうございます。

※5 Tig LIVE:動画内の気になる部分を"タップ“するだけで、商品の購入ページや店舗MAP、クーポンなど様々な情報をシームレスに取得できる「Tig」(ティグ)シリーズのライブソリューション。

村井:
こうやってライブコマースに携わる色々な立場の方とお話しできるのは初めての機会でした。役割によって見る視点は異なるんでしょうけど、信頼やファンだとか、ライブコマースに重要なことってみんな同じように感じているんだなと思いました。プラットフォームの立場としては、そういう信頼を活かすためにはどうやったらいいかというようなところをもっともっと深掘っていけたらと思います。

石橋:
日本のライブコマースが来る来る!と言われて、中々来ない現状ですが、いろんな戦略を練ってみなさん考えていらっしゃるということが私自身勉強になりました。自分はオールドメディアと言われるテレビショッピングをずっとやってきて、これからきっとライブコマースが来るだろうなと思っているんですけど、このライブコマースという言葉自体が文化として醸成される、ゆうこすさんの言うように有名な人たちが参入してくることをすごく願っています。その先に、ライブコマースというものの文化が定着していくことによって、日本にとって良いことがたくさんあるはずだと思っているんですね。地方で売れないものや、余っているものと、足が遠のいている方とをマッチングさせるようなサービスになると思うので、文化として定着させるお手伝いを今後自分もできたらいいなと改めて感じました。

寺西:
継続ってすごく大切なことだなと、改めて思いました。一年以上続けている中で、配信の回数をどうするとか、配信の長さをどうするとか色々模索していますが、今後も配信を通じて、お客様により喜んでもらえるようなコミュニケーションツールとして今後も様々な工夫をしていきたいなと思います。

ゆうこす:
私はユーチューバー、インフルエンサー、ライバー、全てを経験してきたわけなんですけれども、プロコマーサーというのはマーケター視点もないと難しいところもあるので、今回お話を聞けてプロコマーサーに一歩近づけたかなと思います!これからプロコマーサーが増えていかないといけないのかなと思っているので、私がやっている株式会社321の今2,400人いるライバーの子たちに少しでもこのノウハウを届けていって、ライバーとも、ユーチューバーとも、インフルエンサーとも違う「あの子の配信だったら買いたいよね」となるプロコマーサーという新しい、かっこいい職業を創っていけたらなと思いました。

武者:
金言を相当いただきまして、”カミ(神)ニケーション”という言葉にまとめさせていただきたいと思います。タレントさんみたいな神が現れてコマーサーをやってもらうというのもありますが、もう一点、噛んでもいいから恥ずかしがらずに自分の好きなことをお客様とコミュニケーションしていこうよという。ここが企業様に継続的にやっていただけるとまた新しいフィールドが見えてくる。中国とはまた違うライブコマースを日本でつくれたらいいなと思いました。

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アイレップはライブコマース事業を専門にプランニングするチーム、TAKE ZERO(テイクゼロ)を発足し、ライブコマース施策の実施やクライアント企業向けセミナーを主催するなどの活動をおこなっています。
また、ゆうこすさんが代表を務めるライバーマネジメント事務所、株式会社321との業務提携を開始し、コマーサー育成にも力を入れています。ご興味のある方は、ぜひ当社にお問い合わせください。

この記事の著者

渡邊 千穂子

2021年4月アイレップに新卒入社。PR領域のチームでプランニングとデザインを担当。配信番組や動画制作等の業務に携わる。大学生時代は主にインタラクティブデザイン領域について研究し、ゲーム制作等をおこなう。
趣味:カメラ、イラスト制作、ハンドメイド等

2021年4月アイレップに新卒入社。PR領域のチームでプラン...

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