ストーリー形式と呼ばれる「縦型ショート動画」が次々にSNSプラットフォームに登場し、若い世代を中心に、インターネットの新たな情報伝達手段となりつつあります。
縦型ショート動画の情報伝達力はEC領域においても大きな魅力。動画マーケティングプラットフォーム「Firework」を使うと、自社媒体に縦型ショート動画を簡単に設置することができます。これにより、カタログ的だった従来のECサイトとは異なるリッチな体験を提供することができるとともに、サイト内の回遊を促し、ECサイト全体の体験向上にも寄与します。
デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム株式会社(以下 DAC)は、2021年4月にFireworkを展開するLoop Now Technologies Inc.と業務提携を締結し、Fireworkの日本国内でのサービス展開を開始。同サービスを活用した広告ネットワークの構築、それに伴う広告商品の開発を共同でおこなっています。
本記事では、Fireworkの基本的な機能について、Firework Japanの瀧澤優作氏にお話を伺いました。
▼本記事の著者
瀧澤優作 氏
Firework Japan Country Manager(日本事業責任者)
Firework創業初期メンバーとして当時6人・創立3ヵ月のタイミングでジョイン。入社約5年で社員220名・グローバル5オフィスまで拡大。現在日本マーケット展開の責任者を担当。
Fireworkの特徴
- Fireworkは、一言で言うと、どういうサービスですか?瀧澤:
縦型ショート動画とライブ配信にフォーカスした「動画マーケティングプラットフォーム」です。媒体社と、SMB(Small and Medium Business)からエンタープライズの法人を対象に、縦型ショート動画を活用した統合マーケティング支援と、そこを起点にした動画広告が展開できるサービスです。
- 非常に多機能なサービスですが、一番基本的な機能は何になりますか?
瀧澤:
Fireworkのさまざまな機能の中でも、一番にアピールしたいのは「自社媒体(オウンドメディア、自社運営のECサイト、アプリ)に、縦型ショート動画/ライブ配信機能を、簡単に埋め込めるSaaSツール」であることです。
Fireworkでは、縦型ショート動画を「9:16」のアスペクト比で撮影された6~60秒の長さの動画と定義しています。InstagramのリールやTikTokと同じですが、われわれもスマートフォンで見るのに最適なこのサイズが、縦型ショート動画市場でのメインサイズだと認識しています。
- 動画の埋め込みは、どれくらい簡単なのですか?
瀧澤:
動画をFireworkにアップロードすると、HTMLのコードが自動生成されるので、それをコピー&ペーストして、自社媒体に埋め込むだけです。
アップロードできる縦型ショート動画は、スマートフォンなどで撮影したものだけでなく、先にFireworkの編集機能を使って編集/保存した動画、YouTubeやInstagramから取り込ん
だ動画も選択できます。
自動生成の際にWebの表示方法(カルーセル、グリッド、ストーリーブロック、フローティングボタン、Floating Video)を選択できるので、プログラムやコードの知識がない方でも、流行のレイアウトで縦型ショート動画を簡単に自社媒体に乗せることができます。また、動画単体で埋め込むだけでなく、「プレイリスト」という形で、複数の動画を1つの動画リストにまとめて、そのリストごと埋め込むこともできます。
- 動画サービスの場合、ページの読み込み遅延を懸念するサイト運営者は多いと思います。その点への対策は何かされていますか?
瀧澤:
Fireworkは縦型ショート動画がメインなので、動画の読み込みスピードは類似サービスよりも圧倒的に速いという特長があります。遅延読み込みや、動画プレイヤーサイズの小型化を進めており、われわれもその点は非常に重要と認識しており、現在も読み込みスピードの高速化を進めています。
- 縦型ショート動画は若い世代を中心に視聴時間を伸ばしている印象がありますが、Fireworkでは視聴動向をどう把握されていますか?
瀧澤:
動画をどんどんスワイプして見ていく形のユーザー体験は、今のスマートフォンの形態に非常にフィットしていて、年齢はあまり関係ないと思っています。それよりも、素材自体が、縦型ショート動画というフォーマットに合っているのかどうかで、エンゲージメントが分かれる印象を持っています。
競合サービスとの違い
- 今、縦型ショート動画に取り組もうとすると、やはりTikTokやInstagramの名前が真っ先に挙がると思いますが、それらとの違いや差別ポイントは、どこにあるのでしょうか?
瀧澤:
一番の違いは、配信される場所です。TikTokやInstagramはいずれも、中央集権的なプラットフォームの中で配信されます。それに対して、Fireworkは自社媒体の中に出る。これが大きな違いです。ミュージシャンが路上でライブを行うか、自分のファンがいるクラブハウスでライブを行うかの違いと言ってもいいかもしれません。
プラットフォーム上での配信はバズれば大きい。しかし、そのためにはある程度のフォロワーを獲得する必要がありますが、それにはコストと時間がかかります。また、動画コンテンツはテキストや写真よりも情報量が多く訴求力が高いことが魅力ですが、反面、そうした中央集権的なプラットフォームを活用すれば、サイト離脱の可能性も出てきます。
しかし、Fireworkなら、TikTokやInstagramが提供しているような動画体験を、自社媒体の中で提供することができるわけです。すべてのコンテンツをひとつのブランドで統一的に発信することで、自社媒体内の体験向上や、次のコンバージョンに寄与すると思っています。
ファネルでお話しすると、TikTok、Instagram、YouTubeは、アッパーファネル向きで認知に強い。対してFireworkはミドルファネル。すでにブランドや商品を認知しているユーザーに対して、よりよい体験を提供し、エンゲージを深めていくコミュニケーションに向いている。こうした違いを踏まえて使い分けていただきたいと思っています。
縦型ショート動画の可能性
- 縦型ショート動画は、現在はエンタメとか時間つぶし的なツールというイメージが強いですが、今後、ビジネス領域での可能性をどうお考えですか?
瀧澤:
インターネットからの情報取得に際しては、テキスト、画像、動画と推移してきましたが、今後は、縦型ショート動画も、その一角を占めると考えています。
これまではテキストと写真ベースだった情報伝達手段は、通信速度の向上とスマートフォンの画角サイズの巨大化、カメラの高性能化によって、動画までもが、非プロでも手軽に高品質なものが撮れるようになりました。それによって、これまで多くのWebサイト上で、テキストで言葉を尽くして説明していたものの多くが、縦型ショート動画に置き換わる可能性があります。現在はEC領域にクローズアップされていますが、ECだけに留まらず、あらゆるところでこの変化は進んでいくと思います。
これまではテキストと写真ベースだった情報伝達手段は、通信速度の向上とスマートフォンの画角サイズの巨大化、カメラの高性能化によって、動画までもが、非プロでも手軽に高品質なものが撮れるようになりました。それによって、これまで多くのWebサイト上で、テキストで言葉を尽くして説明していたものの多くが、縦型ショート動画に置き換わる可能性があります。現在はEC領域にクローズアップされていますが、ECだけに留まらず、あらゆるところでこの変化は進んでいくと思います。
たとえば整体院。「頭痛に効く方法を紹介する」というコンテンツを公開したい場合、ブログでテキストと写真で展開するよりも、30秒の動画を流した方がてっとり早いしわかりやすい。世の中には思った以上に、「言葉で説明するよりも、動画で見てもらった方が早い」というものは多くて、そういったものからどんどん置き換えが進んでいくと考えています。
また、アメリカでは、メディアがコマース化し、コマースがメディア化する流れが同時に起きており、日本も近いうちに同じことが起きると思っています。つまり、どの媒体もメディアであり、ECサイトでもあるという状況がやってくる。そうした未来において、縦型ショート動画の必要性はますます高まっていくと思います。
ちなみに、日本でもこうした取り組みはすでにいくつかあります。たとえば、「CLASSY.」(https://classy-online.jp/)様は、ファッションのポイントを縦型ショート動画でお伝えしていますが、その画面右下に出る「もっと見る」「今すぐ買う」ボタンをクリックすると、光文社のECサイトに飛んで、実際に購入できる仕組みを構築しています。
メディアとECを両立した取り組みはこれからどんどん増えていくでしょうし、われわれもぜひご支援させていただきたいと思っています。
(図1:女性ファッション誌『CLASSY.』の公式サイトの中ほどにある「MOVIE」の欄にFireworkが導入されている)
(図2:雑誌で紹介したコーディネートをモデルが着用しさまざまなポージングをおこなう縦型ショート動画が掲載されている。「もっと見る」ボタンをクリックすると、光文社のECサイト(kokode.jp)にジャンプする)
(図3:遷移先のECサイトでは、動画内でモデルが着用していたものと同じコーディネートの洋服が購入できる)
- これまでは、SEOの観点から、Webサイトにはテキストをできるだけたくさん入れましょうという意識が強くありましたが、縦型ショート動画がメインコンテンツになるにつれ、こういった認識も変わっていくのでしょうか?
瀧澤:
Googleもウェブストーリーという、ストーリー形式のWeb用コンテンツを展開しており、やはりスマートフォン視聴に最適化したコンテンツへの関心は高いと感じています。YouTubeでは、動画内容を解析してランキングに反映していますし、ウェブストーリーもクロール/インデックスの対象になっているので、縦型ショート動画においても、今後、そうしたことが同様におこなわれると予想しています。
ただわれわれとしては、縦型ショート動画の導入は、自社媒体の体験向上と、それに伴うリテンションの向上を目的に取り組むべきだと考えていますし、その点を重視しています。
- 現在Fireworkは、EC領域に特に注力されています。縦型ショート動画とECの相性の良さはどこにありますか?
瀧澤:
縦型ショート動画は、「感覚」「雰囲気」を手軽に伝えることができます。それが、ECにおける来店体験の代わりを提供する手段として、相性がいいと思っています。
コロナによってオフラインの体験が制限されている現状では、オンラインが生命線です。しかし、テキストと写真だけでは、伝えられる情報には限度があります。オンラインで、その商品の良さや、ブランドストーリーを伝えるために、今後ますます縦型ショート動画がクローズアップされると考えています。
生地の感じ、手触り、色味、実際に着用した雰囲気など、言葉では伝えにくい情報も、縦型ショート動画で伝えることで、オフラインに近い”ちょっといい体験”を提供できます。たとえば、お店のスタッフが実際に服を着て、その姿をスマートフォンでパッと30秒撮った動画でも、実はすごいコンテンツになり得ます。
ファッションDtoCと特に好相性
- 現在、Fireworkを導入している企業数は?また、どういう業種が多いですか?
瀧澤:
現在日本では、200社ほどにご利用いただいています。業種はやはり、ファッション系が中心で、特にDtoC系のブランドが一番多いです。その次がスポーツチーム。アビスパ福岡様とか、清水エスパルス様など、プロスポーツチームがメディアとして活用しつつ、グッズ販売などをECとして展開する形で、ご利用いただくことが多いです。
それ以外で、縦型ショート動画と相性がいいと思っているのは、求人媒体や不動産媒体。これらは、ライブ配信を活用したウェビナーにも、相性がいいと感じています。特に不動産は、営業担当者に縦型ショート動画の制作スキルなどをお伝えできれば、1人あたりの生産性も非常に上がるはずで、今後はそういう方向のご支援もおこなっていきたいと思っています。
- Fireworkの導入で、数値的にはどんな変化が期待できますか?
瀧澤:
例えば、FireworkのUSサイトでも紹介させていただいているFoo Tokyo様の場合、Firework導入後、Webサイトのセッション時間が5倍になりました。また、PVが29%増加しています。これからどんどんライブ配信の実例が出てきていますので、そういった事例も、今後機会があればご紹介していきたいと考えています。
この記事の著者
DIGIFUL編集部
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