戦隊ヒーローの“ブルー”が起業!?ユニークなWebCMでブランド認知や利用意向を高めた弥生の事例
ブランディングで手応えを実感するためには、緻密な戦略設計と、戦略に基づいたコミュニケーションの展開が欠かせない。バックオフィス業務をサポートする「弥生シリーズ」を提供する弥生では、2017年に「弥生のかんたん会社設立」を、2021年に「起業・開業ナビ」をリリースし、起業家に向けた取り組みを進めてきた。2023年には初のブランディング施策として、新WebCM「ブルー、独立する。」篇を公開し、確かな手ごたえを実感しているという。本記事では弥生の内藤氏と、同社のブランディングを支援するHakuhodo DY ONEの米田氏、松尾氏を取材し、成果の背景を深掘りする。
※本記事は2024年7月12日に株式会社翔泳社が運営するMarkeZineに掲載された記事を転載しております
元記事:https://markezine.jp/article/detail/45732
「弥生=起業支援」のイメージ構築へ
- 今回は、弥生の起業支援サービスのブランディングについてうかがっていきます。ブランディングを推進するにあたり、課題を感じていた点はありますか?
内藤:まずはサービスの認知度を高めることが喫緊の課題でした。弥生は業務支援領域と事業支援領域の二つで事業を展開しています。
弥生 ダイレクト・セールス&マーケティング本部 クラウド・サービスセールス&マーケティング部 セールス&グロースマネジメント担当マネジャー 内藤奨氏
内藤:業務支援領域では「弥生会計」をはじめ、バックオフィス関連のソフトウェアを提供しています。製品を既にご存知の方が多く、ブランド資産が蓄積されていると言えます。
一方の事業支援領域では、起業構想から事業継承までをサポートしています。この領域において、起業支援をサポートするサービスが「弥生のかんたん会社設立」です。起業にともなう準備や手続きをワンストップで進められます。業務支援領域と比較すると、起業支援サービスの認知度はまだまだです。そのため、認知度を高めた上でブランドイメージの構築に取り組む必要がありました。
- 今うかがった課題を解決すべく、Hakuhodo DY ONEをパートナーとして選んだとうかがっています。タッグを組むことにした決め手をお聞かせください。
内藤:提案内容と熱意が決め手です。Hakuhodo DY ONE様とはマーケティング領域で長くお付き合いしていたこともあり、当社のことをよく理解されています。今回もリサーチを入念に行った上で、考え抜いた内容を提案してくださいました。加えて、営業担当の方の熱意が感じられたことも大きいです。
狙いは「起業」にピンとこない人
米田:今回のご提案にあたって、オリエンから何度も壁打ちをさせていただき、ターゲットとして適しているペルソナや、起業支援領域のブランド方針についてすり合わせを行いました。積極的にお時間を割いてくださった内藤様には感謝しています。
Hakuhodo DY ONE 第二クリエイティブ本部 第一クリエイティブ局 局長 米田雄史氏
松尾:お互いにペルソナやブランド方針のはっきりとした輪郭が見えない中で、議論を重ねながら一緒にゴールを目指せたと思います。最終的には当社が提案した戦略を評価していただけましたが、そこに至る過程で両社一丸となることができました。
Hakuhodo DY ONE 第二クリエイティブ本部 第一クリエイティブ局 部長 松尾良馬氏
- ブランディングの具体的な施策として、WebCMを制作されたそうですね。公開に至るまでのプロセスをお聞かせいただけますか?
米田:まずは、弥生の起業支援サービスにマッチしそうなペルソナを分析しました。実際に起業を考えている方や起業経験者にインタビューを行ったり、第三者機関の調査を行ったり。さらに、社内で起業プロジェクトに携わっているメンバーを交えて、起業する人たちの気持ちに寄り添いながら分析を進めました。
その上でペルソナをいくつかに分類し、それぞれの特徴を見ていきました。弥生というブランドや起業支援サービスの価値とマッチするペルソナを見極め、対象とすべき層を特定していったのです。
分析の結果、弥生がアプローチすべきペルソナは「『起業』という言葉にあまりピンとこない人」であると考えました。「起業で一発当てたい」と考えるアグレッシブな人よりは、「自己実現を目指したい」「公私ともに充実させたい」と考えている人。つまり、起業を独立として捉えている人です。
戦隊ヒーローの“ブルー”を主人公にしたワケ
米田:ペルソナを踏まえ、コミュニケーションの中心に「起業」ではなく「独立」という言葉を置く提案をしました。コミュニケーションを通じて「失敗しない」「着実」などの堅実なイメージを醸成することができ、安心感や信頼感が強い弥生のブランドイメージにもマッチすると考えたためです。
内藤:主観的にペルソナを描くのではなく、リサーチから得られたファクトをベースにペルソナを描くことができました。また、弥生の顧客像とリサーチから得られた示唆を組み合わせて、コミュニケーションの対象を考えられたことも非常に良かったと思います。
- 描いたペルソナに沿って制作したWebCM「ブルー、独立する。」について、詳しく教えてください。
米田:戦隊ヒーローを模した主人公(ブルー)が、起業を志す動画です。正義のために戦うかたわら起業を志すものの、初めて経験する手続きの連続で心が折れそうになるブルーを、弥生の起業支援サービスがサポートするストーリーにしました。
戦隊ヒーローを登場させたのは、今回のターゲットを30~40代に設定していたためです。幼い頃に憧れていたヒーローが、自分と同じ独立・起業の夢を追いかけている。そんなヒーローの目線で、弥生を「独立を助けてくれるヒーロー」として描くことで、WebCMを見た方に「弥生=ヒーロー」という心強さを伝えようとしました。
加えて、戦隊の中でブルーが担う「真面目」「信頼」などのイメージが、弥生ブランドの持つ最も魅力的な部分と重なり、起業支援サービスの価値を十分に表現できると考えました。なお、ブルーは弥生のブランドカラーとも合致します。
2ヵ月で3,000万再生!ブランドリフトにも効果が
松尾:独立する人の多くが、ブルーのように優秀で、組織における信頼も厚いです。そんな人も、いざ独立するとなれば大きな不安に襲われます。一般的にSaaSのCMは、サービスの特徴や他社との違いを伝えることが非常に難しいため、今回のWebCMでは弥生らしさや弥生の顧客像をキャラクターに変換し、抽象化して伝えることが大切だと考えました。
映像表現においては、監督と話し合いながらドキュメンタリーのような撮影手法を取り入れました。感覚的な話ではありますが、独立に対する不安を素早く伝え、当事者の共感や自分ごと化を促す表現を重視しました。
内藤:キャッチーな表現に終始するのではなく、弥生らしい信頼感や安心感の伝達を重視した結果、目的としていたサービス認知とブランドリフトにつながるWebCMが出来上がったと思います。
- WebCMの公開後、どのような反響や成果が得られたのでしょうか?
内藤:公開から2ヵ月で動画の再生回数は3,000万回を突破しました。「起業=弥生」「弥生の起業支援サービスは信頼に足る」という認知が広まるとともに、サービスに対する興味・関心や利用意向も高まり、利用者の増加にもつながっています。
冒頭5秒へのこだわりで視聴完了率は76%に
- どのような点が成果につながったと思われますか?
米田:対象となる人の共感を集めながら、弥生のブランドを十分に伝えられた点にあると思います。今回制作したWebCMは、YouTubeを中心に展開しました。YouTubeでは、動画の冒頭からスキップボタンが表示されるまでの約5秒間で、ユーザーが視聴を継続する/しないを判断します。冒頭の5秒間で視聴者の興味を引くことに心を配りました。その結果、76%という高い視聴完了率を出すことができ、我々が伝えたいことを十分に伝えられた手応えを感じています。
松尾:WebCMだけでなく、LPやバナーを含む全てのクリエイティブを「ブルー、独立する。」の世界観に統一しました。また今回はWebCMに流すオリジナルソングも制作したのですが、動画のコメント欄には曲に対するポジティブなコメントも複数寄せられていて、うれしかったです。
米田:提案の前日に当社のメンバーの歌声でデモ音源を録音したのですが、素人が歌った音源にもかかわらず、内藤様は聴くやいなや「オリジナルソングを作りましょう」と言ってくださいました。
松尾:独立を志す人の心情を歌詞に乗せたこともあり、視聴者の共感を集める要素の一つになっていると思います。ストーリーや映像表現、曲などの細部までこだわった結果、まとまりのある世界観が生まれ、高い視聴完了率やブランドリフトにつながったのではないでしょうか。
デジタル時代のブランディングに強み
- 最後に、皆さんの展望をお話しください。
内藤:起業支援サービスに限らず、弥生のブランディング施策が全体的にワンショット/スポットのキャンペーンになってしまっているため、今後はあらゆるタッチポイントで一貫したコミュニケーションを展開し、ブランドのメッセージや価値を継続的に伝えていきたいです。
米田:我々は「デジタル時代のブランディング」を非常に重視しています。WebCM一つとっても、ターゲティングというデジタルならではのテクノロジーを活用することで、より踏み込んだブランディングが実現できます。クライアント企業が築いてきたブランドをデジタルの力で変容させ、企業価値やサービス価値の向上に貢献していきたいです。
松尾:デジタル領域のマーケティングに専門性を持つ当社だからこそ、今回の弥生様とのお取り組みのように、動画や各種Web広告、LPの制作まで、ひいてはアッパーファネルからロワーファネルまで、一貫してご支援することが可能です。
ブランディングは「かっこいいクリエイティブを作れば良い」という単純な話でもなければ、ワンショットで完結するような取り組みでもありません。メンバーやステークホルダーを巻き込みながら、同じ目線を持ち、表層的な数字だけの議論に終始しないことが大切です。今後もその姿勢を忘れず、クライアント企業のブランディングを支援していきたいと考えています。
この記事の著者
MarkeZine
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