ブランドイメージ向上とCV獲得 両方を同時に達成するダイレクトレスポンス広告のクリエイティブとは
コンバージョンを獲得しつつ、ブランドイメージを向上させるようなダイレクトレスポンス広告は作れないのか?アイレップではそうしたクライアント企業のご要望に応え、ダイレクトレスポンス広告とブランド広告を両立するクリエイティブ制作を実現するスキームの確立に取り組んでいます。本稿では、「ブランド×ダイレクトクリエイティブ施策」を担当する3名に、その背景と施策内容を聞きました。
「ブランド×ダイレクトクリエイティブ施策」が生まれた背景とは
- 「ブランド×ダイレクトクリエイティブ施策」とは、どのような施策ですか?
塩見
ダイレクトレスポンス広告(以下、ダイレクト広告)にブランド広告の要素を織り込んだクリエイティブの企画から制作、運用まで、一連のPDCAを回すためのスキームを「ブランド×ダイレクトクリエイティブ施策」と呼称しています。
ブランド広告は、ブランディングを目的とした広告で、企業、ブランド、製品・サービスの世界観を訴求することで、長期的な好意形成、LTVの向上を目的としたものです。一方、ダイレクト広告は、製品・サービスそのものを訴求し、短期でのコンバージョンを目的とした広告です。
(図1:広告の目的は、ブランド広告とダイレクト広告の2種類に分けられる)
本来、目的の異なるこの2つの広告は、異なる施策として実施することが一般的です。しかし現在、企業は社会課題の解決に強くコミットすることを求められています。生活者からの厳しい視線が注がれる中、短期の獲得を最優先とするダイレクト広告の過激なクリエイティブ表現は、経営リスク要因の一つになる可能性も出てきています。
「ブランド×ダイレクトクリエイティブ施策」は、従来常識とされてきたダイレクト広告のクリエイティブを見直し、短期の獲得に加え、LTVの向上も念頭に置いた新しいクリエイティブを作るための取り組みです。ここ2年ほど、クライアント企業とともに取り組んできましたが、ようやく明確な成果が現れるようになりました。ブランド広告とダイレクト広告の両立は可能だという実感が得られつつあります。
- 例えばコンプレックス商材の購入を促進するダイレクト広告は、クリエイティブの表現が過激になりやすく、規制強化も進んでいます。その背景にはCV獲得至上主義があるように思いますが、この現状については、どう思われますか?
塩見
今なおCV至上主義的な意識から抜け出せないことは、現在のデジタルマーケティングの大きな課題だと思っています。
クリエイティブのインパクトは大きい方が、短期的に見れば成果は出ます。しかし、長期的視野に立って、商品だけでなくブランド価値を併せて訴求するほうが、最終的にはLTVにもたらす効果は大きいと思っています。
谷本
ブランドイメージを大事にするクライアント企業の中には、ダイレクト広告への特化はブランド観点ではポジティブではないという認識を持っておられるところも多いです。こうしたクライアント企業は、ダイレクト広告でコンバージョンを獲得したいが、ブランド毀損はしたくない、というアンビバレントな課題を抱えていらっしゃいます。「ブランド×ダイレクトクリエイティブ施策」とは、そうしたお悩みに寄り添い、解決するためのものでもあります。
ダイレクト広告にもブランドの本質的価値を反映したクリエイティブを
- 「ブランド×ダイレクトクリエイティブ施策」の要件はなんでしょうか?
塩見
ブランドの本質的価値をしっかり理解するということと、長期的な目線でブランドがどういうメッセージを生活者に伝えていきたいのかを理解する、ということです。そこをクリエイティブにどう落としていくかを考えることが要件となります。
- ブランドの本質的価値を理解するために、チームでは普段どういうことを意識していますか?
塩見
アイレップにはマーケティングチーム(ストラテジックプランナー)がいます。またアイレップは博報堂DYグループの一員でもあるので、案件によっては博報堂のマーケティングチームとも連携しています。
谷本
私たち広告会社側だけでブランド価値の読み解きをおこなっていると、クライアント企業の意図していない解釈をしてしまう可能性もあります。ですので、クライアント企業の担当者を含めたミーティングを定期的に開いて認識の擦り合わせをおこない、メッセージの理解を深めています。
澤
デザイナー観点からお話しすると、ブランド広告のトーン&マナー(以下、トンマナ)を守りながらダイレクト広告に落とし込むには工夫が必要です。まずはブランド理解の時間を、一般的なダイレクト広告の制作よりも長めに取るようにしています。
ただ、ブランド広告のトンマナをダイレクト広告に直接適用するだけでは、デザインとしては洗練されているがインパクトや視認性に欠けるものになりがちです。そこで、フォントセットなどはトンマナを踏襲しつつ、ダイレクト広告用に独自の組み合わせを作るなどして、インパクトや視認性を向上させつつ、可能な限り世界観を守るようにしています。
ブランド色強めとダイレクト色強めの2軸で制作を並行して進める
- ブランド×ダイレクトクリエイティブ施策の実施スキームを教えてください。
塩見
「ブランド×ダイレクトクリエイティブ施策」は、2軸で並走することを基本としています。つまり、ブランド色の強いクリエイティブとダイレクト色の強いクリエイティブの2パターンを作り、この2つを同時に運用していくことが最大の特徴です。
ダイレクト色が強めか、ブランド色が強めかで、訴求軸や伝えるメッセージなどが変わるので、それぞれまったく別軸として一から作っています。ブランド色が強いクリエイティブなら「ブランド7:ダイレクト3」の割合で、ダイレクト色が強いクリエイティブなら「ブランド4:ダイレクト6」の割合で、というように、案件ごとにその割合を変えながら対応しています。
(図2:クリエイティブは、ブランド色とダイレクト色で使い分ける)
- ブランド色が強い、ダイレクト色が強いという割合の調整はどのようにおこなっていますか?
塩見
1つのチームで2軸を作り分けるのは難しいので、ブランド色が強いクリエイティブを作るチームと、ダイレクト色が強いクリエイティブを作るチームに制作体制を分けています。ブランド色が強いクリエイティブは、案件によっては博報堂のアートディレクターが入ることもあります。
(図3:クリエイティブごとに専門チームを配置し、最適化をはかる)
谷本
ディレクターの立場から言うと、メインコピーの表現、素材の使い方が作り分けのポイントになります。フォントや色味、デザイントンマナはブランドごとのガイドラインを遵守することが基本ですが、獲得につなげるために、ブランド毀損をしない程度に視認性を上げる調整をクライアント企業とすり合わせつつおこなうこともあります。
ブランド×ダイレクトクリエイティブ施策のKPI
- KPIもそれぞれ異なる指標を設定するのでしょうか?
塩見
私たちがメイン指標としているのはダイレクト広告のKPIです。なぜなら、ブランド色が強いクリエイティブでも、ダイレクト広告のKPIを達成できなければ本来の目的である短期獲得を達成できないからです。そのために、ダイレクト色の強いクリエイティブとブランド色の強いクリエイティブの2軸で走らせています。また、それと並行して、長期的な目線でLTVなどサブ指標を確認しながら、全体の費用対効果を考えてクリエイティブPDCAを回しています。
谷本
性質上、ダイレクト色の強いクリエイティブの方がCTRは高めになりますが、最終的なCTVRはブランド色の強いクリエイティブの方が高くなることもあります。そういった点で、うまく棲み分けできているかなと思っています。
(図4:ブランド・ダイレクトで得られる成果が異なる)
- ブランド×ダイレクトクリエイティブ施策を実施するクライアント企業は、どのような業種が多いなどの傾向はありますか?
谷本
特定の業界のクライアント企業が多いというような傾向はありません。ブランドイメージを大事にしているという点は共通しています。
塩見
直近だと、飲料、化粧品、金融業界のクライアント企業の案件を手掛けました。ブランド広告とダイレクト広告の両立は、あらゆる業界で意識されている課題なのだと思います。
ブランドイメージを大事にしつつ、訴求力の高いクリエイティブをスピーディに
- 「ブランド×ダイレクトクリエイティブ施策」をアイレップが手がける強みを教えてください。
塩見
アイレップがこの施策を手がける強みは3つあると考えています。
1つめは、アイレップ自体にも、マス広告を専門にするクリエイティブチームと、ブランド戦略を考えるマーケティング(ストラテジックプランニング)チームがおり、スピーディかつ綿密なプランニング・制作ができます。
2つめは、アイレップが博報堂DYグループの一員だということです。ダイレクト領域に強いアイレップのチームと、ブランディング領域に強い博報堂のチームが直接連携できるのは、大きなアドバンテージだと思っています。
3つめは、あらゆる領域に対応できるデザイナーが社内に多数在籍していることです。アイレップは、東京本社のほかに、高知(アイクリエイティブデベロップメントセンター高知)と新潟(アイクリエイティブデベロップメントセンター新潟)にも制作拠点があり、所属デザイナーの総人数は100名を超えています。
(図5:アイレップのクリエイティブ制作体制)
澤
アイレップでは、デザインクオリティを上げるために、デザイナーの教育にも非常に力を入れており、外部の有料技術サイトなどとも提携しています。また、日常的に時間をかけてブランドメッセージの読み解きをおこなったり、シニアデザイナーが最終的なデザインチェックをおこなう制作フローを導入したりするなどして、品質を担保しています。
- 「ブランド×ダイレクトクリエイティブ施策」はどのような課題を抱えている企業に適していますか?
塩見
まずは、現在のダイレクト広告施策では、ブランド価値やサービスの内容が生活者に伝わってないのではないか、とお悩みの企業です。
それから、そもそもデジタル広告にあまり良い印象を持ってない企業です。ダイレクト広告は獲得を求めるあまり、品のないクリエイティブになりがちだと思い込んでいる企業は、実際に少なくないと感じています。
そうした企業の広告担当者の方々に、「ブランド×ダイレクトクリエイティブ施策」は、成果を追いながらブランド価値を伝えることは可能だということを、ぜひお伝えしたいと思っています。
この記事の著者
塩見 未寛
アフィリエイト事業をおこなう広告代理店にてライター・ディレクション・コンサルを経て、2019年アイレップに入社。大手健康食品クライアント、化粧品、飲食を中心になど幅広い業種で獲得領域のクリエイティブ戦略設計、制作進行を担当。社内ではLPや記事LPの勉強会講師も務める。
趣味:スプラトゥーン。ウデマエX。ハマったらとことんの凝り性です!あと最近JO1がとても好きです。
アフィリエイト事業をおこなう広告代理店にてライター・ディレク...
谷本 奈央
事業会社のWebデザイナーを経て、2019年にWebディレクターとしてアイレップへ入社。金融・化粧品通販・健康食品・飲料業界と幅広く担当。クリエイティブの戦略プランニングや媒体特性を考慮したクリエイティブ制作で成果改善に貢献。
趣味/特技:カラオケ、サウナ、バンド活動、パーソナルカラー診断
事業会社のWebデザイナーを経て、2019年にWebディレク...
澤 七栄
多摩美術大学卒業後、マスコミ・インターネット広告代理店を経て2019年にアイレップへ入社。入社後はWebデザイナーとして、美容・人材・金融案件まで幅広い業種を担当。アートディレクター・イラストレーターも兼任。インターネット広告業界で制作業務に長く従事したこれまでの経験から、ブランドを意識した獲得クリエイティブのデザインを強みとする。
多摩美術大学卒業後、マスコミ・インターネット広告代理店を経て...
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