OMO施策立案のための顧客データ分析~EC・リアル店舗の相互利用に向けて~

2021.05.27

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昨年よりはじまった新しい生活様式の影響を受け、ECサイトでの購買が世代を超えて幅広く世の中に浸透してきています。今後もさらにその傾向は強くなると考えられるなか、売り手側の企業としては、リアル店舗・ECサイトの壁を取り払い、状況や商品に応じていかに消費者の購買意欲を喚起するかがより重要な課題となっています。

本記事では、このようなシームレスな顧客体験創出の重要な概念となる「OMO」について、及びそのための事前データ分析の事例をご紹介します。

OMOの目的とそのメリット

OMOとは?

OMOとはOnline Merges with Offlineの略称であり、オンラインとオフラインの垣根をなくし、ふたつを融合させながらビジネスをおこなうことを指します。マーケティングの文脈においては、ユーザーのあらゆる行動をデータとして集約し、顧客体験を向上するための施策を展開することを意味します。

OMOについて理解するうえで重要な概念は、「アフターデジタル」です。「アフターデジタル」とは、オフラインとオンラインのデータが紐づいた状態で、顧客のあらゆる行動データを収集・管理できるようになることにより、ユーザーが常時オンラインに接続される状態になることを意味します。つまり「デジタル」というくくりを改めて設けずともすべてが自然に「デジタル」と接点を持つようになるため、「デジタル」という切り分け自体が意味の薄いものになる、というのが「アフターデジタル」の意味するところです。

簡単な例を挙げると、最近では、リアル店舗で商品に付属しているQRコードを読み取ることで、商品の詳細情報やレビューをその場で確認したり、あとでECサイトを経由して同じ商品を購入したりすることができるようになりました。また、そのデータを共通のIDに紐づけて蓄積することで、あらゆる消費行動がデータとして活用することが可能になりつつあります。

このような「アフターデジタル」の環境において取得したデータを分析し、ユーザーの嗜好を理解することにより、オンラインとオフラインで切り分けずに適切なOne to Oneマーケティング施策を実施することで、一貫性の高い顧客体験を生み出すことをOMOは指しています。

なぜOMOが注目されているのか?OMOとO2Oの違い

新しい生活様式の影響もあり、前述の「アフターデジタル」が急速に進んでいることを受け、蓄積したデータを利用したOMOも注目されてきています。なぜならば、OMOは企業目線ではなく顧客目線での利便性や快適さを追求した、まさに今後の小売業における課題に対応した概念であると言えるからです。

似たような言葉にO2O(Online to Offline)が挙げられます。O2Oではオンライン・オフラインというふたつの世界を切り分けて考えたうえで、それぞれの流入を促すマーケティング戦略を指します。例えば、ECサイトを訪れたユーザーにリアル店舗で利用可能なクーポンを配布することにより、デジタルからリアルへと送客することが挙げられます。

O2Oは「オンラインとオフラインを切り分けた」うえで、ユーザーの購買行動を促すために異なるチャネル同士で相互送客をおこなう、いわば“チャネルありき”の考え方です。一方、OMOは「オンラインとオフラインの2つを融合させる」、つまり、チャネルではなく、ユーザーの購買体験を含むあらゆる顧客体験を中心とした考えである点が最大の特徴です。
(図1)。

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(図1:O2OとOMOの違い)

 

OMO施策立案のための顧客データ分析

事前データ分析の重要性

OMO施策を実施するためには、顧客のあらゆる行動データを適切に分析することで、施策につながる示唆を得ることが重要です。

例えば、リアル店舗でのみ購買をしている顧客、ECサイトでのみ購買をしている顧客、そして両方を併用している顧客、この3種類の顧客について各々の行動特性や属性を分析します。そして、どのような顧客がリアル店舗やECサイトへ、何をを求めているか知見を得ることができます。得られた知見を参考にすることで、リアル店舗とECサイトの併用を促せる有効なOMO施策の実施につながります。

なお、データ分析をおこなうためには、以下のふたつを満たすデータ環境が必要となります。

1. データベースの整備
まず、オンラインとオフラインで得られる商品情報や、得られる顧客データを分断することなく包括的に管理できるデータベースの整備が必要です。また、商品やサービスに関わるすべてのデータを、あらゆる立場の人(例:店舗担当者、EC担当者)が制限されることなく、横断的に閲覧できる環境作りが必要です。

2. さまざまなチャネルでのデータ取得
リアル店舗、ECサイト、SNS、メルマガ、DMなど可能な限り多くのチャネルを展開し、ユーザーとの接点を増やすことはデータ取得の観点からも重要です。これらのデータは、チャネルを横断したユーザーの行動を高い解像度で捉えるための手がかりとなります。なお、それぞれのデータがユーザー個人に紐づくIDで統合されていることが重要です。

また、施策立案のためには上記のデータ環境において取得したデータを素早く分析し、スピード感をもってサービスに反映させるための体制の構築・業務の効率化も重要な要素です。

分析事例紹介

今回は、小売事業者様におけるOMO施策立案に向けた分析事例をご紹介します。OMO施策実施のための事前分析としてリアル店舗とECサイトの使い分けの現状を把握するため、以下の3つの手順に従い分析を実施しました。

1. 分析設計(目的の整理・分析テーマの選定)
今回の事例ではリアル店舗を利用しているユーザーが圧倒的に多かったため、まずはリアル店舗ユーザーにECサイトを利用してもらうことを目的とし、「ECサイトとリアル店舗を併用しているユーザー」に焦点を当て、「リアル店舗のみを利用しているユーザー」との違いを抽出しました。具体的には、以下の4つの要素に沿って分析項目を洗い出しました(図2)。

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(図2:施策立案に必要な要素と本事例における分析テーマの関係)

次に、これら4つの要素をもとに分析のテーマをふたつに絞りました。具体的には、(1)併用ユーザーはECサイトとリアル店舗をそれぞれどのように利用しているか(Why/How)、(2)併用ユーザーはどんな人か(Who) というふたつのテーマでの集計を実施することとしました(図2)。

2. 実データを使用した分析

(1)併用ユーザーはECサイトとリアル店舗をそれぞれどのように利用しているか(図3)
曜日、購買商品、リアル店舗来館後のECサイトでの購買タイミングの3つの切り口に分け、併用ユーザーのECサイト、リアル店舗それぞれの利用傾向を集計しました。集計結果からECサイトでは「買いたい商品が決まっており、特定の商品を購入している」、リアル店舗では「買うものを探しに休日のショッピングを楽しむ目的で利用している」のではないかといった仮説が立てられました。

47794843020_03(図3:集計結果01)

 

(2)併用ユーザーはどんな人か(図4)
併用ユーザーの性年代構成比を集計後、最も構成比の高かった性年代に対してどの会員種別(カード種別)のユーザーが多いか、どんなチャネルを利用しているユーザーが多いかを集計しました。性年代では30~50代女性が最も多く、その中でもクレジットカード会員やメルマガ許諾者の割合が高い結果となりました。

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(図4:集計結果02)

3. 分析結果に基づく示唆出し(施策立案)
これまで紹介したような集計結果をもとに、さらに深掘りすべき項目や施策案を整理し、ネクストアクションを決定しました(図5)。例えば店舗のみ利用ユーザーも併用ユーザーも性年代構成比が30~50代が多く両者に変化がないことから「併用ユーザーはECサイトとリアル店舗を使い分けているのではないか」という考察をおこないました。

施策としては「店舗のみ利用ユーザーに同様の使い分けを提案する」といった内容が考えられました。

図1(図5:結果から考えられる施策案のまとめ)

まとめ

今回はOMOの概要や施策立案のためのデータ分析の要点について説明しました。顧客の行動に関する多種多様なデータを分析・活用して適切なOne to Oneマーケティング施策を展開できるようになることは、ユーザーの満足度向上にもつながります。アイレップでは、今回ご紹介した顧客データ分析をはじめ、CRMデータを活用した分析やデジタルマーケティングを推進していきたい企業の支援をおこなっております。ツールの使い方や運用、レポート作成などご要望に合わせて対応いたしますので、お気軽にご相談ください。

<DL資料>ダッシュボードテンプレート(Google データポータル)

この記事の著者

DIGIFUL編集部

「DIGIFUL(デジフル)」は、株式会社Hakuhodo DY ONEが運営する「デジタル時代におけるマーケティング」をテーマにした、企業で活躍するマーケティング担当者のためのメディアです。

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