企業向けに複数人によるタグ管理を実現
Google タグマネージャーはデータの収集を行うときに必要となる広告計測タグやGoogle アナリティクスなどのWeb解析ツールの設定を運用するためのタグ管理ツールです。
そのエンタープライズ版である「Google タグマネージャ 360 」は、日本国内ではGoogle アナリティクス 360 ユーザーのみが利用できます。個人による管理・運用を前提とした通常版のGoogleタグマネージャーとは異なり、大規模サイトや企業内で複数のマーケティング担当者やエンジニアが利用することを前提とした管理機能が多数追加されているのが特徴です。
ここではGoogle タグマネージャ 360 だけの特徴的な3つの機能について紹介します。
※タグマネージャーについては『Google アナリティクスの活用に、なぜGoogle タグマネージャーを使うのか 』 をご参照ください。
無制限に使えるワークスペース (作業領域)
マーケティング担当者やエンジニアなど複数のタグ編集者が、Google タグマネージャーを使って同時に作業を行うケースも少なくないと思います。Google タグマネージャーでは編集者ごとにGTMコンテナ※内の作業領域を分割して編集を行うことができます。この作業領域をGoogle タグマネージャー では「ワークスペース」と呼び、タグの設定・編集を行う際に、各編集者がワークスペースを作成して作業を行います。ワークスペースを作成して作業を行うメリットは各編集者の作業内容がバッティングすることなく、また他の編集者の作業状況を気にせず安全に作業を行える点です。
ワークスペースで設定したタグは、公開する度に差分や競合のチェックが自動的に行われ更新内容がGoogle タグマネージャーに記録されます。これらの更新内容は「バージョン」として更新履歴が記録され、タグ公開後でも更新以前の状態にさかのぼって元の状態に戻すことも可能です。
これらの機能によってタグ編集における競合や矛盾を防ぐとともに、更新履歴のバージョン管理を実現します。
※GTMはGoogleタグマネージャー(Google Tag Manager)の略。コンテナとはGoogle タグマネージャーの管理画面の単位のことです。コンテナごとに管理画面が用意されています。
(図1:GTMコンテナ内のワークスペース概念図)
ワークスペース機能は通常版Google タグマネージャーでは最大3件までしか利用できませんが、Google タグマネージャ 360 では無制限に利用できます。
大規模サイトのような複数の部署や多くの編集者がタグ運用に関わる組織では、Google タグマネージャ 360のほうがワークスペースの上限を気にせずより柔軟なタグ運用を行うことができるのでおすすめです。
(図2:ワークスペース 設定画面)
タグの編集権限を部分的に開放できる「ゾーン」機能
ゾーンとはメインのGTMコンテナとその他のGTMコンテナをリンクさせ、限定的に編集権限を付与する機能です。
リンクされたその他のGTMコンテナはメインのGTMのコンテナタグが設置してあるサイトに対して、タグの追加や設定を限定的に行うことが可能になります。例えば特定のページにだけタグを設定する権限を与えたい場合やGoogle 広告のタグしか編集できない権限を与えたい場合など様ざまな場面で便利な機能です。
これまでページやディレクトリ単位で編集権限を与えたい場合は、新たにコンテナタグを発行し、特定のページに新たにタグを付与する必要がありましたが、この機能によって余計なタグをサイトのソースコード上に設置する必要がなくなります。
(図3:ゾーン機能 概念図)
ひとつのサイトで、ページカテゴリごとに担当部署が異なる場合や、広告を運用する代理店に対して広告ランディングページやGoogle 広告のタグに限った編集権限を与えたいときなどに活用いただけます。
ゾ―ン機能はそのほかのGTMコンテナに付与する権限を細かく設定することができ、タグが作用する対象範囲と利用可能なタグ、トリガー、変数の指定を行えます。
(図4:ゾーン機能 設定画面)
これら権限の対象範囲は「境界」と呼ばれます。トリガーを設定するときのように、変数を使った条件指定をします。例えば特定のパスや特定のイベントのみメインコンテナで作用させることができ、設定内容を限定することができます。
また「種類の制限」をオンにすると利用可能なタグ、トリガー、変数を制限することができ、特定のタイプのタグにしか 作用しない状態にすることも可能です。
管理者によるタグの公開承認機能
前項で紹介した「ワークスペース」や「ゾーン」といった機能を使用することで複数の編集者による作業分散を行うことが可能になります。しかし各編集者が自由にタグを設定・編集できる一方で、設定されたタグのチェックや管理が煩雑化することが懸念されます。
Google タグマネージャ 360 では各編集者によって設定されたタグの「承認」を行う機能が備わっており、承認者権限を持つユーザーの承認なしではタグの公開を行えません。
「承認」機能を使ったタグを公開するまでのプロセスは、まず編集者がタグ、トリガー等の設定を行った後、承認者へリクエストが送ります。承認者はリクエストで送られてきた更新内容を確認し、問題がなければ「承認」を行い、最終的に公開権限を持つユーザーによってタグを公開するという流れになります。
(図5:承認リクエストの確認画面)
このように編集・承認・公開の一連のプロセスをワークフローとして確立し、GTMコンテナ内で複数の編集者が設定したタグがむやみに公開されないので、管理者による一元管理のもとで安全なタグマネジメントを実現します。
(参考) Google タグマネージャーの権限一覧
(1)読み取り権限:GTMコンテナ内の設定状況を確認できますが、タグ、トリガー、変数の編集は行えません。
(2)編集権限:タグ、トリガー、変数の編集を行えますが、バージョンの公開を行えません。
(3)承認権限:タグ、トリガー、変数とバージョンの編集を行えますが、バージョンの公開は行えません。
(4)公開権限:タグ、トリガー、変数とバージョンの作成・編集・公開をすべて行えます。
まとめ
Google タグマネージャ 360の3つの機能についてご理解いただけたでしょうか。 これまでWeb解析タグや広告計測タグなどが複雑化するなかで、安定したタグの管理・運用は困難とされてきました。この記事で紹介した「無制限に作成できるワークスペース」、「コンテナをリンクし部分的に権限を開放するゾーン機能」、「タグ公開のワークフローを確立できる承認機能」を組み合わせれば複雑なタグ設定を一元管理のもと、効率的に作業分散できます。
このようなGoogle タグマネージャ 360 独自の機能を使用できることが、Google アナリティクス 360を導入するメリットのひとつです。
タグ管理に関して課題があれば、Google アナリティクス 360とあわせて導入を検討してみてください。
Google および Google ロゴは、Google LLC の商標です。
本記事は2018年2月に公開した記事を、コンテンツを増やして再編集したものです。
この記事の著者
DIGIFUL編集部
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