GA4で実現するpLTV施策のすすめ

2022.05.06

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Google アナリティクス 4(以下GA4)が登場して約一年半が経過し、世の中に出回る情報も充実してきています。しかし、それらの情報はWeb解析観点のものが大半で、マーケティングや広告施策への活用観点の情報はまだ多くありません。

GAはもちろんWeb解析のためのツールですが、単なるWeb解析ツールではありません。そもそもGoogle Marketing Platformという大きな枠組みの中の一製品であり、他のGoogle製品と連携させて「マーケティングや広告に活かす」ことを見据えて開発されています。GA4におけるさまざまな機能アップデートを踏まえると、アクセスログの解析ツールからマーケティングのための分析ツールとして進化しているという傾向があります。

本記事では「Web解析」ではなく「広告施策への活用」という側面からGA4の新しい一機能「予測機能」を紹介します。

広告投資における課題

Web広告の運用戦略として、できるだけ利益の発生に近い行動をCVポイントに定め、重視することが多いです。CVを重視する戦略とひとことで言っても、方向性は複数あります。Google 広告を例に見てみましょう。CV重視のスマート自動入札戦略の中にも現在5つの選択肢があります。

・目標コンバージョン単価(CPA)
・目標広告費用対効果(ROAS)
・コンバージョン数の最大化
・コンバージョン値の最大化
・拡張クリック単価(eCPC)

「コンバージョン数の最大化」や「目標コンバージョン単価」はCVの量を重視する戦略です。一方、「目標広告費用対効果」や「コンバージョン値の最大化」はCVの量だけでなく質も加味する戦略といえるでしょう。

ビジネスの最終的な目標は売上、さらには利益をあげることです。数がたくさん売れても利益率が低ければ売上は上がらないし、利益率の良い商品でもひとつしか売れなければ意味がありません。そうすると、CVの量だけでなく質も加味できる戦略をとる方がいいということになります。ただ、CVの質を加味するには各CVポイントの質(CV値ともいう)を管理画面で設定する必要があります。ECのようにWeb上で購買行動が完結する場合であれば、CVの質がCVの発生と同時に分かるため値の設定が可能です(帽子は500円だからCV値500、マフラーは1000円だからCV値1000など)。

しかし、CV値の高い、単価の高い商品だけが売れればいいのかというとそうでもありません。1年に一度10万円の商品を購入してくれる顧客と、1年の間に毎月1万円の商品を購入してくれる顧客であれば、中長期的には後者の方が優良顧客となるでしょう。LTV=顧客生涯価値で考えたとき、後者は前者の1.2倍の売上をもたらしてくれます。このように中長期的・総合的な判断を下す入札機能はGoogle 広告には備わっていません。そもそも、LTVは後々になってみないと分からないものです。そのため、LTVで広告配信を最適化させようとする場合は、まずLTVを予測するところから始める必要があります。

pLTVという考え方

指標としてのpredicted LTV

pLTVというのはpredicted=予測されたLTV=顧客生涯価値、という意味の言葉です。低いpLTVにつながるCVではなく高いpLTVにつながるCVを獲得する、という方向に最適化することができれば、理論上は過剰投資・機会損失を減らし、中長期的・総合的に最適な広告予算の分配が可能になります。

(図1:pLTV施策の考え方)

pLTV施策のむずかしさ

では、pLTV施策はどのようにして実現できるのでしょうか?pLTV施策を実現する座組を考えてみます。

(図2:LTVを予測して広告施策に活かす座組)

手順としては、
①データの蓄積:過去のCVとそこから獲得できた売上など、大量の過去のデータを貯める。
②機械学習:①をもとに予測モデルを作成。
③数式化・リスト化:②のモデルを数式化、もしくは出力結果をリスト化する。
④広告プラットフォームに共有・広告配信
というステップが想定されます。

しかし、①~④には以下に示すとおりさまざまなハードルがあり、これをイチから構築するのは容易ではありません。

(図3:LTVを予測して広告施策に活かす際のハードル)

①データの蓄積:どこに、どんなデータを蓄積するのか?
②機械学習:モデルの作成は誰がどうおこなうのか?
③数式化・リスト化:誰がどうおこなうのか?
④広告への連携・配信:どのプラットフォームに実装できるのか。誰がどう連携の手続きをおこなうのか。

考えるべきことは沢山あり、投資も必要で困難な道のりに思えます。果たしてそこまでしてpLTV施策に投資する価値はあるのか、とも思えてきます。ここでGA4の登場です。GA4を活用することで、pLTV施策を上記の座組をイチから組むよりもはるかに簡単に実現できます。

GA4で実現するpLTV施策

GA4を使うメリット

GA4によって、上記のハードルを解決できます。

(図4:GA4によるpLTV施策の実施イメージ)

①データの蓄積:GA4ではサイトアクセスログを蓄積しています。これが機械学習のデータ元になります。どこにどんなデータを蓄積しよう、と考えて設計する必要はありません。

②③機械学習、数式化・リスト化:Googleの提供するモデルを利用できるため、自分で機械学習モデルを作成する手間がありません。結果はリスト形式でアウトプットされます。これにはGA4の「予測機能」を使いますが、この予測機能で具体的にどのような予測ができるのかは後ほど紹介します。

④広告への連携・配信:Google 広告、DV360に限られますが、広告プラットフォームへの連携が容易です。アカウント連携をするだけで、GA4で作成したリストを広告配信に利用できます。pLTVが高いと予測されたユーザーのリストに対して、Google 広告・DV360(Google社の提供するDSP)を通して広告配信できます。

このようにGA4のみでpLTV施策に必要な手順の上流から下流まで網羅できます。さらに、GA4はツール費用が基本的に無料です。GA4の前のバージョン(Universal Analytics)ではヒット数が一定を超えたら有償版を使う必要がありましたが、GA4ではヒット数の上限が設けられていません。pLTV施策に必要な「予測機能」も無償版で利用できます。

GA4の予測機能

GA4でpLTV施策が実現できると紹介しましたが、「あくまでもGA4の予測機能でできる範囲で」という制限がつきます。GA4の予測機能でできる予測は現在3つあります。

①購入の可能性
②離脱の可能性
③収益予測

(図5:GA4の予測機能により実施できる予測の種類)

例えば購入可能性、収益の高い可能性の高いユーザーのリストに対してプッシュ配信をするという施策も考えられますし、離脱可能性の高いユーザーリストに対してクーポンを配信するといったリテンション施策も考えられます。

好きな指標でモデルを作成するというよりは上記3種類から選んで予測をおこなうことになるため、カスタマイズ性はあまり高くありません。しかし、手軽にpLTV施策を導入できるという点においてGA4の予測機能は優れています。

通常のリマケとの違い

しかしこれでは通常のリマーケティングと変わらないのではないか?という疑問を持たれる方もいらっしゃると思います。GA4の予測機能では「Webサイトやアプリを訪問したユーザー」の購入、離脱、収益可能性を判断しリストを作成します。つまり既存ユーザーへの配信なので、広義のリマーケティングということになります。

では何が通常のリマケと異なるのかと言えば、リストの作り方です。通常のリマケではタグをベースに「詳細ページを見た」「カートに追加した」など深度でユーザーをリスト分けします。一方でGA4の予測機能はサイト内の浅い階層~深い階層まで含む広い行動履歴から判断した結果がリストとして出力されます。中身は多かれ少なかれリマケリストと重なると思われることや、通常のリマケ同様配信時にブラウザのcookie規制の影響は受けることから、リマケの代替として使うというよりはリマケと並走し、成果の良い方を残すという使い方がよいかもしれません。

(図6:GA4の予測機能を活用した配信と通常のリマーケティングの比較)

まとめ

Web広告の運用戦略としてpLTV施策をおこなうことで、広告投資の効率化を実現できます。pLTV施策をイチから構築するのは容易ではありませんが、GA4の予測機能を活用することで手軽に試すことが可能です。手軽に試せるとはいえ、実装や予測機能の設定などは使い慣れていない人にとっては難しい部分です。

当社ではGA4の初期実装から広告施策への連携まで一貫してサポートします。GA4の実装や活用方法についてサポートを検討される場合は、Hakuhodo DY ONEにぜひお問い合わせください!

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この記事の著者

DIGIFUL編集部

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