デジタル時代の新たなマーケティングを開発・実践するプロジェクト「TEAM JAZZ(チーム ジャズ)」の内容が、大幅にアップデートされました。新たに5つの研究組織「JAZZ Studio(ジャズ スタジオ)」を設立し、企業の統合マーケティング支援を強化するという今回のアップデートについて、TEAM JAZZを主宰するアイレップ常務取締役CRO 北爪宏彰氏と取締役 木野本朋哉氏に聞きました。

デジタル時代の新たなマーケティングを実践するプロジェクト

まず、2020年にTEAM JAZZを発足した当時の経緯を改めてお聞かせください。

北爪:
従来、企業のマーケティング活動においては、デジタルメディアとマスメディア、オンラインとオフライン、ブランディング施策と獲得施策など、多くの分断がありましたが、それらを統合しなくてはいけないのではないかという課題意識が業界全体で高まっていました。

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アイレップに対しても、「デジタル広告の運用という領域だけでなく、デジマス、オンライン・オフラインを統合した上で、認知から獲得まで、フルファネルでのコミュニケーション・マーケティング支援をしてほしい」というクライアント企業からの声が増えてきていました。

そのような背景があり、アイレップ内のマーケター・クリエイター・Web ディレクター・運用コンサルタント・エンジニア・プロジェクトマネージャーといったさまざまな専門領域を持つメンバー、クライアント企業のマーケターや宣伝担当者の方、外部のクリエイターが集まり、課題や知見を持ち寄り、新しいマーケティングの方法を一緒に研究・開発していくオープンイノベーション的な取り組みとしてTEAM JAZZを開始したのです。

TEAM JAZZという名前は、音楽のジャズに由来しています。ジャズという音楽の特徴の一つは、セッションという演奏スタイルです。クラシックのコンサートのように楽譜に従って演奏するのではなく、サックス、トランペット、ピアノ、ベース、ドラムといった各プレイヤーがアドリブでアイデアを出し合い、触発し合いながら、より高いレベルを目指し、1つの曲を創り上げていきます。TEAM JAZZという名前には、ジャズが体現するそうした「共創・融合」の想いを込めています。

 

5つのJAZZ Studioを立ち上げ、9月にはJAZZ Fesを開催

TEAM JAZZをアップデートしたのは、どのような意図があったのでしょうか?

木野本:
発足から3年が経過し、多くの知見が共創され、事例も蓄積してきました。社内外での認知も高まり、参加人数も増え、取り組むテーマも広がってきました。アイレップの中でも、もともとは広告に近い戦略部門やクリエイティブ部門のメンバーを中心にして進めてきましたが、今年からソリューションを担当する部門も加わりました。

そこで、3周年のタイミングに合わせてTEAM JAZZをアップデートしようということになりました。具体的には、主たる研究や実践分野を整理・統合し、直近のデジタルマーケティングの領域におけるホットなトピックス5つを切り出して、5つの研究所「JAZZ Studio」を立ち上げました。

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越境するダイレクトクリエイティブ Studio

ブランドとダイレクトの垣根を越境したクリエイティブの事例や各種手法を開発・研究する組織。

突破する動画 Studio

メディアやテクノロジーとの連携により既存の方法論を突破し、動画広告の定義や発想を拡張する組織。

没入するエンタメ Studio

生活者が熱量高く反応するデジタルコンテンツやXR領域などをはじめとしたエンターテインメントへの没入体験をビジネスの成果につなげ、マーケティングに活用・実践する組織。

動かすUX Studio 

ストラテジー、ソリューション、クリエイティブなどのさまざまな領域のプロフェッショナルが知見をつなぎ、ユーザーを動かし、成果にダイレクトにヒットさせるUI/UXを研究・実証していく組織。

証明するデジマス Studio 

デジタルとマスを横断した生活者とのさまざまなタッチポイントを構築することによる「売れる状態」の開発、またその状態がより活性化する状況や結果を図るためのKPI設計・モニタリング手法を開発し証明する組織。

木野本:
それぞれのJAZZ Studioは、アイレップのサービス組織と紐づいています。クライアント企業と共にマーケティング課題に向き合うなかで、研究・実践を繰り返しながらサービスのアップグレードや新サービスの開発に努めており、そこで得たファインディングスや事例を発信していきます。

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アップデートはしましたが、TEAM JAZZのコンセプトは変えていません。「アイレップのプロフェッショナルたちが、クライアント企業や外部のクリエイターとともに、デジタルを使いながら新しいマーケティングの形を共創する」というコンセプトはど真ん中にあります。

JAZZ Studioのコンセプトテーマである「共創」には、「クライアント企業と共に悩み・考え・挑戦し、未来のマーケティングを共に創っていく」という想いがあります。これまでの3年間は、当社の強みである広告運用を軸にデジタル起点のクリエイティブやロワーファネルが他のファネルに及ぼす影響などをクライアント企業も巻き込んで研究してきました。この先も市場環境はさらに急速に変化していくと思いますが、一歩先のマーケティングを作っていくためには我々もさらに一段階スピードアップしなければならないと感じ、TEAM JAZZの活動内容を大幅にアップデートすることになりました。ウェビナー(JAZZ Live)やJAZZ Fesを通して日々の研究成果や新たな発見を発信していく構造にした、というのが今回のアップデートの目玉です。

JAZZ Fesとは何ですか?

木野本:
Fesという名のとおり、全JAZZ Studioが一堂に会し、研究成果や事例を集中的に発表するセミナーイベントです。記念すべき第1回目となる「JAZZ Fes Autumn 2023」は、9月20~22日にウェビナー形式で開催します。当社従業員はもちろん、広告主の皆さま、パートナー各社、博報堂DYグループ各社の皆様にもご参加いただき、大いに盛り上がるようなイベントにします。

JAZZ Fesは、研究成果を社外に発信するうえで、すごく重要な機会なのですね。

木野本:
大事にしたいと思っています。第一に、最先端のマーケティングに関する研究成果や事例を定期的に発信していくことで、課題を抱えて悩んでいる企業の担当者、まだ我々とお取引のない企業の担当者に届けたいという思いがあります。

5つのStudioが合計13セッションを実施

直近9月に開催予定のJAZZ Fesについて教えてください。

木野本:
9月20日、21日、22日の3日間で、5つのStudioが2~3つずつ、合計13セッションを用意しています。


セッションリスト

※講演タイトル、内容、時間は都合により、変更になる場合がございます

13セッションの中で、特に注目してほしいセッションはありますか?

木野本:
私からのおすすめは、「証明するデジマスStudio」の「指名検索の秘密を解き明かす ~リフトの秘訣は『広告の定常配信』にあった!?~」(登壇者:アイレップ青山友樹)です。

講演内容は、ストラテジックプランニングのリーダー・青山友樹が、実際にハンズオンでクライアント企業と実施した事例です。

「指名検索はテレビCMによって一気に伸ばすのが効率的」という風潮がある中で、この事例では、ターゲティングした特定のセグメントのユーザーにYouTubeなど動画広告を中心に広告を配信し続け、想起集合の上位に上がったことで、数か月後の指名検索増加につながったということをデータをもとに解説します。

動画広告を辛抱強く配信し続け、2ヶ月後ぐらいに有意差が生まれるというのは、これまでの常識をアップデートするような話になっているので、多くの方に参考になるのではないかと思っています。

北爪:
どのセッションもおすすめですが、1つ目は「突破する動画Studio」の「面白さも効率性も兼ね備えた『行動を促す広告』のつくりかた ~YouTube Works Awards Japan 2023 受賞作から徹底解説~」(登壇者:三井住友カード株式会社、アイレップ岡田宙輝、洞口由宇)です。

「YouTube Works Awards」は、Googleが主催する広告賞で、去年YouTubeで放映された何千何万というクリエイティブの中から、もっともビジネスに貢献できた、人を動かせたクリエイティブを表彰する広告賞です。

8つの部門賞がある中で、アイレップが企画・制作を担当した「学パ、あげてこ⤴︎」(広告主:三井住友カード株式会社様)が、Action Driver 部門の部門賞を受賞しました。このセッションでは、受賞したクリエイティブを使ったマーケティングの手法をクライアント企業の担当者と一緒に振り返ります。

これまではテレビCMのクリエイティブをベースとして、デジタルにどのように変換してつくっていこうかという考え方が主流だったのに対して、受賞したクリエイティブでは、「人はもうデジタルの上にいる」ということを前提とし、プラットフォームごとにいる人の態度や気分をうまく生かして、すごくフラットにクリエイティブをプランニングしました。その手法は多くの企業の方にとって面白いものだと思います。

もう1つは「突破する動画Studio」の「TikTokを起点とした統合型マーケティングのへのチャレンジ」(登壇者:株式会社OASIZ、TikTok for Business、アイレップ松尾良馬)です。

アイレップはこれまで「メディア視点で、メディアごとに最適な動画を作る」という、当社の動画制作における基本姿勢を概念化した「Made for Media」にチャレンジしてきました。TikTokに合わせて制作したクリエイティブを起点にして、統合型マーケティングに挑戦した事例をご紹介しつつ、縦型動画のプランニングに役に立つ考え方を解説する予定です。縦型動画はまだまだマーケティング活用が未知数のメディアですが、メディアやインフルエンサーと三位一体となって取り組んできたアイレップだからこそお伝え出来る内容になっています。

クライアント企業の成長を目的に、共創を加速する

最後に、TEAM JAZZの今後の展望をお願いします。

木野本:
今回のアップデートでは、「企業の統合マーケティング支援を強化する」と謳っていますが、その一番の目的はクライアント企業の成長です。

成果を費用対効果だけで考えると、例えば獲得を目的とした広告であれば、より少ない広告費で効率的に目的を達成できた方が良いということになります。一方で、成長を目的とするのであれば、他の施策も含めて予算配分を最適するにはどうすればいいか、広告なのか、CRMなのか、オウンドサイトなのか、指名検索を伸ばしに行った方がいいのかという議論が生まれます。

クライアント企業の成長のために自分たちは何ができるのか。我々が持っている幅広いサービスのうち、どれが一番適合するのか。予算をどのように配分するのが最適なのか。常にそうしたことを考え、提案するのが、我々のあるべき姿だと思っています。

「クライアント企業の成長」を主語にして、その成長のエンジンとなるようなマーケティング方法の研究・開発を、これからもTEAM JAZZでおこなっていきます。

北爪:
TEAM JAZZの立ち上げ当初から、「デジタル時代のマーケティングをきちんと再定義していきたい」と考えてきました。その想いは今も変わっていません。

デジタル上での数字、人の動き、GoogleやYahoo! JAPANなどのプラットフォームが持っているビッグデータから、人の行動を可視化して、その人たちを動かしていく。そのために何をしていくべきなのかを起点にプランニングするということが、広告主視点で見たときの新しい可能性だと思っています。

我々アイレップは、総合広告会社でもなく、デジタル専業代理店でもありません。デジタルエージェンシーではあるけれども、デジタルだけでなくマスにも精通し、ブランディングと獲得の両方を視野に入れて戦略プランニングができる第3の選択肢でありたいと思っています。

TEAM JAZZの一番の特徴は共創です。クライアント企業だけではなく、生活者のビッグデータを持っているプラットフォーマーとも共創しながら、新しいマーケティングの可能性を追求し、世の中に発信していきたいと考えています。

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「JAZZ Fes Autumn 2023」のお申し込みはこちらから。
※申し込み締め切りは9/15(金)13:00です。

 

プロフィール

株式会社アイレップ
常務取締役CRO
北爪 宏彰

東京大学在籍時の起業経験を経て、博報堂に入社。2006年より博報堂全社のデジタル改革組織に参画。顧客とのエンゲージメント視点に立ったブランド戦略プランニング、およびインタラクティブ領域を中心としたROI重視のマーケティングを推進。2009年社長賞受賞。2010年よりHarvard Business School留学、2011年修了、アルムナイ資格取得。米国MarketShare社を経て、2013年よりアイレップに参画。マーケティング統括室長、コーポレートコミュニケーション本部長を経て、2018年取締役CMOに就任。メディア領域、プランニング領域、クリエイティブ領域、アドテク領域にリーダーシップを発揮。2023年より常務取締役CRO(Chief Revenue Officer/最高レベニュー責任者)に就任。

 

株式会社アイレップ
取締役
木野本 朋哉

2008年に博報堂に入社し、ストラテジック・プランニングから、制作・メディアのプロジェクトマネジメントまで、幅広くマーケティング・広告実務に従事。2015年には、外資系PEファンドに1年間出向し、M&A・PMI実務を経験。帰任後は博報堂DYホールディングスにて、グループ中期経営計画の立案・D.Aコンソーシアム・ホールディングスのTOBに携わる。2019年よりアイレップに参画し、2022年より取締役としてマーケティングサービス部門全体を管掌。また、自らが深く経営計画・事業開発に携わってきた経験から、クライアント企業の事業課題を捉えたマーケティング戦略・施策立案を得意とする。

この記事の著者

DIGIFUL編集部

「DIGIFUL(デジフル)」は、株式会社Hakuhodo DY ONEが運営する「デジタル時代におけるマーケティング」をテーマにした、企業で活躍するマーケティング担当者のためのメディアです。

当社がこれまでに得たデータや経験から、具体的事例・将来展望・業界の最新注目ニュースなどについて情報を発信しています。ニュースやコラムだけでなく、日常業務や将来のマーケティング施策を考えるときに役立つダウンロード資料や、動画で学べるウェビナーコンテンツも随時追加していきます。

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